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ヒロインの登場です!どうやらヒロインはお兄様を攻略対象にしたようです!(9)

 華やかさと、荘厳さが同居する由緒正しき大ホールに、突如として現れた火炎地獄。

 それを目にしながらも、シェアトの“言霊”のせいで動けない衛兵たちと招待客たちにとっては、まさしく地獄絵図に見えるだろう。

 ただ、国王陛下の放った業火は明らかに意志を持っており、断罪すべき私だけを標的ににじり寄ってくる。

 息苦しいほどの熱量。

 メラメラと燃える炎の向こう側に陽炎が揺蕩う。

 しかしそれでも、今回もまた恐怖を味わう時間はほとんどなかった。

「まったく………炎狼相手に炎攻撃とは恐れ入る」

 アカは完全に呆れ口調でそうぼやくと、獰猛に燃え盛る炎に向かって右手を差し出し、「沈まれ」と諌めるように告げた。

 すると、きかん坊の如く暴れ狂っていた炎が、シュンと項垂れたように落ち着く。

 言うなれば、轟々と燃え盛っていたキャンプファイヤーの火が、コンロの弱火へとなったような慎ましやかさだ。

 さすが炎狼。

 炎の躾ができるらしい。

 すっかり大人しくなった炎にアカは「いい子だ」と呟くと、今度は突き出していた手を天に向かって勢いよく振り上げた。

 そのアカの一振りに、今や従順な下僕(しもべ)と化した炎は、天へと向かって一気に火力を上げた。

 それはさながら炎のカーテン。円形状に広がった炎のカーテンは、私たちを綺麗に取り囲み、その視界をすべて遮ってしまった。

 すなわちこのカーテンの中は、外部と遮断されたことで味方だけとなり、視界を埋めるモノがたとえ炎一色であったとしても、アカが作り出した炎と思えば恐怖心すら湧かなかった。

 そして、ある記憶を呼び起こしながら、私はアカへと声をかける。

「イグニス、この炎はあの時と同じモノなの?触らなければただの幻で、触れば忽ち本物の炎となってその者を焼き尽くす、あの時の結界と…………」

「いや、似ているが少し違う。今回の炎は、国王が放った炎をそのまま再利用したものだからな。半分本物で半分が幻だ。だから表面上は本物の炎で外の連中は大層熱いだろうが、オレたちがいる内側は幻の炎でできた結界となっているから温度すら感じない。それに………………」

 そこまで告げると、何故かアカは天井を見上げた。

 私もそれを追うようにして視線を上げる。

 当然、そこには天井に向って隆々と立ちのぼる炎のカーテン。そしてその炎のカーテンが天井で綺麗に取り囲むのは、この大ホールに飾られた大シャンデリアの一つだ。

 炎の色の染まりながらも、煌々と光を放つシャンデリア。その決してあってはならない非現実的な光景に――――――


 綺麗………… 


 こんな時なのに、そんな呑気なことを思ってしまう。

 しかし、大シャンデリアの上部に蠢く影を見つけて、呑気な感想ごと息を呑む。

 とはいえ、なんといっても大ホールに設えられた大シャンデリア。

 見上げるのもなかなか骨が折れる高さにあり、またクリスタルガラスに揺らめく炎の色と、シャンデリア自身の放つ光が相俟って、自分の目に映るモノに対してどうにも確信が持てずにいる。

 一度目を閉じ、また直ぐに開け、目つきなど一切気にせず眇めてみる。それでも乱反射する光が邪魔をして、どうにも焦点が絞ることができない。

 そんな悪戦苦闘中の私の横から、西の公爵家兄妹もまた参戦してくる。

「お、お兄様、もしかしてあれは…………」

「あぁ………おそらく………………」

 どうやら、西の公爵家兄妹にも見えるらしいことから、自分の目の錯覚ではないことだけはわかる。

 但し、私と違って、サルガス様とシャウラはあの黒い塊の正体を薄々感づいているらしい。しかもそれは、我が南の公爵家の面々にも言えることで、私だけがまたもや置いてきぼりを喰らってしまったようだ。

 一体何なの?

 周りの様子からいって、頭上の黒い塊はどうやら警戒すべきものでないことだけはなんとなくわかる。とはいえ、その正体がわからなければやはり不気味でしかない。

 邪魔な光を遮るように手を翳し、さらに目を眇めてみる。

 その瞬間、大シャンデリアの上で、小さな旋風が起こった。

「な、なに…………?」

 逃げ場などどこにもないのに、咄嗟に一歩後退る私に、「ユーフィリナ、大丈夫だ」と、お兄様の声が届く。

 それは皆の気配からも、肌で感じてはいるけれど、如何せん私の目にはただの黒い塊にしか見えない以上、本来であれば無用な自己防衛機能が働いたとしても、それは致し方ないことだと思う。

 しかし、そこからはすべてが一瞬の出来事だった。

 ゴウッと唸り声を上げながら、炎のカーテンに添うようにして渦巻き状に吹き降ろしてくる猛烈な吹雪。と同時に、大シャンデリアから黒い塊が吹雪に身を任せるようにして降ってくる。

 それはさながら吹き降ろしてくる吹雪が、その得体の知れぬ黒い塊を私たちの元へと運んでくるようだった。

 とはいえ、この吹雪を見てその黒い塊の正体に感づかないほど、愚鈍でもないつもりだ。

 

 あぁ……きっと………いえ、間違いなくそうだわ。


 高ぶる予感を胸に抱きつつも、容赦なく吹き荒ぶ雪にとうとう目を開けていることもままならず、ぎゅっと閉じた瞳の向こう側で、トンと床を踏む音がした。

 そして、ゴウゴウと耳を衝いていた唸り声が消える。

 そのことに僅かな安堵と、大いなる期待を持って、私はゆるりと目を開けた。

「ユフィ……ようやく会えた」

「シロ!」

 一目で上等とわかる黒の夜会服と白銀の長い髪に白い雪の残滓が舞い、銀の瞳は優し気に細められる。

 あの日以来、全然会えていなかったもう一匹の守護獣である雪豹のニクスに、私は今の状況も忘れ、笑顔を弾けさせた。

 でもすぐに、自分の失態に気づく。

「ご、ごめんなさい。今はアンゲリー伯爵と呼ばなくてはいけなかったわね」

 舞踏会の前に予めお兄様からそう注意されていたにもかかわらず、『シロ!』と呼んでしまった自分のうっかり加減にへにょりと眉を下げる。

 そんな私の情けなさと申し訳なさが入り混じった顔に、シロは苦笑しながら「今はイグニスの結界の中だから問題ありませんよ。それに私も“シロ”と貴女に呼んでいただけて、とても嬉しいですから」と、すぐに気持ちを浮上させてくれた。

 しかしそんなシロに、アカがからかうように告げる。

「ま、お前の名前はすでに白猫の名前に使われてしまっているし、人型でいようと()()()の名前は呼べないからな」

 確かに…………何も知らなかった、いや、覚えてなかったとはいえ、私はよりもよって保護した白猫に“ニクス”という名前をつけてしまった。今やすっかり雪だるまと変じてしまった可愛い愛猫に。

 あの時、本当にその名前でいいのか?とお兄様に尋ねられたけれど、できればもう少しきっぱりはっきりと止めて欲しかったと、今更ながらに真剣に思う。

『その名前は、神が創造した特別な聖獣の名前だからやめておいた方がいいんじゃないかな?』

 ―――――などと、言って。

 ま、さすがにこうなる未来をお兄様が知っていたとは思わないけれど。

 だからといって、今更愛猫の名前を改名するわけもいかず、居たたまれない気持ちでシロを見ると、シロは気にするなとばかりに私に微笑んでから、アカへと冷え冷えとした視線を向けた。

「おやおや、それは嫉妬ですか?自分の名前を一瞬たりとも思い出してもらえなかったことに対しての。たとえ猫の名前だろうと、ユフィがずっと私の名前を口にしていてくれたことを思えば、ただただ嬉しいだけですよ」

「だ、だ、誰が妬くか!だいたいお前も見ただろう?あの雪だるまを。同じネコ科としてアレはどうなんだ!」

「可愛いではないですか。但し、私は聖なる雪豹であって、ネコ科などという分類には属していませんがね。馬鹿イヌ科に属している、火を噴いては何でもかんでも焼きたがる、ヤキモチ焼きの炎狼とは違ってね」

「はぁ⁉馬鹿イヌ科ってなんだッ!」

「駄犬だけが属する科ですが、何か?」

 何故か突然始まった炎狼と雪豹の口喧嘩。

 私はただただオロオロするばかりだけれど、どうやら他の面々はもう見慣れているらしい。

 いや、お兄様とサルガス様はわかる気がするけれど、シャウラやお父様たちまでもが、この光景に慣れ親しんでいるのは解せない。

 そもそもお父様たちが領地から王都に戻ってきたのは三日前であり、その頃には私の軟禁も解けていたというのに、何故私だけが初見のようになっているのか甚だ謎である。

 しかし、その謎を解明する時間も、今は当然のことながらないわけで――――――

「イグニス、シロ、いい加減にしろ。それより、ユーフィリナをここから逃がす。できるか?」

「ちょっ……お兄様、お待ちください!」

 “逃がす”という言葉に反応した私を片手で制し、お兄様がシロを見やる。その視線にシロの口端が上がり、そのまま口を開いた。

「もちろんですよ。だからこそ、今の今まであんなところで頃合いを見計らいながら隠れていたんですからね。灯台下暗しならぬ、灯台上暗しってことで」

 シロの言うあんなところというのは、あの大シャンデリアのことなのだろう。けれど見計らっていた頃合いというのがわからず、私はコテンと首を傾げた。

 それを横目で見たお兄様が、簡単な説明をしてくれる。

「守護獣であるイグニスやシロの魔法は根本的に我々とは違う。火魔法、水魔法、もしくは光魔法のようでもあるが、すべては聖なる光によってもたらされるものだ。そのため、魔力属性に敏感なものなら、すぐにその正体に気づいてしまう」

「つまり、この舞踏会の招待客、もしくは王家の方々の中に、イグニスとシロが聖なる光を持った聖獣だと、気づくことができる方がいらっしゃると?」

「そうだ。だからこそシロは今回の件が起こった直後に、我々に参戦することなく、身を隠すことを選択した。イグニスが聖なる光をもって魔法を繰り出すまではな」

「えぇっと、それは…………イグニスが張ったこの炎の結界のおかげで、今のシロは聖なる光を使って魔法を駆使しても問題はないということですね」

「そういうことだ。そして――――――」

 お兄様はシロの足元へと視線を移す。

 それに倣うように皆して視線を向ければ。そこには当然のようにシロの影が落ちていた。

 言うまでもなく私たちの足元にも影はある。だから不思議でも何でもないのだけれど、僅かな逡巡の後で――――


「…………アリオト?」


 私は無意識にそう声をかけていた。

 しかしすぐに、まさか……という思いが込み上げてくる。けれど、私の目は確信を持ってソレを見つめていた。

 すると、ややあってシロの影が僅かに身じろぎ、覚悟を決めたかのようにむくっと半身を持ち上げる。

 まさにホラーな状況だけれど、シロの屋敷ではもっとホラーな場面を見た身だ。もはやこれくらいでは恐怖の対象ともならず、むしろ元気そうなその姿に相好を崩した。

「アリオトもシロと一緒にいたのね。久しぶりに会えて嬉しいわ」

 黒い影のままのアリオトは、白抜きにした丸い目をさらに丸くして、ギョッとしたように私を仰ぎ見た。そして怪訝そうに聞いてくる。

「ねぇ、その平和ボケしてそうな頭大丈夫?ボクが何者かちゃんとわかって言ってる?不完全な状態とはいえ、これでもまだ“魔の者”なんだよ。それも君を欲している危険なね。それなのに、拍子抜けもいいところだよ」

 あんまりな言い様に、私は内心で苦笑しつつも、平然と答えた。

「わかっているわよ。でも、こうしてシロと行動を一緒にしてくれているってことは、今は“魔の者”としての使命ではなく、自分の意志で動いているってことでしょう?それに今は私たちを助けるために来てくれた。違う?」

 私の言葉を聞いたアリオトがプイと横を向いた。

 何故かそれに喰いついたのがシャウラとお母様だ。

「まぁまぁ、“魔の者”なのに照れているようですわよ」

「あら、シャウラにもそう見える?ふふふ、わたくしにもそう見えますわ」

「ですよね。それにしても、さすがユーフィリナ様だわ。すっかり“魔の者”まで掌握されているだなんて」

「本当に。我が娘は最強ですわね」

「えぇ、おば様。最強の最強ですわ」

 

 いやいや最強の最強って、魔力枯渇寸前の私には一番程遠い言葉ですから。

 それに“魔の者”を掌握した覚えもないのだけれど…………


 ここにきて、どうしてそのような最強伝説が誕生したのかまるでわからない。しかしそこは敢えて聞き流すことにし、依然としてそっぽを向くアリオトを覗き込めば、アリオトは観念したように深いため息を吐いた。そして、どこか不貞腐れたように告げてくる。

「あぁ、そうだよ。そこにいる君の守護者たちに脅されて仕方なくね。ほんと、弱い者虐めもあったもんじゃないよ。でもま、最終的に君を手に入れるのはボクだけどね」

 “魔の者”であるアリオトが果たして弱い者に該当するのかはさておき、私が完全な箱入り令嬢状態にあった頃に、どうやらお兄様たちとの間でちょっとした裏取引らしきものをしたらしい。

 アリオトは脅されたなんて言っているけれど、きっと、おそらく、穏便で健全な取引だったのだろうと思う。というか、そう思いたい。

 私の心の安寧のためにも。

 でもある意味、アリオトらしいその台詞に、私は苦く笑ってもう一度口を開く。

「アリオトがアリオトらしくいてくれてよかったわ」

「ッ!」

 私の言葉があまりに以外だったようで、アリオトの身体がびくりと跳ねた。そして、呆けたように私を見つめた。そこに私の本心がちゃんと存在するのか確かめるように。

 けれど、どんなに見つめられようと、それが私の本心なのだから仕方がない。

 あの時の私は、アリオトが望む望まないにかかわらず、アリオトの闇で満ちた心を、希望の光で照らしてあげたいと思った。

 まず私自身がアリオトという“魔の者”の存在を認め、闇色に染まったアリオトの心を光で照らし、この世界はたくさんの色で溢れていることを教えてあげたいのだと。

 だから、今日現れたアリオトが、今までとは打って変わってキラキラモードの品行方正な別人ではなく、私の知るアリオトであったことが妙に嬉しかった。

 アリオトの人格を壊すことなく、それでいてなんだかんだと言いながら、私たちの味方をしてくれるアリオトで、本当によかったと。

 そんな想いで見つめていたら、呆けていたはずのアリオトの白抜き目が細まり、そのままがっくりと項垂れた。

 そして、誰にというわけでなく、項垂れたまま問いかけてくる。

「で、さっきの問いかけの答えだけど、できるよ。但し、()()お一人様限りだけどね」

 おそらくアリオトの答えの矛先は、先程のお兄様が口にしていた、私を逃がすことができるかどうかについてなのだろう。

 アカの結界の中にいるという安心感から、ついつい現実が忘れがちになっていたけれど、こんなところで感動の再会をしている場合ではなかったと、お兄様へと振り返る。

「お兄様、逃げるなら皆一緒に…………」

「ユーフィリナ、ここから逃げるのはお前一人だ。シロとアリオトと一緒に行きなさい」

「なっ………………」

 何故?という思いが喉元に競り上がってくるけれど、それを声に変えることもできず、私はお兄様を見つめ、ぷるぷると小さく首を横に振った。

 狙われているのは私なのだから、お兄様の言うこともわかる。

 でも、私を守るために、お兄様たちは国王陛下に刃を向けた。

 このままタダで済むはずがない。

「嫌……です。皆が行かないなら私も残ります」

 我が儘を言っている自覚はある。

 自分が足手まといになることも。

 それでも、自分が発端で起こったことを押し付けて、一人悠々とここから退場するわけにはいかない。

 なのに……………………

「悪いがユフィ、ニクスと一緒に行け。オレがここを離れると炎の結界が消える。早い話、手が離せないんだよ」

「私は、今いる招待客に“忘却”をかけなければならないからな。自動的に居残り組だ。だからユーフィリナ嬢、気にせず行ってくれ」

「私もこの後、とち狂った国王陛下と王太后陛下の処遇について、王の両腕である東西公爵と、おそらく今頃、事態の収拾に向けて裏で動き出している北の公爵と話し合わなければならない。だからユーフィリナ、雪豹殿と行きなさい」

「アカ……サルガス樣…………お父様までそんな…………」

 ぶんぷんと聞き分けのない子供のように首を振る私に、今度はお母様が宥めるように話しかけてくる。

「ユーフィリナ、何も今生の別れではないのよ。ただね、私たちにもこの後やることがあるだけなの。だから、先に帰って休んでいなさい。すぐに私たちも戻るから」

「おば様の言う通りですわ。今は、大人しく守られておいてくださいな。それでこないだの件は、貸し借りゼロにしてくださいませね」

 シャウラの言うこないだの件とは、魔力暴走の件なのだろうと思うけれど、友達を守るのに貸し借りなど端から存在しない。

 けれど、それは今の私たちにも言えることで………………

「ユーフィリナ、心配はいらない。私もこの後、スハイル殿下やレグルス、シェアト殿と会わなければいけないだけだ。すぐにお前のもとへ戻るから、シロたちと行きなさい」

「お兄……様……………………」

 もう首を横には振れなかった。

 だからといって納得したわけでもない。

 しかし――――――――


 ドンッ! 


 遠くで響いた爆音のような衝撃音。

 アカの張った結界に向かって、何かしらの攻撃魔法が展開されたらしく、アカが眉を寄せて舌打ちした。

「人間なんぞの攻撃魔法にこの結界が破られるわけはないが、長引けば長引くほど、結界の外にいる人間が巻き添えを食う。なんせ、この結界の外回りは本物の炎だからな。ユフィ、外の連中も守りたいなら、今すぐ行け!これはお前の守護獣としての頼みだ!」

「アカ…………」


 ドン!


 再び放たれたらしい攻撃魔法に、シロが強引に私の腕を掴んだ。

「ユフィ!早く、行きますよ!アリオトの影の上に乗って下さい!」

 どうやら、アリオトの闇を使って、転移するつもりらしい。

 私の足がシロに引きずられるようにして、アリオトの影の上に乗る。

 それでも私の視線はお兄様から離れない。

「ユーフィリナ、大丈夫だから行け!」

 わかってる。

 大丈夫なことはわかっているし、お兄様たちを信じている。

 だけど、モクモクと暗雲が立ち籠めるように、胸に影を落とす不安が拭えない。

 どんなに振り払ってみても、嫌な予感だけがつき纏う。

 私はもう片方の手をお兄様へと伸ばす。

 お兄様は切なげに目が細め、その手を掴んでくれる。

 そして指が鳴らされ、私はお兄様の幻惑に囚われた。

「お兄…………ッ」

 幻惑の中で重なった唇。

 でもそれは刹那のことで、お兄様は突き放すように私の腕を押しやると、再び指を鳴らし幻惑を解いた。


「シロ!ユーフィリナを連れて行け!」

 

 そう言い放って向けられた背中。

 私は涙でぼやけ始めたその背中が何故かとても遠く感じられて、どうして…………と、音なき声で問いかける。

 そして、唇に残された熱にその意味を求めながら、シロと共にアリオトの闇へと呑まれた。

 

こんにちは。星澄です☆ 

たくさんの作品の中から、この作品にお目を留めていただきありがとうございます♪



はい、日付変更線も無事超えて

投稿と相成りました。

本当にすみません(泣)


さてお話は、ようやく出てきたシロとアリオトです。

ここからがまた大変なことになっていきますが、

なんとかユフィには乗り越えてもらいましょう!



恥ずかしながら誤字脱字は見つけ次第、すぐに修正いたします。

何卒ご容赦のほど………。:゜(;´∩`;)゜:。


どうぞよろしくお願いいたします☆



星澄

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