表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/150

まさかこんなところで乙女ゲーム開始?しかもやっぱり私が悪役令嬢のようです⁉(1)

 荘厳なる城を水面に映す湖のような外堀。

 そこに何十折り?と我が目を疑いたくなるほどに綺麗に折り畳まれていた跳ね橋が、向かうべき対岸となる城からカタカタと微かな音を立ててゆっくりと水面に羽を広げるように降りてくる。

 そして、決して華美ではないけれど、悠然と城へと続く一本の道を作り上げた。

 その道の先に蜃気楼の如く淡く揺らめきながら見えるのは、堅牢な城門らしきそびえ立つ壁。

 けれど、霞むようにしか見えないのは、靄がかかっているわけでも、私の眼精疲労のせいでもなく、それ相応の距離があるからだ。

 堀という概念をあっさりと打ち砕くような圧倒的な距離が。

 正直、建築業界の常識からいって、この距離に橋をかけるとしたら、到底跳ね橋なんかでは土台無理な話だ。主に耐久性の面で。

 途中の一部分だけが跳ね橋仕様ならともかく、対岸が霞む程の距離があり、さらに一方から延びてくる跳ね橋仕様で、尚且つ馬車二台と3ダースもの騎乗した聖騎士たち御一行様が、安全かつ快適に渡れる強度を持つ橋桁を安定感抜群に支えるには、いくつもの頑強な橋脚が必要となってくるのは、ど素人の私にも十分わかることだ。

 しかしここには一切その橋脚らしきものはない。水中に隠れているのかと思いきや、その気配すらない。何なら片側から一方的に伸ばされた橋梁の橋桁は水面に触れてもいない。

 前世なら構造上からいってもまさしく欠陥品で、これを設計した設計士も、現場の指揮をとった工事責任者も欠陥工事として即刻訴えられるレベルの代物だ。というか、まず安全性の面からいって架橋工事の認可が下りない。下ろされても困る。即死亡案件だ。

 しかしここは魔法ありきのTHE異世界。

 こんな非常識極まりない構造の橋も、魔法を使えば安定性抜群の跳ね橋と成り得てしまう。

 前世の記憶が無駄にある私にとっては、疑わしいことこの上ないのだけれど………………

 まぁ、馬車に同乗するトゥレイス殿下の当然と言わんばかりの落ち着いた態度と、アカ(アリオトがシロの影に消えたので、今は仔炎狼から人型になっている)とシロも何も言わないので、私もまた当然のように口を噤んだ。

 たとえ突っ込みどころ満載だろうと、魔法の前ではただの徒労。深く考えた方が負けだ。郷に行っては郷に従え。朱に交わったなら、そのまま全身真っ赤に染まってしまえ。

 ―――――と、前世では日本産業規格――――――JIS規格なるもので身の安全を守られていた、石橋は叩いて確認されたあとにようやく渡る――――という日本人ならではの思考を、今は広いだけでなくやたらと深そうな堀へとかなぐり捨てる。

 ここまでの移動に、ドリルさながらの勢いでJIS規格外の魔道具の箱を出入りし、グリフォンに跨ったことなど綺麗さっぱり棚上げにして、だ。

 そして、身の毛がよだつほどの別の悪寒を感じながらも、馬車の窓から見える風景は、さながら静謐な湖面に浮かぶ小舟からのものそのものね…………などと無理やり思考を意味なき感心へと切り替えた。

 ある意味ちょっとした自己防衛本能に基づいた現実逃避である。

 しかし、そんな私の努力をこの城の住人であるトゥレイス殿下が、世間話の体で容赦なく打ち砕いてくる。現実を直視しろと言わんばかりに。

『この堀といい、この橋といい、まるでこの国の在り方を示しているようだろう?閉塞的で威圧的で、選民思想も甚だしく酷く傲慢だ。かつて神がいた国として、その国に生まれた人間として、自分たちは特別に選ばれた人間であると信じて疑わない。だから自分たちを神聖なる者とし、常に排他的で唯我独尊となる。それはもう鼻につくくらいの狭量さでだ。それでいて、デウザビット王国には並々ならぬ遺恨を抱いている。怨讐と言ってもいいほどの…………ただ神に置き去りにされた自分たちとは違い、未だにその恩恵を受け続けていることが許せないんだよ』

 そこまで告げて、トゥレイス殿下はどこか遠くを見つめていた琥珀色の瞳を、隣に座る私へと向けた。

 それはいつか感じたような甘さと執着を窺わせるドロッとした飴色のものではなく、光を集め綺麗に澄んだ上等な黄褐色の貴石のようだった。

 しかしその瞳は、私を映した途端に切なげに細められる。

「…………だから、本当にしつこいようだけれど、我が国の者はきっと君が“神の娘”の生まれ変わりだと知れば、どうな手段を使ってでもこの国に引き止めようとするだろう。君がそのような存在かもしれないと、ただ遠回しに匂わしただけでもね」

「トゥレイス殿下…………それは……」

 はじめから覚悟の上です、と私がそう続ける前に、再びトゥレイス殿下の口が開いた。

 しかし今度は切なげだった瞳に、新たな光を宿して。

「でも、この私がそんなことは絶対にさせない。必ず、解毒薬ともに君をデウザビット王国へ帰すと約束しよう。この城が……この国が、たとえ“魔の者”フィラウティアの手に落ちていようとも、必ず。この私の命に代えてでも、君を守ると誓おう」

 そう――――

 ずっと感じている悪寒は、この橋の安全性を不安に思ってのことではない。益々濃くなるフィラウティアの気配に身体が勝手に反応しているせいだ。

 悍ましき予感とともに。 

 もちろん平然と馬車に揺られているように見えるアカとシロもひしひしと感じ取っているようで、「まったく……もう隠れる気はないらしいな」「えぇ、どうやらそうみたいですね。もはや人間のフリをするのもやめたみたいですよ。この感じだと……」と、不敵さと呆れを含んだ口調で顔を見合わせ、肩を竦めている。

 おそらくだけれど、今のアカとシロには聖獣としての“聖なる光”が万全にあるため、問題なくフィラウティアの“魅了”に対抗できると思う。いや、できるはずだ。うん、多分。

 何故なら、呪いに侵されてもいなければ、従属だってされていないのだから。

 けれど…………と、そんなアカとシロを横目で見やって、改めてトゥレイス殿下へと視線を戻す。

 今この瞬間、私を映す琥珀色の瞳は真摯に澄んではいるけれど、もしもフィラウティアの“魅了”にかかってしまえば――――トゥレイス殿下は――――いえ、トゥレイス殿下だけじゃなく――――――


 レグルス様たちまでも失ってしまうことになる。

 

 一度は、私がアリオトやシロたちに向けて放った闇払いの残滓が、偶然レグルス様たちの中に残っていたこととで、フィラウティアの“魅了”を跳ね返せた。その後は、レグルス様たち自身が最大限の警戒をしたことと、さらにお兄様が最上級の魔法結界をレグルス様たちに施したことで難を逃れていた。

 でも、それは学園内での話。

 その時のフィラウティアは“魔の者”の気配を消し去り、何かしらの方法を使い自ら闇の魔力を封じることで、侯爵令嬢グラティアとして完全に人間に擬態していた。

 もちろんその状態でも“魅了”は使える。

 それは魔力ではなく、フィラウティア個人の能力だから。

 でも、闇の魔力を封じている状態では、さすがにレグルス様たちに張られた魔法結界を破ることはできなったのだろう。だから学園では、敢えて破ろうとはしなかった。その代わりに他の男子生徒たちを掌握することにした。


 その時が来るまで――――――――


 私には確信があった。

 といっても、()()()はフィラウティアを直接知っているわけではない。

 かといって、確信がどこからか降ってきたわけではなく、心の深淵の奥底からまるですべての思考を染め上げていくように這い上がってきた。

 そう、それは揺るぎない確信として。

 あのフィラウティアが、一度目をつけた獲物――――――レグルス様たちを諦めるわけがないと。

 そのことに、よりにもよってこのタイミングで、しかもこんな橋の上で気づくなんてと、自分自身を罵倒したくなる。

 もちろんアカとシロに、トゥレイス殿下とレグルス様たちの守護を頼むつもりではいる。いや、私が頼むまでもなくアカとシロなら彼らを守ってくれることだろう。

 但し、私の次に……という注釈は漏れなく付いてしまうのだけれど。

 それにだ。私だって偶然だろうと、まぐれだろうと一度は跳ね返せたのだ。

 だから、最大限自分の能力を使ってフィラウティアの“魅了”を跳ね返すつもりではいる。その意気込みだけは、十分すぎるくらいにあると言っていい。

 但し、これまた遺憾なことに、自分の能力が未だに何なのかさっぱりわからないという注釈が付くのだけれど…………

 アカやシロは当然のこと、神ルークスにも聞いた。

 自分の――――――“神の娘”の能力が何なのかと。

 しかし、守護獣である二人は自分たちにもわからないと首を横に振り、その能力の与えた御本人様である神ルークスは、“鏡”だから教えられないと苦笑混じりに告げてきた。

 何で?という疑問符がその場で乱舞乱立したものの、正しき目を失うからと言われてしまえば口を噤むしかなかった。

 とはいえ、私だってそのまま手を拱いていたわけではない。

 自分なりに、自分の能力の発動条件などその他諸々を知るためにいくつか試してみた。

 そもそも、神ルークスから告げられた条件は、私が望み、この世界がそれを認めた時――――――という大変曖昧なものだった。

 ならば、どんな望みならこの世界は認めてくれるのか試すことにしたのだ。

 そこで私は望んでみた。

 目を閉じ、それはもう懇願するように必死に。

 前世で自分で作って食べていたトマトケチャップのオムライスが食べたい――――――――と。

 そしてゆっくりと目を開けると、そこには――――オムライスどころか、何もなかった。

 どうやらオムライスはこの世界に認められなかったらしい。なんともケチくさいものである。

 ならばと、公爵令嬢として絶対こさえてはならない愛猫ニクスとじゃれ合っている時に作ってしまった腕の小さな引っ掻き傷に対して、“傷よ治れ!”と祈ってみた。

 けれど、傷は消えることも、薄くなることもなく、そのまま傷薬の出番となった。

 専属侍女、ミラとラナに怒られるというおまけ付きで。

 どうやら私の望みはこの世界にとっては、しょぼ過ぎたのかもしれない。

 というより、自分自身に関する望みは駄目なのでは?――――などと一種の閃きをみた私は、屋敷の使用人の中で怪我をしている人を募り、同じように祈ってみたけれど、ただ傷薬の出番が増えただけだった。

 どうやらこの世界の許容範囲は猫の額よりも狭いらしい。

 それとも切羽詰まった感というか、崖っぷり感が今の私になかったのが敗因なのだろうかと、過去の成功例を色々思い出してみれば、確かにどの場面もかなり必死だった事を思い出す。

 ということは、つまり――――

 平常時にはいくらやったとしても、すべて無駄なのだという結論に行き着き、そこで私の探究心も萎えてしまった。

 そして今に至るわけだけど…………


 もう、こんなことなら、脅してでもルークスから聞き出せばよかったぁぁぁぁぁぁぁぁッ!


 自分の探究心の持続力のなさを棚に上げつつ、神相手に不届き千万なことを考える。

 でもそんなことを考えてしまうくらい、後悔先に立たずという先人たちの名言が身に染みて、絶賛打ちひしがれている状況なのだ。

 それなりの崖っぷちに追いやられれば、天啓の如く正しき望みが湧いて出て、猫の額程狭いこの世界の認定基準もその時ばかりは懐深くなるかもしれないけれど、この一か八かの行き当たりばったり感をそのまま作戦の一部にすることはさすがに憚られてしまう。

 それに――――――――

 “魅了”に一度かかってしまうと、本来は死ぬまで解けない。

 国王陛下の“魅了”が“神の娘”の能力で運良く解けたのは、国王陛下が心の奥底で必死に抗っていてくれていたことと、レグルス様の“伝心”による助力があったからに他ならない。

 その証拠に、レグルス様の助力を持ってしても、王太后陛下の“魅了”は解くことはできなかった。

 おそらく、王太后陛下の心は完全に“魅了”に呑み込まれてしまっていたのだろう。

 だからこそ、最善の策を持ってフィラウティアの“魅了”からトゥレイス殿下とレグルス様たちを守れるようにしなければならないのに、今や逃げ道のない橋の上。もう一台の馬車に乗るレグルス様たちとこの事について話をしておきたくとも、アリオトはシロの影の中に身を潜めてしまったために、電話代わりとなるあの便利な影法師も今はなく、連絡の取りようもない。

 アリオトにお願いして出てきてもらおうかとも考えるけれど、内心で首を横に振る。

 もうこの橋の上はフィラウティアの手の内だと考えたほうがいい。

 ここでアリオトの気配を晒せば、フィラウティアの対象はアリオトにまで及んでしまう。

 それは駄目だ。

 ならば唯一のチャンスは、この馬車を降りた瞬間となるのだけれど、おそらくそのままデウザビット王国の使者として謁見の間に向かうことになるため、レグルス様たちと話し合っている時間はないだろう。

 

 だとしたら、どうすれば………………

 

 明らかな状況の悪さと、自分自身の不甲斐なさに、トゥレイス殿下から目を伏せるようにして視線を逸らし、唇を噛みしめる。

 しかしそんな私の心情を丁寧に読み取ったらしいトゥレイス殿下の声が、殊更優しく降ってきた。

「ユーフィリナ嬢、そんな顔をしないでくれ。私も、レグルス殿たちも、そう安々とフィラウティアの“魅了”にかかったりなどしないよ。私も彼らもそれなりに魔力量も多いし、ある程度強力な魔法結界だって自身で張ることができる。たとえこの先私達の身に何が起こったとしても、それはあくまでも自己責任であって、誰のせいでもない。だから、ユーフィリナ嬢が気を病む必要はないんだ」

「そんなことッ……」

 まるで息継ぎのように顔を上げた私の瞳に飛び込んで来たのは、春の陽光のような柔らかいトゥレイス殿下の微笑み。

「ユーフィリナ嬢、大丈夫だ。だから君は、ただ私たちを信じていてくれればそれでいい」

 あれだけ表情筋がお亡くなりになっていた人とは思えぬほどの柔和な笑みを目の前にして、私はただただ呆けたように目を見開きトゥレイス殿下を見つめ返した。

 そして思う。

 トゥレイス殿下はずっと自分の心が死んでしまわないように、自分自身に絶対凍土の氷のデスマスクを付け続けてきた。

 でも、今はそれを完全に取っ払って私にこんなにも優しい微笑みを見せてくれている。 

 それは私を心から信じてくれているからだ。

 心の裡を見せても構わないと。 

 信用に値する存在だと。

 共に戦う大切な仲間だと。

 そんな人をまだ確定もしていない未来に怯え、さらには自分勝手に彼らを過小評価し、信じられなくなってしまうなんて絶対あってはならないことだ。

 それはレグルス様たちに対しても同じ。

 お兄様とスハイル殿下を認め、慕い、大切な友だと、仲間だと偽りなく言ってくれる人たち。 

 二人を救いたいのだと、ここまで一緒に来てくれた。

 これまでもたくさん守ってくれた。

 今からはそんな彼らと、背を預け合って一緒に戦う。


 また一緒に笑顔で帰るために――――――


 ふと、アカとシロからの視線を横顔で感じた。

 うん、わかってる。

 今更こんなところでフィラウティア相手に弱気になったりしないわ。

 私には頼もしい守護獣が二人も付いているんだもの。

 それに、アリオトもシャムもいてくれる。

 これほど心強いことはない。

 だから信じる。いや、私が信じなくてどうする。

 トゥレイス殿下も、レグルス様たちも大丈夫。

 きっときっとフィラウティアの“魅了”なんかには負けやしない。

 でも、もしも…………もしもの時は…………

 たとえこの世界がそれを認めなくとも、私が彼らを助ければいい。


 だたそれだけのこと。


 トゥレイス殿下の琥珀色の瞳に見入られるようにして、私の瞳も緩やかに細まり、唇は綺麗な弧を描く。

 そしてその唇は固い蕾が綻ぶように笑みにほどけ、心からの言葉を紡いだ。


「はい……私は最後まで皆を信じます」

 

 この時点で、残り一日と六時間を切っていた。


 

 なのに………なのにだ。

 何故にこうなったと今の私は内心で絶賛頭を抱えている。

 

 長い長い非常識極まりない跳ね橋を、馬車二台と3ダースもの騎乗した聖騎士たちという大所帯で無事に渡り切り、レグルス様たちと合流できたのはよかった。

 その際、素早くトゥレイス殿下の護衛騎士様の“言霊”をシェアトが解き、間髪入れずサルガス様がデウザビット王国からの記憶を消すべく“忘却”をかけたのは見事としか言いようがなかった。

 さらに、混乱する護衛騎士様に対して、『お前は落馬したのだ。デオテラ神聖国へ戻る途中、馬が偶然遭遇したグリフォンの群れに驚いた弾みでな。その際に頭を強く打ち付けたのが原因だろう。まさか数時間経ってから症状が出るとは思わなかったが。まぁ、せっかく国に戻ってきて来たんだ。このまま少し休め』と、トゥレイス殿下が再び氷のデスマスク装着の上で、息を吐くように嘘を吹き込んだ。

 まさに護衛騎士様からしたら、寝耳に水な話だろうけれど、ここは皆してトゥレイス殿下の嘘を全力で肯定しておいたのは言うまでもない。

 うん、ここまで作戦通りだ。ヨシ!

 そしてその後、迷路のように入り組んだ城内を延々と歩かされ、謁見の間へと案内された。

 その際、私の前にはこの城の住人であるトゥレイス殿下。さらに両サイドにはアカとシロ。そして背後にはレグルス様たちがピッタリと張り付くという鉄壁な態勢で、その周りを1ダースもの衛兵たちが取り囲むという仰々しさでの城内移動と相成った。

 良く言えば、要人警護。

 悪く言えば、囚人連行。

 私の背が然程高くないことも相俟って、城内の様子はほとんど見えなかった。

 わかったのは象牙のように艷やかな光沢を放つやたらと高い天井と、神聖さをアピールするためか城内全体がやたら白いということだけ。

 そのせいで妙に目がチカチカするけれど、特段支障もない。

 ただ敢えて言うならば、支障というほどではないけれど、城内が複雑過ぎて目が回り、息が上がってしまったことだけは些か困った。しかしこれはただ単に日頃の運動不足が祟っているだけなので、誰のせいでもない。

 私のせいだ。

 うん、これからは率先して運動していこうと心に決める。なんなら護身のために剣を習ってみるのも悪くないかもしれない。

 まぁ、それをお兄様が許してくれるかどうかはわからないけれど………………

 なんて決意と諦念を同時に噛み締めていたところで、ようやく謁見の間に辿り着いた。

 すべての色彩を排除した部屋。

 両側には玉座に向かって重厚感たっぷりの柱が並び立ち、玉座の背後には私たちを見下ろすように神と思われる白亜の像が鎮座していた。

 もはや、謁見の間というより厳かな静謐さに包まれた神殿の中にいるようで――――――

 

 にもかかわらず、ここにきてさらに全身が粟立つほどの悍ましい気配が一段と濃くなった。


 フィラウティアはここにいる。


 灰色の予感ではなく真っ黒な確信。

 気を抜けば、カタカタと音を立てながら震え出してしまいそうなほどの悪寒。 

 しかし、そんなことを露ほども見せず、私たちは郷に入れば郷に従えとばかりにトゥレイス殿下が片膝を付いたのに倣い、床に膝を付いた。

 それが場違いにもシロ以外の全員が制服姿であることなど一切気にしない。

 なんと言っても私たちはトゥレイス殿下の御学友。

 たとえなっちゃって修学旅行生に見えようとも、皆で着てれば怖くない。

 もちろんここで守護獣として認知されているアカだけは、膝を折ることもなく、むしろ威風堂々と立っていたけれど、謁見の間に控えている衛兵たちも、『何故守護獣様が制服姿?』とは、誰も口に出しては突っ込まなかった。

 おそらく無理やり呑み込んだものと思われる。

 うん、賢明な判断だ。

 そして、いざ国王陛下との謁見となり――――――――――



 それはそこで起こった。


こんにちは

星澄です☆ 

たくさんの作品の中から、この作品にお目を留めていただきありがとうございます♪



毎度のことながら、大変長らくお待たせしましたぁ

絶賛夏風邪を引いております。

今もゲボゲボです。

でも書けたからいい。満足……



ということでお話ですが、ようやく入城です。

そして次回は、いきなり危機的展開の予感です!



恥ずかしながら誤字脱字は見つけ次第、すぐに修正いたします。

何卒ご容赦のほど………。:゜(;´∩`;)゜:。



ではでは

どうぞよろしくお願いいたします☆



星澄

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ