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蒼狼王族の支配者となる

 翌日。

 俺は族長の家へと招かれていた。


 昨日はいろいろあって疲れてたのかあのあと宿屋を借りた俺はそこで爆睡した。

 おかげでもう夕方近い。


 けど頭はすっきりしていた。


 奥の広間に顔を出すと一段とたくましくなった霧丸が頭を下げながら言う。


「一族の念願であった種族進化がこんな形で達成されるとは思っておりませんでした。心から感謝します、ティム殿」


 えっと……誰だっけ?

 姿も変われば口調も変わってもはや別人にしか見えない。


 ルーク軍曹やほかのみんなにしてもそうだ。

 なんというか雰囲気が変わって全員が一気に大人になったような感じだ。


「いや、俺もこんなことになるとは思ってなくてさ。なんか急に悪かったな」

「なにを仰いますか、ティムさん。我が一族を助けていただいたにもかかわらず種族進化のお手伝いまでしていただけるとは感謝してもしきれません」


 そんな風に凛々しくルーク軍曹が言う。

 もはやなにもつっこむまい。


 

 種族進化するためには一族の全員がある一定の条件を達成する必要がある。

 イヌイヌ族の場合は『全員が一定のレベルに達すること』が条件だったみたいだ。


 ちなみに人族はすでに進化を果たした種族だったりする。

 以前は亜人族(デミヒューマン)っていう種族だったかな。

 

 人族は種族進化したことでスキルが使えるようになったわけだけど、どうしてスキルが使えるのかその理由ははっきりとしていない。



 姿勢を正すと霧丸は改まって口にする。


「ルーク軍曹の言うとおりです。本当にティム殿には感謝しかございません。あ、ティム殿と……こんな風にお呼びするのは失礼に値しますね。これからはティムさまと呼ばせてください」

「さすがにそれはやめてくれ」

「いえ。これが正しい呼び方かと思います」


 ルーク軍曹もそんなことを言い出す。

 さま付けなんてめちゃくちゃ恥ずかしいんだが。


「もちろん、このように呼ばせていただくのには理由がございまして。お話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

「理由? なんだ話って」

「実はティムさまがこちらへいらっしゃる前に一族の皆と話し合いの場を設けたのですが、そこで決定したのです」

「なにか決まったのか?」


 俺がそう訊ねると霧丸はうれしそうにこんなことを言い出した。


「はい。ティムさまに我が蒼狼王族(サファイアウルフズ)支配者(オーバーロード)をやっていただくことが決定しました」

「支配者?」


 なんとも仰々しいふたつ名が飛び出してきた。


 ルーク軍曹が補足してくれる。



 突如として世界各地にモンスターが出現した『死の大暴乱(デスエスケープ)』の時代。

 さまざまな種族を団結させるために種族の垣根を越えて一時的に皆をまとめ上げた者が存在した。

 

 そんな者が支配者と呼ばれていたらしい。



「話は分かったけど、なんで俺なの?」


 べつに霧丸たちも俺がほかの種族も合わせてまとめ上げることを望んでるわけじゃないだろう。

 ただ便利だから支配者って名前を使っただけ。


 それは分かる。


 でもだからといって俺がそいつに指名されたのは謎すぎる。


「ご謙遜なさらないでください。ティムさまにとても相応しい御役目かと」

「ティムさまが支配者として我々をまとめ上げてくだされば一族も安心というものですよ」

「俺、ただの村人なんだが」


 種族には種族としての誇りがそれぞれ存在する。

 人族のそれもいち村人に過ぎない自分がほかの種族の上に立つなんてそんなこと許されるのか?


 それを訊ねるもふたりは首を横に振る。


「誇りとおっしゃるのならばこの提案こそ我が蒼狼王族最大の誇りとなりましょう」

「ティムさまに支配者となっていただくことが一族の望みなのです。もちろんティムさまがご迷惑でなければの話ですが」

「迷惑だなんてそんなことはないけど」


 むしろ行き場を失った自分にとっては願ったりの提案だが。

 

「本当に俺なんかが上に立ってもいいのか? みんなそれでいいのかよ」

「偉業の数々を目の当たりにしたわけですから。反対する者がひとりもいないのは至極当然のことですよ」

「皆ティムさまに支配者をやっていただきたいのです」

「うーん」


 やはり全員の意思は固そうだ。


「それに街の中にいればティムさまがおっしゃる村についての情報がなにか分かるかもしれません」

「村が見つかるまでの間でも構いませんから。なのでどうかこの大役お願いできないでしょうか?」


 一族のトップふたりにここまで懇願されたらさすがに断れなかった。

 悩んだ末、俺は引き受けることに。


「……分かったよ。ルーデウス村が見つかるまでの間だけやらせてもらうよ」

「おぉっ! ありがとうございます、ティムさま!」

「ティムさまが街にいてくださればもう怖いものなしです! 本当にありがとうございます!」


 村人に過ぎなかった自分が異種族の上に立つことになったのはなんとも不思議な気分だった。


 けど、自分の居場所を見つけられたようでちょっとだけうれしい。


 うん。

 みんなのためにもこれからがんばろう!

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