APの謎
あれから一週間が経過した。
あの日の翌日、街の広場へと連れて行かれた俺はそこで蒼狼王族のみんなから正式に支配者と認められた。
その後、あれよあれよと担ぎ上げられて今では高台にある3階建ての領主館で生活を送っている。
この領主館はロザリオテンの貴族が暮らしていたようだ。
生活はさぞ優雅だったんだろう。
館の中は隅々まで煌びやかな装飾が施されているし。
それとこの高台は皇都のちょうど端に位置してたようで魔族の襲撃を奇跡的に免れたみたいだ。
だから館の周辺はほとんど無傷のまま残されている。
大きな庭園も荒らされずにそのままだ。
イヌイヌ族のみんなはなにか大きな集会のときだけ使うくらいでこの領主館はほとんど使ってなかったようだな。
霧丸からここをぜひ使ってほしいと言われたときはさすがに驚いた。
ちょっと前までちんけな民家で生活してた俺にとってこの豪邸は贅沢極まりない。
けど、俺がなにか言っても霧丸は「支配者さまには相応しい住いが必要です」の一点張りで。
結局押し通される形でここで暮らすことになった。
今は3階にある豪華な大部屋で何不自由なく生活を送っている。
食事も配給係が毎回運んできてくれるし。
三食昼寝つきで言うことなしだ。
村人だったころは毎日陽が昇る前から森へ行ってせっせと薪集めをしてたから、ほんとすごい変わりようだ。
(こんな風に楽な生活を送ってていいのかなぁ)
支配者なんて大それた名を名乗ってるけど、これといって俺はなにもしていない。
領主館の1階にある集会の間に顔を出して霧丸やルーク軍曹の報告に頷いたりちょっと意見を言ったりしてるだけだ。
この間に判明したことがふたつあった。
まずはステータスに関してだ。
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〈ティム・ベルリ〉
年齢:15歳 種族:人族
職業:村人
準位職:贈与士 AP 1,000
レベル ∞
HP ∞
MP ∞
攻撃力 ∞
守備力 ∞
魔法力 ∞
ちから ∞
みのまもり ∞
きようさ ∞
すばやさ ∞
[スキルポイント] ∞
[所持ルビー] ∞ルビー
[所持アイテム] ほしにくの実×∞、ほしにくの種×∞
[固有スキル]
【命中率0%】
【智慧の頂】
[EXスキル]
【オートスキップ】
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レベル∞になっても微動だにしなかったAPが1,000に増えていたんだ。
俺が蒼狼王族のみんなに支配者として認められる前はAP1だったからなにか関係があるのかもしれないと思ってこのことを霧丸とルーク軍曹に訊ねるも。
「申し訳ございません、ティムさま。この数値は我が一族の間でも長らく謎のままとなっておりまして……」
「族長の数値は100。吾輩の数値は50。ほかの者たちは基本的に1~10の間なのですが、やはりこれにどのような意味があるか分からないんです」
「やっぱりそうなんだ」
まぁ現状なにか不利益があるわけでもないし。
俺はいったんこれを気にしないことに決めた。
それよりも気がかりだったのはもうひとつの方だ。
蒼狼王族に進化してパワーアップしたことで辺境調査団はかなりの兵を補充することができた。
そのためモンスター退治の班とルーデウス村調査の班が分かれることになった。
ルーク軍曹には調査班のリーダーを務めてもらって村の調査に何回か行ってもらったわけだけど、やはり発見することはできなかった。
村を囲っていた外壁の痕跡すら見つけることができなかったんだ。
(【オートスキップ】を使って俺が昏睡してたのは一週間かそこらだ。そんな短期間のうちに村がどこかへ消えて無くなるなんてやっぱどう考えてもあり得ないぞ)
それにあれだけ高くそびえ立っていた壁が綺麗さっぱりと消失するなんて正直考えられない話だった。
疑問はほかにもある。
実は領主館2階にある大広間には蒼狼王族のオーブが保管されている。
それを目にして思ったんだ。
(そういえばうちの村にも種族のオーブがあったよな?)
それを手にするために勇者さま一行はルーデウス村を訪れると村ではそう言われていた。
でも今考えれば違和感がある。
ルーデウス村は本当に小さな村にすぎない。
そういう重要なものは本来ならば大きな街……それこそ皇都みたいなところに保管されているものじゃないのか?
(それに)
エアリアル帝国って名前をはじめて耳にしたときにフラッシュバックしたあの光景はいったいなんだったのか。
どうして玉座の間に飾られていた国旗の紋章とあの隠しダンジョンがあった結界の上に浮かび上がっていた紋章が似てたのか。
俺には分からないことだらけだった。
「村の手がかりを掴めず大変申し訳ございません、ティムさま」
「いや、ルーク軍曹がそんな風に謝る必要なんてないよ。辺境調査団のみんなはよくやってくれてるから。悪いけど引き続き頼むよ」
「はい。かしこまりました」
今度はモンスター退治に行かなければならないってことでルーク軍曹が先に集会の間を出る。
それを見届けると、霧丸がなにかを思い出したように口にした。




