街の名前を決めよう
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〈ティム・ベルリ〉
年齢:15歳 種族:人族
職業:村人
準位職:贈与士 AP 5,000
レベル ∞
HP ∞
MP ∞
攻撃力 ∞
守備力 ∞
魔法力 ∞
ちから ∞
みのまもり ∞
きようさ ∞
すばやさ ∞
[スキルポイント] ∞
[所持ルビー] ∞ルビー
[所持アイテム] ほしにくの実×∞、ほしにくの種×∞
[固有スキル]
【命中率0%】
【智慧の頂】
[EXスキル]
【オートスキップ】
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俺は今領主館1階にある集会の間にいた。
「これってほんとどういう数値なんだろうな」
中央の椅子に座りながら光のウィンドウを弾く。
俺を悩ませているのはAPだ。
あいかわらずこいつについては謎でいつの間にかこの数値は5,000にまで増えていた。
(APの項目をタップしてもなんの反応もないし。マジで謎だ)
数値が増えたことでなにか体に変化があるわけでもない。
ただひとつ確かなのは種族を配下に置くたびにこの数値が増えてるってことだ。
悩みの種はこれだけに尽きない。
あの日から数日後。
オーガ族がイヌイヌタウンへと移り住んできたわけだがさっそく問題が起きている。
すべてのオーガ族が移り住めていないんだ。
理由は単純で居住スペースを人数分用意できていないから。
イヌイヌタウンはロザリオテンの跡地を利用してるわけだけど、居住区の中で使用できそうな場所はすでに限られていた。
だから現状オーガ族全体の3分の1程度しか移り住めていない。
ガンフーにこっちに来てもらってるから洞窟では女戦士長のクリエに残ってもらってる。
見切り発車的に提案してしまったなと今ではちょっと反省。
もちろんオーガ族のみんなには不便をかけることを謝罪した。
皆『気にしないでください!』とか『いつまでもお待ちしてます!』とか言ってくれたけど。
一族が離れ離れに暮らす現状はかなりつらいはずだ。
ひとまず居住スペースの確保が最優先の課題と言えた。
「失礼いたします」
集会の間にガンフーとズーポ、数名のオーガ族が姿を見せる。
俺の姿を目にすると彼女たちはすぐに頭を下げた。
「主さま。お待たせしました」
「わざわざ来てもらって悪いな。さっそく座ってくれ」
皆をテーブルへ案内すると俺は改めて謝った。
「住居が人数分確保できてなくてほんと申し訳ない。こっちから提案したってのに」
「なにをおっしゃいますか。こうして一部の者だけでも先に住まわせていただけたこと心より感謝しております」
ガンフーの言葉にズーポとほかのオーガ族の皆もうんうんと頷く。
「こっちも蒼狼王族の中で器用な者たちを集めて居住区の整備を進めてるんだけどなかなか上手くいってなくてさ」
料理の腕前はピカイチの蒼狼王族だけど力仕事は不向きだったりする。
まぁこればかりは仕方ない。
種族には向き不向きがあるから。
「そういうことでしたら我々にもなにかお手伝いさせてください。自分たちの住いは自分たちで作りたいと思います」
「え、いいのか?」
「当然です。のちほどオーガ族の中で役に立ちそうな者を選抜したいと思います」
「助かるよ。ガンフーには戦術の指南番までやってもらってるってのに面倒ごと押しつけてほんとすまない」
「とんでもございません。ほかにもなにかあれば遠慮なくおっしゃってください」
「分かった」
そこで次の来訪者が現れる。
ノックの音とともに霧丸とルーク軍曹、数名の蒼狼王族が顔を覗かせた。
「遅くなりました。申し訳ございませんティムさま」
「ぜんぜん待ってなんかいないぞ。さあ座ってくれ」
霧丸たちをテーブルに着席させると俺は皆に向かって口を開く。
「みんな。今日も忙しい中こうして集まってくれて本当にありがとう。んじゃさっそく会議をはじめようか」
ぱちぱち、ぱちぱち。
拍手が鳴りやんだあとでズーポが声を上げる。
「それで支配者さま。今回はどのようなご用件なのでしょうか?」
「うん。今回みんなに集まってもらったのはイヌイヌタウンに代わる新しい街の名前を決めようと思って」
俺がそう言うとざわめきが起こる。
それは主にオーガ族の方からだった。
「街の名前? ですがここは蒼狼王族の街です。名前を変える必要なんてないと思いますが」
不思議そうに口にするガンフーに向かって俺は言う。
「たしかにそうなんだけど。こうしてオーガ族のみんなも移り住んできたわけだし。新しい街の名前が必要かなって思ってさ」
「しかしこの街の名は蒼狼王族にとって大切な名前のはずで……」
ガンフーがそう言いかけたところで霧丸が声を上げる。
「ガンフー殿。実は某がティムさまに頼んだのです。この街の新たな名を決めてほしいと。これからオーガ族の皆さんと一緒に暮らすわけですから」
霧丸の言葉にルーク軍曹とほかの蒼狼王族の仲間たちも頷いて同意する。
「とまぁそういうわけだ。族長の霧丸がこう言ってるわけだし、オーガ族のみんなも一緒に新しい街の名前を考えてくれないか?」
「……分かりました。主さまがそうおっしゃるのでしたら」
「よし。それじゃ思いついた者から手を挙げて候補名を言ってくれ」
が。
しばらく経っても誰も手を挙げようとしない。
「どうしたみんな?」
そこでなぜか全員の視線が俺に集中する。
「え? なに?」
「ティムさま。やはりこのようなことを決められるのはティムさま以外にいないんじゃないでしょうか」
「俺?」
ルーク軍曹がそう言うと集会の間にふたたび大きな拍手が起こる。
「やはりそうですな」
「こういうものはティムさまに決めていただきませんと」
「どんな名前をつけられるか楽しみです!」
とみんな俺に任せる気満々だ。
(いや決めてほしいって言われてもなぁ)
ぶっちゃけ俺は自分のことを両種族の仲を取り持つ橋渡し役にすぎないって認識している。
だからこういう重要なことはみんなで話し合って決めてほしいっていうのが本音だった。
「さすがに俺が決めるわけにはいかないって。ここは蒼狼王族とオーガ族が暮らす街なんだし」
「なにをおっしゃいますか! この街はティムさまあってこそのものです!」
「ルーク軍曹の言うとおりかと。主さまがいてこそ我々オーガ族は移り住めたわけです」
「そうかもしれないけど……」
それから俺がなにか言ってもみんなは『ここはティムさまが治める街ですから!』の一点張りだった。
こんなに団結力があるならすぐにでも街の名前を決められそうなんだけどな。
そんな場がわちゃわちゃとする中で。
霧丸がふとこんなことを呟く。




