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8話

「お兄ちゃん…… 暑いよ~……」


「……」


「あ~つ~い~……」


「はぁ…… 休憩するぞ」


「やった!」


 ウェスリンに近づくにつれ気温が上がっていき大きな岩が目立つようになってくる。ちょうどいい大きさの岩を見つけた俺たちは思い思いにくつろぐ。


「流石にウェスリンに近くなってくると暑いですね。キルさんとシグレさんは平然としてますよね。何か対策をしているんですか?」


「俺は暑いのは平気なんだ。これくらいだと少し熱い程度で済む」


「私はどんな環境でも活動できるように訓練しているので」


「というか暑いと思うならなんで魔法を使わないんだ?」


『えっ?』


 暑くて気づかなかったのかなと思いながら水や氷の魔法で周りの空気を冷やせば快適に旅ができることを教えた。


 それを聞いたイヴとアリスはしばらく震えて何かを堪えているようだったが我慢できなかったのか俺に向かって叫んだ。


『なんで教えたくれないの(んですか)!!』


「知らなかったのか? 旅をするなら当たり前の知識だろ?」


「だってお兄ちゃんと旅ができると思ったら準備なんかしていられなくて……」


「私にとっては隣街のルズベルに行くことが旅みたいなものでしたから……」


「イヴはともかくアリス、お前はもっと勉強しろ。そんなんで冒険者をやっても上手くいかないからな」


「うう…… は~い……」


「さて、もう十分休んだか? 魔法があるからもう少しスピード上げるぞ」


 ウェスリンへ向かうのが遅れていた原因のイヴとアリスのスタミナの問題が解決したのでそこからは二回ほど魔獣に出くわした程度で夜になる前にウェスリンに着くことが出来た。


「まずは部屋の確保。明日領主に面会しに行くから今日は情報収集だな」


「街の周りについては私にお任せを」


「わかった。俺たちは街の人たちに現状を聞いたりしていこう」


 役割を決めてから街に入ったが予想していた以上に街の様子はひどかった。


 痩せ細った野菜を高額で売りに出している八百屋に家がないのか壁際で座り込んでいる人々、貧困に困っている人たちとは対照的に煌びやかで豊かな水源がある領主の屋敷が訊ねるまでもなく街の様子を表していた。


「いらっしゃい。旅人とは珍しいね。冒険者かい?」


「えぇ。この街の現状は?」


「ひどいもんさ。領主が税を重くし家系を支えていた油も採掘場を独占し、そのうえ税を払えない奴の家を打ち壊すのさ。このままじゃみんな干上がっちまう」


「食料や水は? 餓死している人は見たところいないようだが」


「みんなで分け合って何とか食いつないでいるのさ。水だけは湧水があるから心配はないけどこのままだと本格的に食糧不足で死者が出そうだよ」


「なら俺たちの食料を半分渡すから分けてきてくれ。状況は改善しないだろうが食い繋ぐことはできるだろう」


「助かるよ。代わりに代金は要らないよ。今はあってないようなもんだからね」


 部屋に荷物を置いた後街の人たちに話を聞いて回ったが特に何の情報も得られず、戻ってきたシグレも特に報告することはなく採掘場に領主の配下らしき人たちが何人も出入りしているだけで犯罪組織もないとのことだった。


 明日領主に面会し、場合によっては国王に報告しようと結論づけて俺は眠りについた。



―――――――――――――


「面会できない?」


「あぁ。領主様から例え国の使者であろうとも追い返せと言われている。諦めて国王に報告しに帰ると良い」


 怪しいな…… 隣の領主からの使者ならばともかく国の使者が追い返されるのは本来ありえない。となると別の国に買収されている?


「仕方ない。出直すことにするよ」


「そうしてくれ」


 宿屋に戻ってから面会できないことへの不信感をみんなに話すとみんなも同じ思いだったようで、シグレはこの街に潜んでいる同僚を見つけて王都への連絡を頼んだのちに今度は採掘場にも忍び込むらしい。


 何か分かるまで俺たちは一度ライブルクに戻り食料や作物の種を持ってまたやってくることにしてウェスリンに別れを告げた。


 その後何度か訪れるうちに街はこれまで通りとはいかないものの活気が戻ってきた。噂だと俺たちは英雄と言われてるらしい。


 今日もまた食料と作物の種を持ってウェスリンに来たが様子がおかしい。いつもならやってくると食べ物をもらいに多くの人が集まってくるはず。


 その答えはすぐに判明した。物陰から武装した集団が出てきて無言で襲い掛かってくる。


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