10話
「おい、そっちは…… 片付いたようだな」
「勿論。お兄ちゃんの手を煩わせるわけないじゃん?」
「ホントに一瞬で倒してしまったので私の出番がありませんでしたよ」
二人の傍には頭がない死体が三つ転がっており、素のアリスが出てきていたのが一目でわかった。
国からの指示を受けてきたなら領主の扱いについても聞いているだろうと思いシグレに話しかけた。
「それでここの領主はどうするんだ? 殺してしまうのか生け捕りにして処理は国に任せるのか」
「できれば生け捕りが望ましいそうですが殺してもかまわないそうです」
「そうか。なら生け捕りにしてオボロの情報を吐かせよう」
俺たちは領主の屋敷を目指して走り出した。
走り出してしばらくして、たくさんの領民たちが俺たちのあとに続いていることに気付いた。
「他所から来た人たちに頼り切っては駄目だ!!」「俺たちも立ち上がらないと!!」
こうして集まった数百人の領民たちが領主の屋敷を囲んで口々に叫ぶ。
その声が届いたのか、領主がテラスに出てきた。領主は痩せてはいるが引き締まった体をしていて、細く冷たい目は刃物のような鋭さを感じさせる。
「普段は静かな羽虫たちがブンブンとうるさいとは思っていたがまさかディバインがやられるとはな。見かけん顔がいるが貴様らがあいつを?」
「ああそうだ。国がこれから動き出す。さっさとオボロの情報を吐け。そうすれば国に命だけは取らないように言ってやるぞ?」
「ふん、答えてやろう。俺の答えは……これだ!!」
そういうと同時に正面と側面にある扉が開き五十人ほどの男たちが襲い掛かってきた。男たちは領民にも容赦なく切りつけている。
「領民たちを守らないと!! 被害を最小限にしないと……って、はぁ?」
「みなさん……戦えたんですね。しかも意外とお強い……」
領民を助けに向かった俺たちは男たちが領民にボコボコにされているのを見た。そのうちの一人が混ざりたかったのかうずうずしながら疑問に答えてくれた。
「俺たちはこんなところに何十年も住んでるんだぜ? 魔獣とも何度も戦ってるからディバインたちには敵わなかったがこいつら程度ならこの通りさ。それより領主のマグリブだ。あいつはディバインよりも強い」
「任せておけ。奴も倒してこの地に元の豊かさを取り戻す!!」
「おう、頼む!! じゃあ俺も行ってくるぜ!!」
我慢の限界だったのか走って行った領民を見送ると屋敷の奥へ向けて歩き始めた。途中で残っていた男たちがいたが一太刀で斬り伏せ、屋敷の奥に到達した。
屋敷の奥はラピスラズリのように青いカーテンや真っ白なベッドなど、他の家とは比べ物にならないくらい豪華で領民から搾り取り、奪い取った財のほとんどがこの部屋に使われているなと感じた。
マグリブはそんな部屋の真ん中に槍を持って立っていた。
「待っていたぞ、国からの使者……いや、キルだったか?」
「オボロから聞いたのか。で、そのオボロはどこにいる」
「とっくにこの領からは出ているだろうな。貴様らの労力は無駄だったというわけだ。領民を味方につけるために頑張って、ご苦労なことだ」
「別に無駄じゃないさ。俺はただの復讐者だが困っている奴を放っておかないくらいの良心はある。お前を殺してこの領を救う」
「ふん、なら見せてもらおうか。この領の英雄の力を!!」
言うが早いか素早く踏み込み素早い打突をしてくる。オボロの斬撃と遜色ない速さで、加速して避けたにもかかわらず頬に一筋の傷が出来ていた。
今度はこっちからと打ち込むが簡単に避けられ再び打突が飛んできていなす、これを何度も繰り返して気付けば他の奴らは片付いたのかアリスを先頭に領民たちが隙間なく通路に詰まって固唾をのんで見守っている。
身体は避けそこなったたくさんの傷でボロボロだったが負けられないと思うとどこにそんな力があったのかと思うほど力が湧いてくる。
一度距離を取った俺はいつもは制限していた強化対象を加速、筋力・耐久力上昇に変え、全力で斬りかかりマグリブの胸に大きな傷を作った。
「グア!! まだ隠し玉があったとはな…… ならこちらも全力を出さないと失礼にあたるな。」
そういうとこれまで以上に腰を落とし呼吸を整えるマグリブに応え、俺も呼吸を整え奴の動きを一つでも見逃さないように集中した。
「では行くぞ!!」
「ああ、来い!!」
―――――――――
「ふん、これすら通じんとはな」
マグリブがゆっくりと倒れていく。マグリブの切り札は魔法を纏わせた神速の突きだった。俺は槍を斬り飛ばし、返す刀で奴を斬った。
「俺の勝ちだ。奴の情報が少しでも欲しい、どんなことでもいいから話せ」
「生憎と仲間を、その中でも特に付き合いが長い友人を売ることはせんよ。だが俺の本気を攻略したことの褒美として一つだけ教えてやる。あいつはオーデンセに向かった」
それだけ言うとマグリブは息を引き取った。
「や、やった…… マグリブが死んだ…… やったぞ~!!」
『うおぉぉぉぉぉお!!』




