19話 従者の戦い3
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「やあぁあああ!」
踏み込み、薙刀を振るう。
その攻撃にすべて、敵は反応してくる。
あの樹木の防御を力づくで突破するのは不可能だ。
打ちこんだ感じ、下手に芯に食い込めば抜けなくなり武器を失うだろう。
私の薙刀は魔力で出し入れできる特製の魔法道具――呪具のたぐいだけれど、無手になったスキはどうしても生じてしまう。
なので、重さよりも鋭さ。
速度を増して手数を増やすことで、防御をかいくぐることを優先する。
それでも、フードの敵は攻撃を弾いてくる。
「世界ニ、秩序ヲ。反逆者ニ、絶望ヲ。世界ニ、秩序ヲ。反逆者ニ、絶望ヲ」
「ぶつぶつとうるさいですね」
もともと、こちらは長物で向こうは素手だ。
防御できるだけの強度と反応力があるなら、回転では向こうが有利だ。
「つまり、このままでは、こちらの攻撃は届かない、と」
攻防の応酬を見終えて、私は唇をほころばせる。
「そう思っているのなら甘いですよ?」
「……ッ!」
打ちこんだ薙刀を引き戻し、再度打ちこむための振り上げ。
と、思わせたところで手のなかの柄をすべらせる。
「はあぁあ!」
振り上げた刃とは逆の先端についた石突を、フードの体に叩きこんだ。
ガツリ、と硬い手ごたえを得る。
硬い感触からすると独自魔法で肉体を保護していたのだろう。
けれど、腕で防がれたときと違って『入った』感覚があった。
まともに胴体を打てば、強烈な打突の衝撃は殺しきれるものじゃない。
「まだ!」
明らかに硬直した体に、追撃の手はゆるめない。
薙刀という武器を考えたとき、長物による遠心力を斬撃に乗せれば確かに破壊力が出るけれど、むしろその本領は、斬ってよし、突いてよし、打ってよしの多彩な攻撃手段にある。
達人であれば、まさに変幻自在。
防御の空いた箇所に、長い間合いの外から一方的に攻撃を叩きこむ。
一度、直撃を受けた衝撃はすぐには抜けない。
それでもフードの敵は刃だけは確実に防御し、打突にも即座に対応して直撃は避けて見せたが、それでは足りない。
「刃と石突ばかり目がいくと危ないですよ」
「……!」
刃の斬撃と石突の打突に注意がいっているすきを突いて、棒術としても使える長い柄で、横合いから側頭部を殴り飛ばした。