3.吸血鬼狩り
「ステータスオープン」
全体情報なるタブが隅の方にある。
タップすると、表示が切り替わる。
転生者生存者数:50
転生者送り出し人数:64567
魔王:復活前
勇者認定数:0
勇者候補:70 (残存転生者数+転生者以外で素質があるもの)
これが数字通りの意味ならば、転生者の死亡率が高すぎる。
こんなにも過酷な世界なのか。俺は絶対にこの村から出ないぞ。
保有しているスキル及び並みの身体能力で、そして自己鍛錬する暇もないのに、
村の外に出れば死ぬのは目に見えている。
クロトの過酷な小作人ライフはある日をもって終わりを告げることになる。
クロトはいつも通り両親と他の村人たちと共同で農作業をしていた。
クロトが足を滑らせて、頭から地面に思い切りあたり、額から血が出る。
「クロト、傷を見せてみろ」
父さんがクロトの傷を見る。自動修復のスキルで傷がすっかりなくなる。
父さんの顔が青ざめる。
「化け物だ!」
近くにいた母さんと顔馴染みの村人たちが集まってくる。
「気をつけろ。傷が一瞬で消えた。これはたぶん吸血鬼だ。
私の息子は吸血鬼だったんだ」
母さんが、持っていた農具で俺の足をさす。激痛が走り、足から血が流れ出る。
「あんた、何馬鹿なこといってるんだい」
母さんはその農具を引き抜く。すると足の傷が消えていた。
他の村人たちも顔を見合わせて、化け物だと騒ぐ。
パニックなって両親と村人たちは
「化け物がでた」とひたすら連呼して村中を走り回った。
クロトはひとまず隠れることにした。
村人たちがクロトの家族を全員捕まえて、荷車に乗せていた。
「化け物、お前の身内はこれから処刑する。隠れても無駄だ。我々は正義を執行する」
村長の息子が大きな声で叫んでいる。
「村長、化け物は私の息子だけで私たちはただの人だから拘束をといてください」
クロトの父親は村長に懇願している。
「確かに、ただの人にしか見えないが、お前の息子は化け物だったのだな」
「ああ、そうです」
「なら、お前ら家族も化け物の可能性があるじゃないか!!!」
「だから、私たちはただの人です」
村長の命令で、両親と弟と妹たちが殺され、その後死体が火あぶりにされる。
クロトは村の中央で火が上がっている様子を見る。
おそらくは、村長の息子がいっていたことが本当なら家族は皆殺しだ。
この土地は痩せているので、焚火用の木材も貴重である。
つまり、既に殺されているか、火あぶりにされているかのどちらかでしかなかった。
「俺に残されれている選択肢は逃げることしかないのかよ」
クロトは村を出る決断をして、クワを片手に出発するのだった。
クロトは歩きながら考える。
転生者の死亡率が高いのが、転生特典のせいで化け物扱いされて、身内や近所の人に殺されているのではないのかということを。
どんなに素晴らしいスキルでも幼い少年少女、下手したら赤子の状態で、数の暴力でやられているのであれば、この死亡率はありえなくないと思った。自分も運悪く捕まっていたら、様々な処刑方法を試されて、即死系のダメで死亡していたこともあり得る。
そして、親から逃げ出しても幼い子供が生きるには厳しいと思う。
クロトが歩き続けるが運が良いのか不明だが、魔物がでてこない。
そもそも、村で魔物の話をきいたことが一切なかった。
川の水を飲み、枯葉の上で寝て、ひたすら歩きつづけること3日目にして、町らしきものが見えた。
「やっと町までついたのか。川沿いを歩いてけば何とかなると思ったが、これでどうにかなりそうだ」
町の入り口には憲兵らしき人がいた。
「おい、ボウズ。臭いな。1人でどうした」
「実は両親が殺されて、必死の思いで逃げてきたんです」
「まじか…ちょっと待ってな。教会に連絡いれてやるからな」
少し待つと、修道服をきたおばさんがきた。