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精霊の御子  作者: 壱原 棗
第1章:眠れる力
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精霊の子

Twitterでぼちぼち呟いてます

@ichi_natsu_1111


 

 リマを連れだって謁見の間に向かったレイラは、重厚で豪奢な装飾が施された、大きな扉の前にいる衛兵に声をかけた。


「今、大丈夫かしら?陛下には来ることは伝えたはずなのだけれど」

「はい。ローレンス様には有事の際以外はいつでもとの許可が出ています」

「ありがとう」


 そういえば、とレイラの城での立場を疑問に思ったリマは、思いきって聞いてみることにした。


「レイラさんって本当に研究員ですか?」

「なんでそう思うの?」


 レイラは面白そうに口元を上げ、悪戯っぽく笑った。


「その、初めて会ってから全部衛兵さんが顔パスです」

「まぁね。これでも宮廷魔術師だから」


 宮廷魔術師とは、国王直属の魔術師の事で、他国では公爵と等しい位を与えられているともされるほど、名誉のある役職。昨今では国王の右腕、懐刀とはよく言われるものである。


 好奇心に負けて聞くべきではなかったかも知れないとリマは少し気圧され、薄ら笑いを浮かべて後退りしそうになった。

 そんなリマの様子も楽しむように、レイラは扉が開かれると颯爽と中に入るやいなや、なんの躊躇いもなく謁見の間の奥にある王座に近づいた。


「陛下、お連れしましたよ」

「待っていたぞ」


 陛下と呼ばれた男は40代半ばといったところだ。ウェルスで暮らすものなら誰でも知っている。

 この国を治める君主_レイモンド=アデラ=ウェルス。


「はっ、初めてお目にかかります、国王陛下!リマ・アレナスと申します」

「改めて、レイモンドだ。そう緊張しなくてもいい」


 しかし国内に住んでいるとはいえ、国王をお目にかけることなんて滅多に無い。

 リマの暮らすベイシアは国を挙げて行われるような盛大な祭事は無く、漁師の安全や大漁を祈願するような、港町ならではの催事が主であった。


「彼女が”水の精霊の子”です」

「いま、おいくつかな?」

「17です」

「陛下、女性に年齢を聞くなんて」

「いや失礼した、息子と年が近そうだったからね。レイラよ、報告を頼む」


 レイラは呆れたように一国の王を見つめた。やや居心地悪そうに彼女の視線から背け国王は話を続けた。



「はい。こちらで彼女を保護したいと思っています。国の保護下にある限り、教会は下手に手は出せないはず。すぐにでも、例の件を…」


「精霊の子をこちらで保護する話…か」



「十数年前、世界がある男児の誕生に歓喜しました」


 レイラはどこか物語を言い聞かせるような口調で語り始めた。


 「その男児は宝石を握りしめて生まれてきた。これは神託であると。天から落ちた宝石がヒトとなって、精霊に生まれ変わるべくこの世に生を受けたのだと」


 確かその赤子は後に精霊の子として世界に広く認知される、ティルナ教会の信仰対象__すなわち導士のような存在で、この世界が知る精霊の子2人内の1人だ。



「その2年後、同じように宝石を握って生まれた女児が誕生しました。しかしそれ以降、宝石を持つ子どもの話は止んでしまいました。出産の際に教会が祝いの祈りを捧げるために立ち会うことはよくあります。ですが、ティルナ教会が各地でその動きをしたのは約2世紀前からです。それはつまりトール帝国で自治区を制定した頃から」



 トール帝国とは大陸を統治する三国の一つで、北部に位置し、一年のほとんどを雪で覆われている、技術と工業の大国。

 しかしティルナ教を国教に定めているのは、三国のうちトールのみ。またティルナ教会は帝都の一部を自治区とし、王政の評議院に枢機卿として教皇が在籍している。

 それほどまでにトール帝国では教会の力が強い地域である。


「そしてリマは、ティルナ教会の息のかかった施設で生まれ育っています。私の仮説では、精霊の子はすでに全員誕生していると考えられます。ティルナと世界が認知している2人の他にもこうしてリマ・アレナスという少女が証明しています」



 そう言い切ったレイラに、リマはおろか国王も目を見張った。

 ウェルスが誇る天才魔術師。さらには優秀過ぎる研究者だということをリマもサイモンから聞かされていた。

 ハーフエルフとして長い時間見聞きしてきた彼女には、見えているものが違うのかもしれないが、今のこの僅かな情報だけで断言してしまうのはあまりに尚早な見解だ。



「おそらく教会は秘密裏に精霊の子を集めたいのでしょう。ただ、それに関する公開された情報があまりにも少ない。あくまで私の仮説でしかありません。しかし教会は一部で強大な権力を持ち続けている。不確かな存在が世界の存続に関与しているんです。現にあの町で彼女はウェルスの国民というだけで、我が国の信者増大に利用されています」


(……彼女?)



 確か現在、発表されている精霊の子は二人。


 男女一名ずつだ。



「今までは貴女の仮説に過ぎなかったわけだが、こうして証拠があってはな。わかった。この件の実行を伝えておく」


「ありがとうございます」


 レイラは深々と頭を下げた。


「昨今先が見通すことができないのはどちらも同じだ。いつか綻びが出てくるだろう。早速だが、近々カロルで祭典がある。そこで直接会うのが良いだろう」

「教会と接触するのですか?」

「精霊の子に直接話して、協力してもらうの」

「他の精霊の子を探すというわけだ」


「あなたの力が必要よ」

「……はい」



 ――ここまで導いてくれたんだ…私が力になるのなら


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