解毒薬奪取ミッション開始です!但し、私は場当たり的参加になるようです(1)
光の神は、混沌から偶然生まれた。
闇の神は、光の神が好奇心と無邪気さゆえに地へと落とした影から生まれた。
そしてこの世界は、あらゆる命は――――――あまねく光の下、光の神によって創られた。
そう、すべては神の戯れに――――――
あぁ、闇に落ちていく。
いや……沈み、溺れていく。
藻掻いても、足掻いても、絡みつく水草のように、闇が身体に巻き付き自由を奪っていく。
一縷の光もない、黒だけで塗り潰された世界。
視界も、思考も、伸ばした手でさえも、真っ黒に染まっていく。
苦しい。
息ができない。
重量などないはずの闇が、身体を、心を、希望を、無情にも押し潰していく。
そんな闇の中で、耳障りなフィラウティアの嘲笑の声だけが、耳奥でやたらと響く。
『ふふふふ……だから逃げても無駄だと言ったでしょう?』
あぁ…………そういえば、そんなことを言っていたっけ。
私たちがあの謁見の間から逃げ出す時に。
もうどこか遠い記憶のような気もするけれど…………
でも、なるほど。
私たちは無事逃げ果せたわけではなく、ずっとフィラウティアの掌の上で転がされていたのね。
ならば、この状況も大いに納得ができてしまう。
お兄様やスハイル殿下を助けたくて、颯爽と(事実はどうであれ、気持ち的には)デオテラ神聖国まで乗り込んで来たけれど、実際は無謀を通り越してただの現実を見ない馬鹿だった……ということに。
元より、この世界に希望などあるわけがなかったのに――――――
ずっと前から――――ユーフィリナとして生まれ落ちた瞬間から――――――私はそれを知っていたはずなのに、どうしてこんな愚かな夢を、希望を、抱いてしまったのだろう。
どうして……
こんな愚かな真似を…………
どうして…………
また彼を……
いいえ、彼の魂を………………
こんなにも………………
こんなにも……深く………………
恋い慕い、求めてしまったのか。
私は知っていたのに。
否、今も覚えている。
心が絶望の闇に染まった感覚も、心が死に、命を捨て、この身が滅びた瞬間も。
だって私は…………
あの日、あの時………………
愛する者を“魔の者”に目の前で“闇落ち”させられ殺された、“神の娘”という名ばかりの存在。
その魂を、その時の記憶を、あの日の絶望を、違う器であるだけのこの身体に、新たに抱え込んだだけの存在なのだから。
本当は、再びこの世界に生まれ落ちる気などこれっぽっちもなかった。
だからこそ、幾度か訪れた人間としての再生にも、“この世界ではもう生きていたくないの!”と、死を乞い願った。
その度に、私は“光の神”に与えられた能力によって望みを叶え、死んだ。
“光の神”――――――ルークの言葉を借りるならば、この世界が私の死を認め、私という存在を排除したということだ。
たとえ私の願いが、この世界の理に反したことであったとしても、この世界はそれを認めた。
認めてくれた。
だから今回も死ぬはずだった。
そのつもりだった。
なのに…………
それなのに…………
気がつけば、新しい身体を用意され、私の魂はそこに座していた。
絶望がまたそこにある。
希望はどこにも見えないのに、絶望だけは当然のように隣にいる。
手を伸ばすこともなく、私にぴったりと寄り添うかのように傍にある。
やはりこの世界から、絶望が消えることはないのだろう。
光が闇を生み出すように、希望の影にはいつだって絶望が潜んでいる。
いつでも絶望の底へと引き摺り落とせるようにと。
そう、今のこの私がそうであるように…………
だからこのまま……真っ黒な絶望の闇の中で身体を揺蕩らせながら、再び眠りにつけばいい。
今度こそ永遠の眠りに。
私が自分本位に、この世界の理の外のものへとしてしまった彼の魂もまた、今度こそ私が二度とこの世界に復活しないと知れば、私と同じところまで落ちてきてくるはずだ。
だって彼の魂に、“魔物落ち”しないでと望むと同時に、永遠に私のことを忘れないでと願ったのだから。
だから私はただそれを待っていればいい。
そうすれば…………
きっとそうなれば…………
今度こそ、彼の魂は永遠に私のもの――――――
“…………ッ!ち、違う!違うわ!私はそんなことは考えてないッ!”
思わず反射的にそう叫ぶけれど、すぐに声が返ってくる。
それも何故か自分で自分を言い包めるかのように自分の声で、だ。
いいえ、私はそれを待っている。
その証拠に、今も闇に身を委ねているでしょう?
早く彼の魂と結ばれることを願っているでしょう?
この深い深い絶望の底で。
“違う!違う!そうじゃない!私は…………わたし……は………わ…た……し…………は…………
…………………………だ……れ?”
わからない。
自分が誰だかわからない。
いえ、まるで靄がかかっているようだけれど、記憶もある。
時に胸を掻きむしりたくなるほどの苦痛を伴った感情もある。
なんなら自分には前世があり、この世界がバグりまくりの乙女ゲームの世界であるらしいこともわかっている。
なのに、今自分が誰なのかがわからない。
これはフィリアとしての思考なのか。
ユーフィリナとしての思考なのか。
それとも、混沌と揺らめく闇の中で、ぐちゃぐちゃと混ざり混ざった二人で一人としての思考なのか――――――
わた……し……は、わ……たしは…………わ……た……………し……は……………………
“ユフィ!しっかりして!”
“…………ッ!!…………フィ…リ……ア?”
昏い昏い思考を遮るように、脳内で響いた声に、咄嗟にその声の主だろう名を口にする。
瞬間、身体に絡みついていた闇が、僅かに離れたような気がした。といっても、未だ全方向闇の中ではあるけれど。
それでも少し軽くなったような気がする(気分は大事)心と身体に、再び“フィリア”の声が柔らかく響く。
“ユフィ、惑わされないで。今のアナタはカノジョの闇に染められそうになっている。かつてのワタシのように…………”
“カノジョの……闇?フィラウティアの闇に?”
“えぇ、そうよ。そしてこれだけは間違わないで。今、アナタの心を蝕もうとしている絶望は、決してアナタが手にした絶望ではないわ。それはワタシの記憶の残滓…………魂に刻まれた……いいえ、消えずに残ってしまったワタシの咎”
“……フィ……リア……の咎?”
“ワタシは……ワタシの記憶は消されるべきだった。ルークも一度はそうしようとした。本来魂の再生とはそういうものだから…………だから“神の娘”だって……“神の鏡として創られた魂”だってそうあるべきだった…………なのに……できなかった。光の神であるルークでさえも…………ワタシが最期の瞬間に彼に望み、それをこの世界が認めてしまったから……………………
永遠にワタシを忘れないで………
永遠にワタシのモノであって………と”
落ちていく闇の中で聞こえてくる、フィリアのまるで告解のような言葉。
その謝罪とも懺悔とも取れる言葉に、私の胸がじくじくと痛み始める。
あぁ……これがフィリアの記憶であり、後悔であり、彼への…………お兄様に宿る魂――――――王子への狂おしいまでの恋情。
だけど……………………
“そうよ。これは強すぎるワタシの想いが生んだワタシの記憶であって、アナタ自身のものではない。なぜならアナタは、ワタシではないのだから”
あぁ……そういえばさっきもそんな声が聞こえた気がする。
あの謁見の間で、だ。
そして、さらあの時の声もこう続いたはず。
“でもね、ユフィ………アナタはワタシと同じ”
そう、あの時も聞いた。
“違う”のに“同じ”だと。
切羽詰まったあの時ならまだしも、今もやっぱり意味がわからない。
矛盾しているとしか思えない。
まぁ確かに、私はフィリアの生まれ変わりであって、どう転んでもフィリアそのものになれないのは事実だ。
なぜならユーフィリナという確固たる自我が存在するのだから。
でも、どうやらそういう話でもないらしい。
その証拠に、声に出して尋ねたわけでもないのに、私の思考を読んだらしいフィリアからあっさりと否定されてしまう。
“えぇ違うわ。まず前提が違う。そもそもアナタはワタシの生まれ変わりではないの。だって、誰あろうこのワタシが、自分の再生を拒み続けていたのだから。何度も、何度もね。けれどルークスは“神の娘の魂”の復活を願った。そして已む無く魂に刻まれたワタシの記憶だけを消そうとしたの。でも、できなかった”
えぇ〜〜〜〜〜っと……………………
私はフィリアの生まれ変わりではない。けれども、フィリアの魂(記憶付き)は宿して生まれてきた……と?
それを世間一般的には生まれ変わりというのではないですかね?
と、自問自答する。が、すぐさま―――――
……………………ハッ!?(閃き)
もしかしなくても、まさかお兄様が王子の魂を宿しているのと同じように、まさか私の場合も寄生型…………
“寄生型って何!?言っとくけど、寄生なんてしてませんからね!誰かさんとは違って!”
“さ、左様でございますか……”
記憶の残滓と言いながら、めちゃくちゃ怒られたんですけど。それってもう残滓とかいうレベルではないですよね。残留思念くらいの自我はばっちりありますよね。
それに、“誰かさん”ってそこあなたが言っちゃいますか!思っきり自分のせいだって言っていたくせに!
というツッコミは、どうにかこうにか呑み込んでおく。もちろん、思考ダダ漏れ状態で無意味ではあるのだけれど。
しかし、そんな私の努力?の甲斐あってか、フィリアもそこには反応せず、どうやらスルーしてくれるらしい(まぁ、自分の都合も悪かったからだとは思うけれど。なんなら軽く咳払いはしていし)。
そんなこんなで、見事な軌道修正……というか、ある意味力技で話を本筋へと戻すべく、再びどこか穏やかでありながら厳かなフィリアの声が、身体の隅々にまで波紋を広げるようにして響く。
“一人として同じ人間がいないように、魂もまた一つとして同じものはないの。だから、創造主“光の神”とはいえ、“神の娘の魂”もまた、まったく同じものを創り出すことは叶わない。花々でさえ、木々でさえ、雲一つだってそうであるように。そして、与えた魔力も、特別な能力もまた然り――――――
だから、光の神は自分の“鏡”でもある魂の復活を待ち望んだ”
――――――そうか。
この世界の創造主である神であっても、自分自身が定めたこの世界の理は覆せないのね。
だから………………
だから…………………………
永遠とも思える長い時間を、彼や、アカとシロと同じように、神自身もまた待つしかなかった。
………………ってこと?
“そう。アナタはワタシと同じ光の神の真なる娘――――――神の鏡。
そしてこの世界の希望であり、光。
だから闇に、フィラウティアの讒言に、ワタシの記憶でしかない絶望に、惑わされないで。
この闇を照らすのはアナタ自身。
アナタの強い想いが、絶望を希望に変える。
さぁユフィ!
目を開いて!
アナタならきっと、どんな闇の中であっても、光を見つけられるはず。
皆が待っているわ!
ユフィ!戻って!”
「………………ッ!!」
深い深い海の底から、空気を求めて浮上したかのような覚醒。いつかも経験したことのある目覚め。
そしてやはり酷い悪夢から目覚めた時のように、呼吸が乱れ、汗が止まらない。
実際、重苦しい闇の中で、絶望を見たような気がする。
…………いや、聞き捨てならない、なんなら私の存在を根本から覆すようなことを言われた気も…………というか、間違いなく言われた。それもちょっとした説教付きで。
けれど、今はそれを呑気に考えている場合でもないと、取り敢えず丁重に隣へ置いておく。
そして、視界いっぱいに広がる夕闇色に染まる天井…………いや、天蓋らしきものを眺め、稀に見る最高速度で脳を回転させる。
もちろん現状把握のためにだ。
あれから随分と時間が経ったようだ。
窓から差し込んでくるらしい紅から闇へと傾きつつある陽が、それを教えてくれている。
そう、私はフィラウティアから逃れ、アカやレグルス様たちとともに、トゥレイス殿下に案内された隠し部屋へと一時身を隠した。
そして私の癒し要員でもあり、お兄様の従魔でもあるウサギ型魔獣のシャムと合流し、解毒薬に仕掛けられた結界やら、罠やらの話を聞いた。
えっと…それから………それから…………フィラウティアの“晦冥海”が足元に広がって…………ッ!皆はッ!?
覚醒からここまでの記憶の掘り起こしまで、僅か三秒。
一瞬ですべての記憶が時系列ごとに行儀良く並び、さらには何故今まで自分が気を失っていた(決して呑気に寝ていたわけでない)のかを鮮明に思い出した私の身体は、反射的に跳ね起きた。
が――――――――……
「ひゃッ!!」
横から伸びてきた手に肩を掴まれ、そのまま強引に抑え込まれる。
その衝撃による痛みはない。
むしろ唯一の痛みは掴まれた肩くらいなものだ。
それよりも今は…………
ズリッと床ずれの音をさせ、さらにはギシッと何かを軋ませて、私の身体に何かの重しが押し乗ってくる。
夕闇を背にしているせいで輪郭しか分からないけれど、間違いなく人だ。
それも男性。
そしてもしかしなくてもここは天蓋付きベッドの上で…………
「……ひッ!!」
自分を押さえ込むモノが人間であり、それも男性だと気づいた瞬間、悲鳴が喉に貼り付くと同時に、全身が悍ましさによる悪寒で粟立ち、私を再び奈落の底へと叩き込むように記憶がフラッシュバックする。
アリオトに蹂躙されそうになったあの時の記憶が――――――
でも、この人はアリオトじゃない。
それだけはわかる。
だったら…………誰………………?
身体の線に沿うように這わされる手。
生憎今の私が着ているのは学園の制服のため、スカートは膝丈しかなく、その手は難なく私の素足へと辿り着く。
「い、嫌ぁッ!やめてッ!!」
ジタバタと暴れ、のしかかる身体を押し返そうとするが、私の力ではピクリとも動かない。
怖い!!
皆はどこ!?
この人は誰!?
恐怖に竦みそうになる身体に叱咤し、どんなに無駄な足掻きだろうと、絶対にまな板の上の鯉だけにはならないぞとばかりに身を捩る。
あの時はお兄様が来てくれた。
アカもレグルス様も、サルガス様やシェアトも来てくれた。
けれど今は、私がお兄様を助ける側だ。
そして、皆の安否だって確認しなければいけない。
おそらくあの闇の中で聞いたフィリアの話が夢幻でなければ、“魔の者”であるフィラウティアに対し、真に対抗できるのは私だけのはずだから。
そう。だからこんなところで誰ともわからない人に、身体をいいように弄られている場合じゃない。
ここにきて、やっぱり護身術をしっかり習っておけばよかったと脳裏を過るけれど、今はそんな後悔も何の役にも立たない。
ただ無我夢中で、がむしゃらに抵抗するだけだ。
それでも身体の拘束は解けず、さわさわと内腿へと不躾な手が伸びる。
さらには、首にかかる誰かの吐息。そしてぬるりとした生温かいモノが首筋を這った。
その刹那――――――――――
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――!!どいてぇッ!!」
火事場のなんとかよろしく、巴投げの要領で(あくまでもイメージ)思いっきり足を振り上げる。
すると、人間の(主に男性の)急所に見事にクリーンヒットしたらしく、「う"……………」といううめき声とともに正体不明の重しの不埒な動きは停止した。といっても、まだ意識はあるようで、ただただ私の上で小刻みに震えながら悶絶している。とどのつまり、重しは重しのままでまだ往生際悪く私の上に乗っかっている状態なわけで…………
ヨシ!ここはもう一度!
と、悶絶中の重しにとっては、血も涙もない鬼のような決意をし、今度は膝で蹴り上げ、腕で押し退けるべく、せーのと内心で気合を入れながら力を込める。けれど、どこからともなく勢いよく伸びてきたロープ状の影が、私の首にキュルキュルと巻き付き、私の動きを止めた。
「くっ…………」
首が締まるか締まらないかの微妙な匙加減。
確かめるまでもなく、私が動けばこの影は私の首を締め上げることだろう。
さすがにそれがわかっていてこれ以上動くわけにはいかない。
命あっての物種。
私は是が非でも生き延びて、お兄様とスハイル殿下に解毒薬を届けなければならないのだから。
未だ悶絶中の重しは放置したままで、ひとまず気配を探る。
もちろんこの影ロープを放った犯人には心当たりがあるどころか、わかりすぎるくらいにわかっている。というか、これでわからないほうがどうかしているってなもんだ。
問題は、この部屋のどこに彼女がいるのかということ。
部屋の広さや、そもそもここがどのような部屋なのかもわかっていない(ベッドがある時点で、ある程度察してはいるけれども)。
しかも、夕闇に包まる部屋には影が落ちる場所も多く、正直気配を完全に消されてしまうと手も足も出ない。
それ以前に悲しきかな、実際身動き一つ取れないのが今の私の現状である。
ならば……と、ここは魔力持ちらしく、感知魔法の一つでも使って、彼女の位置を把握したいところだけれど、生憎私にそんな技量は持ち合わせていない。
さらに言えば、魔力もスハイル殿下の専属護衛騎士であるエルナト様のおかげで、自分史上最大の潤沢さであるにはあるけれども、あくまでも自分史上という注釈付き。
世間で言えば枯渇の二歩手前。
つまり、論外である。
そのため、基本中の基本、目視による確認が一番確実なのだけれど、今はそれも首に巻き付く影ロープのせいで土台無理な話。
そんな端からほぼ選択肢がない消去法の結果、五感をフル活用し(可能ならば第六感までも使って)気配を探ることと相成り、神経を研ぎ澄ます。
しかしそれも、突如として聞こえてきた愛らしい声によって、呆気なく終了となった。
「あらあら、なんて不敬なんでしょう。こともあろうにこの国の第一王子殿下に対して、そのような乱暴な真似をするなんて」
「フィ…ラウ……ティア………」
首に巻き付く影のせいで、やはり横には向けない。それでも声がした方に目だけを動かせば、 窓から差し込む落陽の残光を避けるように、薄闇に溶け込みながら佇む影が四つ。
小さな影が一つに、大きな影が三つだ。
おそらく一番小さな影はフィラウティアなのだろう。
では、残り三つの人影は………………?
悪しき予感に、再び絶望の影が忍び寄る。
そしてその四つの影もゆっくりと私へと近づいてくる。
窓からの斜陽が、足音なく私へと近づく彼らの足元を照らし、徐々に正体を暴いていく。
最初に見えたのはフィラウティアの無邪気にも妖艶にも見える笑んだ顔。
それから三つの人影が露わとなって――――――――――
「レ……レグル…スさま……サルガスさ……ま……シェア……トさままで…………まさ……か……フィラウ…ティア……の……魅了に……?」
返事もなく、表情も抜け落ちたままで、ただぼんやりと私を見つめるだけの三人。いや、私に焦点が合っているのかも定かではない。
そんな三人に守られるようにして立つフィラウティアの唇が、より一層嫣然と弧を描いた。




