11話 合流
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「敵はいなくなったようですね」
耳の良いタマモがそういうなら、間違いないだろう。
任されていた仕事は終わったってことだ。
「どうなさいますか?」
「まずはシャーロットさんたちと合流しよう。案内してもらえる?」
「おやすい御用です」
ほんの少し前の喧噪も、その前の夜の静けさとも違う、無人の廃墟特有のうつろな無音のなかを靴音が響いた。
それがどうにもうすら寒く感じられたせいか、『輝きの百合』と合流できたときにはほっとした。
「あ。グレンくんたちだ。そっちもうまくやったみたいだね」
「みなさんも」
マリナさんがぶんぶん手を振ってくる。
どうやらあちらも無事だったようだ。
「私たちはこれからアレクたちと合流しようと考えています」
「わかりました。僕たちも同行します」
シャーロットさんたちの言葉に、僕はうなずきを返した。
僕たちが向かうと、アレクシスさんたちは未踏領域方面につながる入り口前に陣取っていた。
まわりにモンスターの死体が転がっている。
どうやら一時的なものかモンスターの流入は途切れているようで、戦闘はしていなかった。
「きみたちも無事だったか」
アレクシスさんがほがらかな笑みを向けてくる。
「『仮宿』内のモンスターは討伐してもらえたかな」
「私のほうで見つけた限りは」
「僕たちもです。もう滞在していた人たちも全員退避したと思います」
まずシャーロットさんが報告し、僕が続ける。
「それは良かった。あと、良いところに来てくれたね」
「アレク? それはどういうことですか?」
いぶかしげなシャーロットさんの問いかけに、アレクシスさんは力強い笑みを返した。
「私たちはこれから未踏領域に向かおうと考えている」
「積極的に討伐に出るということですか」
「ああ。みんなのおかげもあって、ここでの被害は最小限に抑え込めた。だが、まだ全部の下層モンスターを倒せたわけじゃない。それに……」
アレクシスさんの青い目が強い光を宿した。
めらめらと燃えるような覇気が立ちのぼる。
「ここに入り込んできたのは未踏領域で湧出した下層モンスターだと考えられる。つまり、ようやく私たちは迷宮の異変に接触できたということだ。うまくすればやってくるモンスターの流れを逆流して、原因を突きとめられるかもしれない」
「……確かに、未踏領域内に突入すればここで待ちかまえるよりもすみやかに撃破できますし、原因も突きとめられるかもしれませんね」
シャーロットさんはその意見を認め、そのうえで言う。
「しかし、未踏領域は広い。突入したところで敵のすべてを倒せるわけではないでしょう。ここを離れて突入したあと、モンスターがここを通り抜ければ、さっき逃げた中堅冒険者たちが危険です」
「わかっている」
うなずきを返したアレクシスさんが、シャーロットさんと――僕に、目を向けた。
「だから、みんなにはここで防衛戦を行ってもらいたいんだ」