興津湾 海辺の水族館
興津湾では、再開発が進んでいる。民間企業が関わり、この土地はリゾート地になるそうだ。
この町には市立の小さな水族館があった。私が幼い頃に祖母に連れて行ってもらった。それから、色々な事があって行けていなかった。いつか息子の優太を連れて行きたいと考えていた。
パソコンを開いて水族館について検索する。機械は相変わらず苦手だが、写真の管理やメールのやり取りにどうしても必要なので志保に選んでもらった。
最近の作家はパソコンで書くそうだが、私は原稿用紙に書いている。
ホームページを覗くと、水族館は、私が行っていた頃とは様子が変わっていた。敷地面積は倍になっていて、リゾートホテルまで建てられている。それに、入場するには事前予約が必要らしい。私はパソコンの画面を開いたまま、志保の所に持って行った。
「あそこの水族館、最近まで工事をしていて、やっと開いたばかりなんだよ」
志保は自分のスマートフォンを開いて、同じページを開いた。
「テレビや雑誌でも紹介されてたけど、もしかして知らなかった?」
「ああ、流行りものには疎いからな…」
「予約はしとくよ、私も行きたかったからね」
志保はスマートフォンを操作して水族館の予約をした。志保によると、この水族館はチケットレスという方式で、入場時にはスマートフォンをかざすらしい。
「今度の土曜日で良いよね?」
「ああ、そうしてくれ」
志保はカレンダーに印を書いて、台所に行ってしまった。
改めて、水族館のホームページを見た。民営化された水族館は広々としていて、どこも人が集まっている。
以前の水族館は仄暗く、何処か寂しい様子だった。あの頃はあまり水族館には興味が無く、大した思い出も無いのだが、こうして変わり果てた建物を見ると寂しい。
パソコンを閉じて仕事に戻る。最近も、立て続けに仕事が舞い込んで来ている。そのうちの一つを早々に片付け、提出の準備をした。
それから、次の休みになった。志保と優太を連れて、電車に乗る。水族館までの道は混雑していた。休日というのもあるのだろう、子供連れの客が多い。
入場して本館に入った。海の環境を再現した水槽が目の前にある。興津湾周辺の他に、南国の海の水槽もあった。
以前同じ場所にあった水族館よりも設備が充実していて、通路も広くなっている。
「最近、ずっと忙しそうにしていたでしょ、だから、たまにはゆっくりして欲しいな」
優太は魚に興味があるようで、水槽に釘付けになっていた。
「私も小さい頃に両親に連れて行ってもらったな、懐かしい」
志保は優太の後ろに立って水槽を眺めていた。
それから、イルカショーを見てからお土産屋で優太にイルカのぬいぐるみを買った。水族館の中にあるカフェで休憩する。
この水族館はどこも賑わっていた。幼い頃の水族館とは様子が異なっていたが、それでも、優太やそれよりも小さな子供達は楽しそうにしていた。
私達は水族館を後にした。優太は疲れてしまったようで、電車の中で寝てしまった。




