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Magical Wars ~Legend of Red Dragon~  作者: 口羽龍
第2章 奇跡の子
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第3話 魔法少年

 歩いておよそ1時間、3人は目的地と思われる洞窟に着いた。その洞窟は、深い森の中にあった。洞窟の横には、ノームと思われる銅像が飾られている。この森は、祭りの時以外は絶対に入ってはならないと言われている所で、地元の人でも入ろうとする人はいない。


「何あれ?」


 サラは洞窟を指さした。


「これが大地の祠かな?」

「たぶんそうだろう」

「行こう!」


 サラは強気だった。何としても世界を救いたかった。そのためには大地の祠に行かなければならないと思っていた。


 3人は洞窟に入った。洞窟は暗かった。所々に明かりがあったものの、もう何年も立ち入ってないためか、火が消えていた。最後に祭りが行われたのはいつだろう。サラは考えた。


「暗いわね。カンテラに火をつけましょ」


 サラはカンテラを取り出し、炎を吹きかけ、明かりをつけた。


「もう何年も入ってないから、暗いのかな?」


 サムは考えた。明かりがあるのに、火が消えていたからだ。


 入ってすぐ、魔物が襲い掛かってきた。いかにも悪そうな黒いドラゴンだ。


「いきなりだ!」


 マルコスは驚いた。


「星の怒りを!」


 黒いドラゴンは魔法で大量の隕石を落としてきた。3人は大きなダメージを受けた。


「大地の怒りを!」


 サムは魔法で地震を起こした。黒いドラゴンは驚き、怯えた。


「食らえ!」


 マルコスは氷を帯びた爪でひっかいた。ドラゴンは痛がった。


「とどめだ!」


 サラは凍える息を吐いた。敵は氷漬けにされ、倒れた。


「いきなりだわね」


 サラは驚いた。いきなり襲い掛かってくると思っていなかった。


「どうしてこんなところに魔物が? ここは神聖な場所なのに」


 サムは思った。神聖な場所なら魔物が襲い掛かってくるはずがないと思っていた。


「神龍教の部下にノームが捕らわれているのでは?」


 程なくして、再び敵が襲い掛かってきた。今度は2匹のミノタウロスだ。


「まただ!」


 マルコスは驚いた。外よりも敵が多くて、マルコスはうんざりしていた。


「しつこいな!」


 サムはあきれていた。


「大地の怒りを!」


 サラは魔法で地震を起こした。敵は驚いた。


「許さないぞ!」


 マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。だが、あまり効かない。どうやら炎に強い敵のようだ。


「氷の力を!」


 サムは魔法で2匹を氷漬けにした。凍らなかったものの、大きなダメージを与えることができた。


「炎の怒りを!」


 1匹のミノタウロスが魔法で溶岩を呼び寄せ、3人を飲み込ませた。3人は強いダメージを受けた。


「とどめだ!」


 サラは敵全体に凍える息を吐いた。敵は氷漬けにされ、倒れた。


「ここの敵、強い魔法を使ってくるな」


 サムは驚いていた。明らかに今までの敵と違っていた。直接攻撃はもちろんのこと、強い魔法を使ってくる。あっという間に体力が削られた。


「体力持つかな?」


 マルコスは不安になった。迷路のような洞窟で、これぐらい削られると、不安になった。


「体力に気を付けて進みましょ。なくなりそうだったら入り口の近くの湧き水で体力を回復しましょ。」


 サラは提案した。


「うん」


 サムはうなずいた。


 しばらく進むと、分かれ道だった。どっちも暗くて狭かった。


「どっちだろう」


 サムは腕を抱えた。


「右に行きましょ」

「どうして?」


 サムは聞いた。


「いや、適当」


 サラは舌を出した。


「そうか。じゃあ、行ってみようか」


 マルコスは強気だった。とにかく隅から隅まで行ってみることが大事だと思っていた。


 洞窟の内部は迷路みたいだ。分かれ道が多く、どこに進めば祭壇にたどり着けるかわからない。暗くて狭くて、強い敵が襲い掛かってくる。3人は体力がなくなるのを恐れていた。


 その時、後ろから魔物が襲い掛かってきた。鉱山で見たようなミノタウロスが2匹で襲い掛かってきた。


「くそっ、また魔物だ」


 サムは舌打ちをした。ひっきりなしに出てくる魔物がうっとうしかった。


「また?! この洞窟は多いわね」


 サラはため息を吐いた。サラは魔物の多さにうんざりしていた。


「じゃあ、やってやろうじゃないの」


 マルコスは腕をまくり上げた。何度襲い掛かってきても、自分の拳でぶちのめしてやろうと思っていた。


「炎の力を!」


 サムは魔法で火柱を起こした。2匹のミノタウロスの体に火が付いた。


「死ね!」


 マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。ミノタウロスは痛がった。


「許さないわよ!」


 サラは激しい炎を吐いた。2体のミノタウロスは熱がった。マルコスの攻撃も受けたミノタウロスは倒れた。


「ガオー!」


 ミノタウロスは持っていた斧を振りかざし、マルコスに斬りつけた。


「炎の怒りを!」


 サムは魔法で溶岩を起こして、ミノタウロスを巻き込んだ。残ったミノタウロスは倒れた。


 その先を進むと、ある部屋に入った。だが、その先に出入り口はなかった。


「行き止まりだ。1つ前の分かれ道に引き返そう」


 突然、散乱していた骸骨が集まり、襲い掛かってきた。


「な、何だ?」


 マルコスは驚いた。突然のことに驚いていた。


「罠だ!」

「とにかく倒そう!」


 マルコスは強気だった。


「炎の力を!」


 サムは魔法で火柱を起こした。骸骨の体に火が付いた。


「食らえ!」


 マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。骸骨はとても痛がった。


「ガオー!」


 サラは激しい炎を吐いた。骸骨は倒れた。


「早く行こう」


 サムは先を急いだ。骸骨がまた再生して再び襲い掛かってくるのを恐れていた。




 3人は分かれ道に戻ってきた。もう1つの道は広くて、足跡が多くあった。


「ごめんね。間違ってた」


 サラは謝った。


「いいよ。頑張ればいいじゃないか」


 マルコスはサラを慰めた。


 突然、再び敵が襲い掛かってきた。2匹のオオカミだ。


「またか」


 マルコスはあまりの敵の多さに驚いていた。


「相変わらず敵が多いな」


 サムは腕をまくり上げた。何度出ても自分の魔法で倒そうと思っていた。


「覚悟しろ!」


 マルコスは鋭い爪でひっかいた。オオカミは悲鳴を上げた。


「天の怒りを!」


 サムは魔法で2匹のオオカミの頭上に雷を落とした。マルコスの攻撃も受けたオオカミは倒れた。


「食らえ!」


 サラは炎を吐いた。残ったオオカミは倒れた。


「行こう」


 サムは先を急いだ。体力が切れるのが怖かったからだ。


「どこまで続くんだろう」


 サラは不安になった。


 程なくして、再び敵が襲い掛かってきた。またミノタウロスとドラゴンだった。


「また敵が襲い掛かってきたぞ!」


 マルコスは腕をまくり上げた。やる気満々だった。


「炎の力を!」


 サムは魔法で火柱を起こした。ミノタウロスの体に火が付いた。


「覚悟しろ!」


 マルコスは氷を帯びた爪でドラゴンをひっかいた。ドラゴンは痛がった。


「食らえ!」


 サラはミノタウロスに向かって灼熱の炎を吐いた。ミノタウロスは倒れた。


「グルルルル・・・」


 ドラゴンはマルコスに向かって炎を吐いた。マルコスはやや大きなダメージを受けた。


「氷の力を!」


 サムは魔法でドラゴンを氷漬けにした。ドラゴンは凍りつき、倒れた。


「大変ね」


 サムは息切れしていた。


「こんなに敵が多いとは」


 敵の多さにサラは驚いていた。


「見ろ!湧き水だぞ!」


 突然、マルコスが声を上げた。2人が指さす方向を見ると、湧水が出ていた。


「よかった。水だ。ここで体力を回復しよう」


 3人は湧水を飲み、体力を回復した。


「やっぱりこの道があってたみたいね。じゃなかったら大勢の人が通れないもん」


 ここで祭りをやるとき、これだけの広い道ではないと大勢の人が通れないと思った。


「さぁ、行こう」


 早く見つけないといけないと思っていた。


 しばらく進んでいくと、手すりの付いた階段があった。だが、手すりはさび付いていた。祭りの日はどんな賑わいだったんだろうとサラは考えた。


 階段を降りると、また洞窟が続いていた。その先は真っ暗だった。


「まだ続くのか」


 先の見えない道を見て、サムは思った。


 その直後、再び敵が襲い掛かってきた。今度は3匹のドラゴンだ。


「どれぐらいいるんだろう」


 マルコスは思った。まだまだこの先もっと出ると思っていた。


「大地の力を!」


 サムは魔法で地震を起こした。3匹のドラゴンは大きなダメージを受け、地震でおののいた。


「食らえ!」


 マルコスは氷を帯びた爪でひっかいた。ひっかかれたドラゴンは倒れた。


「覚悟しろ!」


 サラは氷の息を吐いた。食らったドラゴンは倒れた。


「星の怒りを!」


 残ったドラゴンは魔法で大量の隕石を落とした。3人は大きなダメージを受けた。


「癒しの力を!」


 サムは魔法で3人の傷を癒した。


「とどめだ!」


 マルコスは氷を帯びた爪でひっかいた。残ったドラゴンは倒れた。


「今さっきの攻撃は痛かったな」


 サムはもっと強くならないとだめだと感じた。


「ああ」


 サラは息を切らしていた。


 3人は更に奥に進んでいた。その先には、どこまでも長く続いているような暗い道が続いていた。


「どこにあるんだろう」


 どこまで行っても長い一本道に見えるためか、疲れていた。


 しばらく進むと、再び敵が襲い掛かってきた。今度は2羽のコカトリスだ。


「天の怒りを!」


 サムは魔法で雷を落とした。3羽のコカトリスは大きなダメージを受け、2匹はしびれた。


「食らえ!」


 マルコスは電気を帯びた爪でひっかいた。ひっかかれたコカトリスは倒れた。


「食らえ!」


 サラは口から雷を吐いた。食らったコカトリスは倒れた。


 突然、コカトリスはマルコスの頭を突っついた。すると、マルコスは石化した。


「癒しの力を!」


 サムは魔法でマルコスの石化を解いた。


「これでも食らえ!」


 サラは口から雷を吐いた。残ったコカトリスは倒れた。


「マルコス、大丈夫だった?」

「大丈夫だよ。石になった時は驚いたよ」


 マルコスが石化されたのは、初めてだった。もうだめかと思った。だが、サラが元通りにしてくれた。サムはサラに感謝した。


「コカトリスに突っつかれると、こうなることが多いから、気を付けないとな。」


 サムは冷静だ。


 その時、再びコカトリスが襲い掛かってきた。今度は2匹だ。


「天の怒りを!」


 サムは魔法で雷を落とした。しびれなかったものの、2匹のコカトリスは大きなダメージを受けた。


「さっきはよくも!」


 マルコスは電気を帯びた爪でひっかいた。ひっかかれたコカトリスは倒れた。


 突然、コカトリスがサラに向かって飛びかかり、頭を突っついた。だが、サラは石化しなかった。サラは状態異常に対して耐性が強く、なかなか状態異常にならなかった。


「私には効かないさ!」


 サラは自信気に雷の息を吐いた。残ったコカトリスは倒れた。


「どこまで続くんだろう」


 マルコスはため息をついた。


「わからないけど頑張ろう!」


 サラはマルコスを励ました。


「うん!」




 その先には、細くて長い通路があった。その先には、光り輝く何かが見えた。


「あれ、何だろう」

「たぶん、オーブだろう」


 サムは冷静だった。


「もうすぐだね」


 サラはもうすぐたどり着けると思い、気持ちが高まった。


 3人は細い通路を抜けた。そこは広い場所だった。かつて何かをやっていた痕跡が至る所に残っている。


「あれがノームのオーブかな?」


 サラはその奥にある輝くオーブを見た。


「そうかもしれない」


 マルコスは確信した。


 その時、誰かが後ろから声をかけた。


「お前がサラか?」


 尋ねられて、サラは振り向いた。振り向けば、金髪の少年だった。やや長い髪をしていた。黒い魔法服を着ていて、右手には龍の彫刻のある杖を持っていた。


「俺は、時の神龍魔導士にして、12使徒の一、バズだ。サラ、待っていたぞ。必ず来ると思っていた。あれっ、サム、お前サラの仲間になったのか?そうか、お前、改心したのか? まぁ、そうなるとわかっていた。なぜならば、父なる創造神王神龍様を封印する英雄の中に、お前の名前も入っていたからな。最初は信じられなかったが、プリンスゴーストが突然アフール鉱山からいなくなったという情報を知り、やはりそうだったのかと思った。やはり、犬神様の予言は正しかったのか。ところで、私がどうしてこんなところにいるのか、わかるか? 私は父なる創造神王神龍様の命令で、ノームのオーブがさらに取られないか守っているのだ。なぜならば、ノームのオーブは父なる創造神王神龍様を封印する力となるのだから。封印しようとするお前には、絶対に渡さない。お前ら、この祠で死に絶えろ!」


 バズはサラが王神龍を封印するということを知っていた。犬神は、サラが王神龍を封印するということを予言していた。


「お前が死に絶えろ!」

「覚悟しなさい!」

「俺の力を思い知れ!」

「力ずくで取ってみろ!」


 バズが襲い掛かってきた。


「天の怒りを!」


 サムは魔法で雷を落とした。バズはあまりダメージを受けなかった。魔法使いなので、魔法に強かった。


「食らえ!」


 マルコスは電気を帯びた爪でひっかいた。バズは少し痛がった。


「ガオー!」


 サラは炎を吐いた。バズは熱がり、魔法服に火が付いた。


「炎の力を!」


 バズは魔法で火柱を起こした。3人はダメージを受けた。マルコスは特に強いダメージを受けた。その魔法はサムよりも強かった。


「目を覚ませ!」


 サムは体当たりした。だがあまり効かなかった。


「許さんぞ!」


 マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。バズはやや強いダメージを受けた。


「覚悟!」


 サラは氷の息を吐いた。だがバズにはあまり効かなかった。


「氷の力を!」


 バズは魔法で3人を氷漬けにした。マルコスは氷漬けにされた。


「光の守りを!」


 サムは魔法で3人の周りに光の壁を張った。これによって魔法を跳ね返すことができる。


「覚悟しろ!」


 サラは炎を吐いた。バズは大きなダメージを受けた。


「炎の力を!」


 バズは魔法で火柱を起こした。だが、バリアが魔法を跳ね返した。バズは3倍のダメージを受けた。バズは降参したのか、下を向いた。だがバズは、息を切らしながら言った。


「これで終わりと思うなよ」


 バズは魔獣のオーラを放った。バズは光に包まれた。バズの手足が次第に小さくなり、そしてなくなった。胴体が蛇のように長くなり、やがて蛇の胴体になった。それとともに、背中からコウモリのような翼が生えてきた。そして顔は、鶏冠の生えた蛇に変化していった。バズは、羽の生えた蛇、バジリスクに変身した。


「さぁ、かかってこい!」


 バジリスクに変身したバズが襲い掛かってきた。


「俺の力を思い知るがよい!」


 バジリスクは鋭いまなざしでマルコスをにらみつけた。突然、マルコスは倒れた。バジリスクがにらんだからだ。バジリスクはにらんだ者の息の根を止めることができる。


「マルコス!」


 マルコスは突然倒れるのを見て、サラは驚いた。


「命の奇跡を!」


 サムは魔法でマルコスを復活させた。


「よくもやったな!」


 マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。


「覚悟!」


 サラは炎を吐いた。だが、マルコスの攻撃もサラの攻撃もあまり効かなかった。


 バジリスクはサムに噛みついた。サムは毒に侵された。


「くそっ…、癒しの力を!」


 サムは魔法で自分の体の毒を消した。


「さっきはよくも!」


 マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。だがバジリスクにはあまり効かない。


「天の怒りを!」


 サムは魔法で雷を落とした。バジリスクは大きなダメージを受けた。


「食らえ! 天の怒りを!」


 サラも魔法で雷を落とした。再びバジリスクは大きなダメージを受けた。


 バジリスクはサラに噛みついた。サラは痛がった。サラは苦しい表情になった。


「食らえ!」


 マルコスは雷を帯びた爪でひっかいた。バジリスクは痛がった。


「死ね!」


 バジリスクはサラに噛みついた。サラは強いダメージを受け、倒れた。


「サラ!」


 サムは魔法で復活させようとした。だが、魔力が足りなかった。


「次はお前らの番だ」


 バジリスクは大きな口を開け、牙から毒液を垂らした。


 その時、サラが起き上がった。サラがゾンビとなって復活した。サラの体はボロボロだ。体の一部は骨だけになっていた。白目だ。


「はぁ・・・、はぁ・・・」


 サラは荒い息をしていた。明らかに獲物を狙っているかのような表情だ。


「サラ・・・」


 ゾンビとなったサラを見て、マルコスやサムは驚いた。ドラゴン族は一度倒されてもしばらくするとゾンビになると聞いたことがあるが、本当になると思っていなかった。


「なんでサラが起き上がった?」


 マルコスは開いた口がふさがらなかった。


「まさか・・・、ゾンビ・・・」


 サムは思い出した。ドラゴン族は倒れてもゾンビとなってもう一度立ち上がることを。


「な・・・、なんだと?!」


 バジリスクは驚いた。サラは再び起き上がると思っていなかった。


「殺してやる。お前を・・・殺して・・・やる」


 サラは息を切らしていた。目玉が飛び出している。口からは血が流れている。だがダメージを受けていなかった。


「くそっ、しつこい奴め! 今度こそ死ね!」


 バジリスクはあきらめずにサラに噛みついた。だが、サラには全く効かなかった。


「そんな攻撃、通用せぬわ」

「そんな・・・」


 バジリスクは開いた口がふさがらなかった。どうしようかわからなかった。ゾンビになったサラをただただ見ていた。


「死ね!」


 サラはむき出しの牙でバジリスクに噛みついた。バジリスクは悲鳴を上げた。


「やはり、そういう運命だたのか? おお我が神よ、父なる創造神王神龍様、ひ弱な我をお許しください」


 バジリスクは目を閉じ、気絶した。




 3人は元の人間の姿に戻った。ゾンビになったサラも元通りになった。


「す、すごいな、サラ」


 一度倒れてもゾンビになって立ち上がったサラの姿にマルコスは感心した。


「知ってる。ドラゴン族は一度気絶するとゾンビになるんだって。まさかと思ってたけど、本当なんだな」


 サムは詳しく説明した。


「そうか。すごいな、サラ」


 マルコスはサラをほめた。


「ありがとう」


 サラは笑顔を見せた。


 サラは前を向いた、バジリスクのいたところの先には、扉があった。その扉の隙間からは、光が差し込んでいる。その時、4人は思った。きっと、ノームのオーブに違いない。ノームのオーブが光を放っているに違いない。4人はその扉に向かっていった。


 サラは扉を開けた。扉の向こうには、茶色い光を放つ何かが祭壇に置かれている。おそらくあれがノームのオーブだろう。サラは確信した。


 3人は、オーブの前に立った。すると、オーブから声が聞こえる。このオーブに眠るーノームの魂の声だ。その声は、あまるで老人のようだ。そして、あの夢に出てきた声の1つにそっくりだ。サラはその時、あの夢はノームが見せていたのかと思った。


 ノームのオーブは、3人に優しく語りかけた。


「急に呼び出してすまん。わしは大地の精霊、ノームの魂じゃ。この世界は人間と魔族の均衡の下に成り立っておる。そして彼らは、互いに助け合い、違いを認め合いながら生きておる。だが、それが王神龍によって均衡が崩れ始め、この世界は危機に瀕しておる。このままでは人間が滅亡するかもしれん。なぜならば、王神龍が世界を作り直し、人間を創造しない。人間を愚か者とみなしているからだ。王神龍が最高神になると、世界を作り直すことができるようになる。何としても止めてくれ。お願いだ!」


 4人は真剣な表情でノームの話を聞いていた。その話は、きっと、これからの冒険で役に立つに違いない。聞いておかなければ、この先の冒険で後悔することになるかもしれない。そして、人間が滅亡してしまうかもしれない。3人はそう思っていた。


「はい、わかりました。私、この世に生きるすべての人間のために、何としても止めなければ」


 サラはノームの言葉を心に留め、改めて王神龍の野望を止めようと決意した。


「俺、何としてもサラを守ってみせる」


 マルコスは決意した。サラは笑顔を見せた。


「僕も。だってサラは大切な友達だから」


 サムも決意した。


「ありがとう」


 サラは笑顔を見せた。


 サラはノームのオーブを手に取った。オーブは輝きを放ち、とても暖かかった。サラは美しさに感動していた。


 3人は、部屋から戻ってきた。3人は笑顔だった。大きなことを成し遂げたからだ。


 と、そこには、1人の少年がいた。バズだった。あの時とは一転して、バズは優しい目をしていた。バズは少し照れたような表情だった。


「ねぇ」


 バズはそわそわしていた。


「何?」

「僕も・・・、その・・・、旅の仲間にしてくれないかなと思って・・・」


 バズは緊張していた。入れてくれないんじゃないかと思っていた。殺そうとした奴らの仲間になるなんて、無理だと思っていた。


「いいわよ」


 サラはすんなり受け入れた。サラは笑顔を見せた。


 バズは驚いた。仲間になるなんて無理だと思っていた。


「なんで?」

「楽しそうだから。部屋の中でうじうじしていられないし、もっといろんな所に行きたいもん」


 バズは洗脳されていた時と違って、明るい表情だった。


「いいわよ」


 サラは優しい表情だった。


「ありがとう」


 バズは笑顔を見せた。


「よろしくね」


 サラは笑顔を見せた。


「僕の名前はバズ、バズ・ライ・クライド。『蛇の王』と呼ばれるバジリスク族。一応、魔法使い。やんちゃで無鉄砲だけど、魔法には自信があるんだ。よろしく」

「こちらこそよろしくね」


 サラは笑顔を見せた。


「さぁ、行こう」


 4人は祠を後にした。




 1時間かけて、ようやく祠の外に出てきた。時間はもう昼を回っている。相変わらず人通りが全くなく、とても静かだ。


「久々の外だよ」


 バズは明るい表情だった。中での見張りからも、悪の手からも解放されて、いい気分だった。


 祠を出た直後、敵が襲い掛かってきた。またミノタウロスだ。


「さぁ、行くぞ!」


 待ってましたと言わんばかりにバズは乗り気だった。バズはバジリスクに変身した。


「炎の力を!」


 サムは魔法で火柱を起こした。4匹のミノタウロスは熱がった。


「天の怒りを!」


 バズは魔法で雷を起こした。2匹のミノタウロスがしびれた。


「覚悟しろ!」


 マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。ひっかかれたミノタウロスは倒れた。


「食らえ!」


 サラは炎を吐いた。炎を浴びたミノタウロスは倒れた。


「ガオー!」


 ミノタウロスはサラに向かって炎を吐いた。だがサラはあまりダメージを受けなかった。


「氷の力を!」


 もう1匹のミノタウロスは魔法でバズを凍らせようとした。だがバズは凍らず、あまりダメージを受けなかった。


「炎の力を!」


 バズは魔法で火柱を起こした。残った2匹のミノタウロスは倒れた。


「早く山を下りて村へ戻ろう」


 4人は体力がなくなるのを警戒していた。


 下り始めたその時、また敵が襲い掛かってきた。今度は2匹のマンティコアだ。


「また敵だ!」


 マルコスは声を上げた。


「風の怒りを!」


 バズは魔法で竜巻を起こした。2匹のマンティコアは竜巻に巻き込まれ、地面に落下した。2匹のマンティコアは目が回った。


「炎の力を!」


 サムは魔法で火柱を起こした。2匹のマンティコアは倒れた。


「バズは魔法が得意だね」


 サムはバズをほめた。


「俺、魔法ではだれにも負けないと思ってるから!」


 バズは自信気だった。


 しばらく歩くと、木橋に差し掛かった。ペオンビレッジまであと少しだ。


「相変わらず静かね」

「この辺はもう誰も住んでないんだもん」


 マルコスは賑やかだった昔のことを想像していた。


 渡りきったその時、敵が襲い掛かってきた。今度は2匹の白いドラゴンだ。


「また出た!」


 サラは驚いた。


「天の怒りを!」


 サムは魔法で雷を落とした。敵はあまりダメージを受けない。


「氷の力を!」


 バズは魔法で火柱を起こした。敵は大きなダメージを受けた。敵の弱点は炎のようだ。


「食らえ!」


 マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。ひっかかれたドラゴンは倒れた。


「覚悟しろ!」


 サラは激しい炎を吐いた。激しい炎を食らったドラゴンは倒れた。


 4人は前を見た。ペオンビレッジの民家や田畑が見えた。ペオンビレッジまであと少しだ。


「あと一息だ。頑張ろう」


 4人の表情が笑顔になった。やっと村に戻れるからだ。


 気が緩んだその時、敵が襲い掛かってきた。2匹のミノタウロスだ。


「また敵だ!」


 サムは声を上げた。


「今度こそ最後だったらいいな」


 マルコスは早く村に戻りたかった。


「氷の怒りを!」


 バズは魔法で猛吹雪を起こした。ミノタウロスは大きなダメージを受け、2匹とも氷漬けにされた。


「覚悟しろよ!」


 マルコスは氷を帯びた爪でひっかいた。ひっかかれたミノタウロスは倒れた。


「食らえ!」


 サラは氷の息を吐いた。残ったミノタウロスは倒れた。


 4人はペオンビレッジに戻ってきた。


「やっと戻ってきたわね」


 サラは言った。サラは戦い続けて疲れていた。




 目の前には村民がいた。村民は4人の帰りを待っていた。村民は、4人が世界を救うことを期待していた。世界が救われれば、再び人間と暮らすことができるからだ。そうすれば人口は再び増え、村に活気が戻ると信じていた。


「よくぞノームのオーブを解放してくれた。聞いたぞ。世界が大変なことになっておるらしいのぉ。そのオーブは、必ず世界を救う力になるはずじゃ」


 長老は明るい表情だった。


「どうにか、世界を救ってください」


 その隣にいた長老の息子はサラの手を握り締めた。


「この地に、再び人間がやってくることを祈っておる」


 老人の目は輝いていた。4人に期待していた。


「わし、また夫と暮らしたいのぉ」


 その隣にいた老婆の夫は人間で、神龍教に連れ去られていた。生きていたら再び会いたいと願っていた。


「人間の未来は、君たちの手にかかっている。人間を救って、またここに帰ってきてくれ」


 青年の目は輝いていた。サラに期待していた。


「道のりは大変だが、頑張るのじゃぞ」


 長老は4人を励ました。長老はサラの肩を叩いた。


「どうにか世界を救ってください。お願いします」


 長老の妻はサラの手を握った。


「必ず世界を救って、人間と魔族が共存できる平和な世界を取り戻してください」


 村の人々は、世界を救おうとしているサラを応援した。村の人々の笑顔を見て、サラは思った。人間が戻ってきたらもっと村の人々が元気になるに違いない。村の人々のためにも、必ず王神龍を封印しなければ。サラは改めて決意した。


「さぁ、行きましょ。ウンディーネのオーブはインガーシティにあるはずよ。私の背中に乗って」


 サラはドラゴンに変身して、背中を見せた。3人はサラの背中に乗った。サラが羽をはばたかせると、あっという間に空高く舞い上がった。4人はペオンビレッジを後にした。村人は彼らに期待して、手を振って見送っていた。4人はそれに応えて、手を振った。


「よーし、じゃあ、絶対に頑張らなくっちゃ。村人のためにも、人間のためにも。絶対に王神龍を封印してやる!」


 バズはやる気満々だった。


「もちろんさ!」


 サムは元気に答え、必ず封印すると改めて決意した。


 3人はドラゴンに変身したサラの背中に乗ってウンディーネのオーブがあるインガーシティに向かった。


「すごいな、サラ。人を乗せて空を飛べるようになったんだね。かっこいいな」


 サムは、空を飛ぶサラにほれぼれしていた。


「ありがとう」


 サラはお辞儀した。


「ひゃっほー!」


 バズは叫んだ。ドラゴンの背中に乗れることが嬉しかった。


 サムは、夕日を受けながら走る大陸横断鉄道を上空から見ていた。大陸横断鉄道は、リプコットシティに向かっている。大陸横断鉄道は、平原を一直線に走っている。とても雄大な光景だ。




 その日の夜、4人はインガーシティにやってきた。10年前、3人の前に王神龍が現れ、戦いに敗れ、絶望を味わった所だ。この街は、人間がいた頃はもっと賑やかだった。だが、人間がいなくなると、どんどん衰退していった。


 サラは、王神龍に敗れた時のことをも思い出した。


「サラ、どうしたんだよ」


 マルコスはサラの肩を叩いた。


「王神龍に敗れた時のことを思い出したの。何でもないわ」


 サラは拳を握り締めていた。サラは10年前に負けて、目の前で母を殺されたことに憤りを感じていた。何としても、母の敵を討つために、そして何より世界を救うために。封印せねば。


「あの時の屈辱、今でも覚えてるよ。あの時、サラのお母さんを救えなかった悔しさが蘇ってくるよ」


 マルコスも気持ちは同じだった。


「このインガーシティって、最後のウンディーネ族が命を落とした場所なんだって」

「へぇ、そうなんだ。10年前に行ったことがあるんだが、それは知らなかったわ」


 4人は街を散策しようとした。だが、夜も遅いせいか、誰もおらず、どの家の玄関も鍵がかかっていた。


「みんな家の中かな?」


 サラは困っていた。


「うーん、情報収集は明日にするか?」


 サムはやむを得ないと思った。


「そうしよう」


 マルコスは残念そうな表情だった。


 仕方なく、旅館で一泊して、明日散策して、ウンディーネのオーブに関することを聞こうと思った。


 10分後、4人は旅館を見つけた。その旅館は木造で、築100年ぐらいだった。ロビーは広く、木をふんだんに使っていた。


「すいません、部屋は開いておりますか?」


 フロントの女将にサラは聞いた。


「はい、空いております」

「よかったね」

「こちらの部屋でございます」


 女将は部屋に案内した。


 女将に案内された部屋は、海の見える2階の部屋だった。


「こちらでございます。ごゆっくりどうぞ」


 女将は鍵を渡した。


 4人は中に入った。外からは夜の海が見えた。


「明日はどうする?」

「とりあえず、情報収集をしよう。何か有力な手掛かりを見つけないと、話が進まないから」

「そうしようぜ」

「そうね。ウンディーネのオーブに関する有力な情報がわかるかもしれないから」




 その頃、バズは魔法服を着て空を眺めていた。バズは寂しそうな表情だった。


「ねぇ、バズ」


 バズは後ろを振り返った。サラだった。


「何、サラお姉ちゃん」


 バズはサラを姉のように思っていた。


「バズはどこで生まれたの?」

「サイカビレッジ」


 サイカビレッジは世界で最も北にある雪の降る小さな村だった。


「私はハズタウン」

「両親はいるの?」

「父さんは僕が生まれてすぐに交通事故で死んじゃった。母さんは人間だったから、生まれて間もなく強制労働に行かされて、離れ離れになった。父さんが交通事故で死んでから、僕は修道院で生活をしてたんだ。そこで僕は、神父から黒魔法を覚えたんだ。子供のころから黒魔法がずば抜けて得意だった僕は、神龍教の注目の的になって、無理やり神龍教に連れられたんだ。そして、そこで洗脳されて、洞窟であんなことをやってたんだ。あんなこと、本当はやりたくなかった。魔法は人を殺すためにあるんじゃないと思ってるんだ。本当は自分を守るため、世界を豊かにするためにあるものだと思ってた。普通の男の子になって、ごく普通の魔法使いになりたかった。そして、将来は住んでいた修道院の神父になりたかった。あーあ、お母さん、元気にしているかな?」


 バズは母のことを思って空を見上げていた。


「心配だね」

「うん」

「早く人間を救って、また会いたいね」


 サラはバズの肩を叩いた。


「もちろん」

「私のお父さんも生まれてすぐに死んだわ。それから、人間のお母さんに育てられたの。だから私、お父さんに抱かれた記憶がないの。その後、お母さんが神龍教に捕まって、生贄に捧げられたんだ。その直後に私は記憶をなくしてサンドラとして生きた後、つい最近記憶を取り戻したの」


 サラは今までの人生を語った。


「サラお姉さんも大変な人生だったんだね」


 バズはサラのこれまでの人生に感動していた。


 2人は部屋に戻ってきた。部屋ではすでにマルコスとサムが寝ていた。


「私たちももう寝ようか?」

「うん!」


 バズはうなずいた。


 2人は就寝した。明日、ウンディーネのオーブを見つけるための有力な情報が入ることに期待しながら。


 その夜もサラは不思議な夢を見た。それは、昨日の夢の続きのようだった。金色のドラゴンとなったサラが光り輝く息を吐いて、王神龍に浴びせ、王神龍を消し、世界中の人間から祝福される夢だ。その時サラは、王神龍を封印し、世界を救わねば。そうすれば、世界中の人間が解放され、世界中の人間が自分を祝福してくれるだろうと思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サラとマルコスの関係 [一言] RPGと昔の物語を足して二で割ったような作品で、なんだか懐かしい気持ちになりました。 お母さんの死が悲しかったです。でも、それで深みが出たような気がします。…
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