私は帰らない。悲鳴は届かない。
家を出た
あの子と二人で家を出た
お外を見たいと嘆くから
お家は嫌だと嘆くから
あの子と二人で家を出た
夕暮れ沈む寒い日の
橙の空の下駆けた
熱が出た
私の体に熱が出た
お外が見たいを叶えたら
お家は嫌だを叶えたら
私の体に熱が出た
夕暮れ沈んだ暗い夜に
倒れ伏したら役立たず
暗く沈んだ夜のなか
倒れた私を見捨てた子
間違えるはずもない声が
つんざく悲鳴で届いたの
暗く沈んだ闇のなか
倒れた私を蹴った姉
聞きたくもない絶叫を
茂みの下で嗤ったの
家を出た
私は一人で家を出た
意地悪かあさんは要らない
我儘ねえさんも要らない
だから一人で家を出た
近くの町から船にのり
遠いどこかへ旅立つの
そういうことに、なりました