2.少年時代
男は農村の農民の子供として転生していた。
両親はいたって普通の小作人だった。
男はクロトという名を貰った。
クロトが6歳になり、畑仕事を手伝うことになった。
クロトには前世の記憶があった。
「父さん、貝殻を砕いて畑にまこうよ」
「貝殻?」
「そうだよ。海か湖に行って拾ってくるんだよ」
「海? そんなもんはこの国はないからな。湖もこの村にはないぞ。
馬鹿なこといってないで、手伝いなさい」
クロトに知識があっても、条件が悪すぎて役にたつことはなかった。
クロトは8歳になった。
木の棒を持って素振りをやってみた。
「おい、クロト、何遊んでるんだ」
「遊びじゃないです。修行です」
母はクロトの頭にげんこつを入れる。
「痛いです。どうして努力を邪魔するの?」
母が指さす先には弟と妹たちがいる。
「分かるね。クロト。この子たちの面倒はアンタが見るんだよ」
長男だという理由で自由時間ゼロでクロトは畑の手伝い、家事の手伝い、
弟と妹の子守りまでさせられた。
なんだよこれ、俺の知っている異世界転生ライフとは別もんだよ。
出てくる料理は不味い、毎日強制労働させられ、異世界転生主人公にありがちな修行はやる暇すらない。
「これもしかして、この村からでないと俺の人生積むんじゃないのか?」
異世界の田舎でのスローライフではなく、異世界の田舎のブラック労働ライフでしかない。
あれを試すか。
「ステータスオープン」
クロトのステータスが表示される。
右上に手紙のマークがあるのでタップする。
ブロックされているので使えませんと表示される。
「まじかよ。ブロックされてるのかよ」
転生後に感じたが、絶倫と巨根の2つは全く役にたたない。
どうして当時の俺がそんな愚かな選択肢をしたかが嘆かわしい。
念のために絶倫をタップすると説明文が表示される。
絶倫…任意のタイミングで絶倫になるスキル。天使には内緒だが、堅くなったときはオリハルコンを超える硬度にしといたぞby神様 これでどうやって魔王を倒すか理解に苦しむが頑張れ。
次は巨根をタップする。
巨根…任意のタイミングで巨根になるスキル。これも同様に天使には内緒だが、雌のドラゴンと交尾することを想定しておいてチートクラスのサイズにもなるように制限解除しといたぞby神様 本当に魔王を倒す気があるのか?
次は自動修復をタップする。
自動修復は即死系以外のダメなら自動で回復とシンプルな表現のままだ。
取り合えず力や素早さなど数字が書いてあるが、それがどの程度なのか基準がないから判断しかねる。
村にいる他の子供たちと比べたら、体力は同程度なため、基本ステータスは並み程度だという予想をする。
というか転生特典の説明に書いてあった魔王ってどういうことなんだよ。
魔王を倒す世界なら絶対に貴重な転生特典に絶倫と巨根なんて選ぶはずないだろ。
早速ではあるが、スキル発動で絶倫にしてみる。
下半身についている息子が硬くなる。
手で触ると、確かに硬い。試しに息子で岩を叩いてみる。
息子に激痛が走る。
「痛すぎ」
息子を確認するが、傷一つついてない。岩の方は表面が少し割れていた。
説明通り息子が硬いようだが、痛みがあるのであれば物理的に攻撃に使う選択はできないに等しい。
次は巨根のスキルを試す。
自分が欲しいサイズの息子に変えることができた。しかし、どう考えてもこのスキルで魔物と戦えるわけがない。