自由市国ルーデウス誕生
「でしたらティムさまの故郷であるルーデウス村から街の名をお借りするというのはいかがでしょう?」
「なに?」
「蒼狼王族にとってもルーデウス村の存在はとても重要なものです。ティムさまが村を探していたからこそ我々はティムさまと出逢うことができましたから」
たしかに見方によってはルーデウス村が俺たちを結びつけたと考えられなくもない。
「それと残念なことに村の情報はまだなにも得られていません。ですから今回その名を浸透させることでルーデウス村の存在をより身近なものとし、いつかかならず見つけ出すという意志を皆で共有したいのです」
なかなかすごいこと言い出すなぁ、霧丸のやつ。
たしかにそのとおりで依然として村についてはほとんどなにも分かっていなかった。
実はルーク軍曹たちとオーガ族の集落へ赴いている最中、霧丸にはコロポックル族の棲み処を訪ねてもらっていた。
霧丸はコロポックル族がどこで暮らしてるのか知ってたみたいで、それならってことで俺がお願いしたんだ。
頼んだ内容はひとつ。
ルーデウス村についての情報収集だ。
長年ランドマン大陸で暮らしてきたコロポックル族ならルーデウス村についてなにか知ってるんじゃないかと思ってそうお願いしたわけだけど。
結果は不発。
コロポックル族もまた村についてなにも知らなかった。
そういうこともあって霧丸はこんな提案をしてくれたのかもしれない。
(いつかかならず見つけ出すという意志を皆で共有したい、か)
そうだな。
ルーデウスって名が大陸に知れ渡ればそれを耳にした村の誰かが姿を見せてくれるって可能性もある。
当初の望む形とはだいぶ違うけどそれで村が見つかるなら万々歳だ。
「分かった。霧丸の提案を採用したいと思う」
みんなの視線が集まる中でそう口にすると集会の間には小さな拍手が起こる。
が、続く宣言によってそれは大きなどよめきへと変化した。
「そんじゃ今日から俺たちが暮らす場所は……自由市国ルーデウスだ」
「「「おおおおぉっ~~!?」」」
市国って言葉にこの場に集まる全員が驚きの顔を浮かべる。
もちろん思いつきで言ったわけじゃない。
こう名づけたのには理由があった。
「正直国って呼ぶには街の規模が小さいかもしれないけどさ。でもこういうのは大げさな方がいいと思うんだ」
「どういう意味でしょうか?」
ズーポが期待の眼差しで訊ねてくる。
「だって俺たちはこれから大魔帝ニズゼルファに立ち向かおうとしてるわけだろ? だったら名前負けしない共同体を自称すべきじゃないかと思ってさ」
それに国って名づけた方がみんなの帰属意識もより高まるだろうし。
暫しの沈黙のあと。
すぐに賛同の声が上がった。
「いいですね自由市国ルーデウス」
「素晴らしい名です!」
「今日からここは国となるわけですね~」
「ぜひそれに決めましょう、ティムさま!」
全員の賛成によって自由市国ルーデウスの名は正式に決定となった。
◇◇◇
続けて国の中心で動く幹部を決めることに。
両種族の中から霧丸、ルーク軍曹、ガンフーの三名が推薦されてこれも満場一致で可決された。
「幹部も決まったとなれば最後は国の盟主を決めなければなりませんね」
「となればおひとりしかいないだろう」
「ですな」
霧丸とガンフーが頷き合っているとルーク軍曹が元気に声を上げる。
「ではティムさま! そういうことですのよろしくお願いします!」
「やっぱり俺なのか」
「もちろんですよー。支配者さまが国の盟主となるのは当然かと!」
間からズーポも話に加わってくる。
「いや。こういうのは名前を決めるのとはわけが違うぞ? この土地で族長としての豊富な経験がある霧丸が務めるべきじゃないのか?」
もともと俺はただの村人にすぎなかったわけで。
こういうまとめ役は実は面倒だったりするんだよなぁ。
それに実際やってみて分かった。
俺はリーダーに向いてないって。
盟主って言うんなら霧丸やガンフーの方がよっぽどふさわしい。
けどそれも霧丸にすぐさま否定される。
「なにをおっしゃいますか。ティムさま以上にこの国の盟主にふさわしい方はおりません」
霧丸がそう言うと広間に集まっている全員が深々と頷く。
やれやれ、どうしても俺の意見は通らないらしい。
「分かったよ。みんながいいって言うなら俺が盟主をやるよ」
「「「おおおおおぉぉっ~~~!!」」」
結局流される形で一国の盟主なんて大役も引き受けてしまうことに。
まぁ任されたからには全力で取り組むだけなんだけどさ。
「この瞬間、三つの種族が共存する新たな国が誕生しました! その名は自由市国ルーデウス! 盟主は支配者であらせられるティム・ベルリさまです! 皆盛大な拍手を!」
ぱちぱちぱち! ぱちぱちぱち!
ルーク軍曹の言葉に万雷の拍手が鳴り響く。
みんなの顔がとても清々しいものだったから結果オーライってことでいっか。
後日。
微精霊を通じてランドマン大陸で暮らすドワーフ族とコロポックル族にもこのことが伝えられるのだった。




