表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/90

9話 グーで殴る幼なじみ

   9



「うん。それでこそ、グレンは素敵だと思うよ」

「エステルのおかげだよ」

「だったら嬉しい。――ま。それはそれとして」


 エステルはくるりと向きを変えた。


「これは、あのときのお返し」

「へ? ……ぶげっ!?」


 振り返ったままの勢いで、グーにした拳を思い切りマーヴィンの顔面に打ち付ける。


 不意打ちをもろに喰らったマーヴィンが、うしろにひっくり返った。


「……よし。すっきりした」


 エステルは殴った手をひらひらさせて、どことなく満足げな顔をした。


 そういえば、自分も殴ってやればよかったと言っていたっけ。

 予想もしないかたちで、その望みはかなったわけだ。


 一部始終を見ていたタマモがクスクス肩をゆらした。


「あら。殺されかけた落とし前がそれだけでよろしいのですか? 脱獄してきた重犯罪者など、この場で殺してもとがめられることはないと思いますけれど」

「別にいい。私も、グレンと同じだから」

「むぅ。なるほど。同じですか。そうも当然のように言われてしまうと、ちょっと()けますね。……確かに、私では足りないところがあるようです」


 あれ?


 と、ふたりのやりとりを見ていた僕は、内心で首を傾げた。


 いまの会話は、いつもと少し違っていたような気がしたのだ。


 ふたりの距離が近いというか。

 なにかあったんだろうか。


 いや、いまはそんなこと考えてる場合じゃないか。


 マーヴィンを食い殺しかけた岩トカゲは逆鉾の君が倒しているけれど、こいつは何匹もいる下層モンスターのうちの一体に過ぎない。


 僕はこちらにやってくるシャーロットさんに向き直った。


「すいません、シャーロットさん。お話の途中に。僕たちはこのまま討伐に移ります」

「いえ。お気になさらず。先程はすばやい対応でした。それでは、私たちも参ります」


 シャーロットさんは一瞬だけマーヴィンに目をやり、そのあとで逆鉾の君に視線を向けた。


 多分、彼女は組合での騒動を見ておらずマーヴィンのことを知らないので、僕たちとの間になにがあったのか気になったのと、下層のモンスターをひとりで倒してしまった逆鉾の君の戦闘力に驚いたんだろう。


 ただ、いまは尋ねる時間はないと判断したのか、すぐにきびすを返して自分のパーティに戻っていった。


「グレン」

「わかってる」


 エステルの言葉に、僕はうなずきを返した。


「僕たちも早速、『仮宿』内の討伐に取りかかろう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ