10.独房
クロトは目覚めると、独房の中にいた。
昨日は連日の鳥の糞掃除の疲れで孤児院で爆睡していたはずだ。
なのに、独房にいるのは理解が追いつかない。
逃げられるところがないが確認するが何もない。
道具もない。
諦めかけたら、独房の前にドーラ婆さんがいる。
「お前、起きてんのか?」
ドーラ婆さんはパンを片手にもち食いながら、話かけてくる。
「ああ」
「そうかい」
ドーラ婆さんは独房を鍵を使って扉を開ける。
「お前の朝食は私が食ったから、孤児院にいって朝食食ってきな」
何言ってるんだこの婆さんは?
「もしかして手に持ってるパンは?」
「もちろんお前の朝食だよ。こんな上等なパンお前にはもったいないからね。
お前は孤児院の臭い飯でもくってろ、クソガキ」
孤児院にいくと、マーガおばちゃんが非常に驚いていた。
「クロト、脱走してきたのか」
「いや、朝食をドーラ婆さんにとられて。孤児院で食ってこいって」
「ああ、ドーラ婆さんならあり得るわね」
そういうといつもの薄味の不味い飯を食うことになった。
そしていつも通り孤児の仲間たちとギルド清掃に向かった。
「それじゃ」といって、クロトは独房のあるギルドの奥のエリアに歩いていく。
「おい、待ちな」
ドーラ婆さんはクロトを杖で殴りつける。
「掃除をさぼるんじゃないよ、クソガキ」
「……独房に入ってないと」
「言い訳すんじゃねぇ!」
杖でまた殴りつけてくる。
仕方なく掃除する。いつも通りだ。
ロッキーがいつも通りギルドの入り口から入ってくる。
クロト含めて孤児たちが掃除をしている。
掃除量が多い日は彼らの掃除が終わらないのはたまにあった。
ふと、何かおかしい気がして、周りを見る。
独房にいるはずのクロトが拘束もなしに掃除をしている。
「誰が、クロトを解放したんだ?」
「騒ぐな。わたしゃ、そのクソガキに義務を全うさせただけじゃい。
どんな手品使ったか知らんが独房で休憩して、ただ飯食うなんて許せん」
ロッキーは怒りの感情をむき出しにしている。
「いつも、いつもルールを守らず、自分勝手に行動するな!
クロトは討伐隊に引き渡すことになったことは連絡しただろ。
いい加減にしろ」
ドーラ婆さんはいつものようにロッキーの怒りの声を無視して
帰宅していく。
ジョナサンがギルドに入ってくる。
「おう、ボウズ。独房からでれたのか?」
ロッキーがジョナサンの前に出て
「そんなわけないでしょ。独房戻りですよ」
ロッキーの指示に従ってクロトは独房に入っていく。
昼近くになると、ロッキーが白いパンを独房に提供した。
この世界にきて始めた食べたまともなパンだった。
夜になると、ジョナサンが寝泊まりしている宿屋の食事の
差し入れがあった。昼食べたパンよりも美味い。
考え方によっては孤児院ではプライバシーなんてなく
大部屋でぎゅうぎゅう詰めで寝ていた。
独房は足を延ばして寝れるし、孤児院よりも快適そのものだった。
独房から出てけば不味い飯だし、このままでいいような気がしてきた。
クロトは独房入りしてから、日に日に表情が明るくなっていった。
独房の生活は素晴らしかった。しかし、この天国のような環境は突然終わりを迎えることになった。




