熱から逃れて
対の光
影となり、一方は衰える
月は涙し、偽りの光を映し出す
真の輝きは、己が秘めし力により
解き放たれる
ブレイズランドの砂漠を北に進むと、少しずつ辺りに緑が見え始めた。それでも徒歩での移動のためか、小さな魔物に度々襲われる。
「チッ…数が多いんだよ!」
敵の数にイライラしながらアレフは蹴りをかましていた。戦闘慣れしている彼は、もちろん前衛としてよく働いてくれている。
水属性の攻撃に弱いこの地域の魔物に対して、リマもできる限りのことはやっていた。
「リマ!!」
シルフィの声が聴こえてハッとしたリマは、魔物が近くに迫っていることを確認した。
だが、一方の魔物と対峙していたので、その魔物を巻き込みながら身を躱す。
少しかすってしまうが、物理攻撃なら貫通する今の身体では問題ない。魔物同士がぶつかり、失神したところを、後ろで詠唱していたシルフィが捕らえた。
砂の下から突き上げるような鎌鼬が出現して魔物を閉じ込めて攻撃した。
接近戦をしないが、彼女の魔術の技は相当な威力だった。
「なかなか、砂漠抜けないですね」
「以前来たときよりも砂漠化が進んでるわ」
「日照りが年々酷くなってるからな」
「間違ってないんじゃないの?『世界は滅びに向かう』って」
「だろうな」
レムが何気なく言って、アレフがぶっきらぼうにそれに応えた。
「でもリマちゃん動きが俊敏になってきたね。前衛頼もうかな~」
体を水に変化させるようになったリマを見て、レムはニッコリ笑った。武器がないんだけど、と苦笑いしながら
「レムだって貴族とは思えないほど闘い慣れしてるよね」
そう指摘すると、レムは笑みを浮かべたまま明後日の方向に目線を泳がせた。
「前に言ったかな?暗殺計画とかあったって。だから自然とこうなるよね~」
「ランティスの貴族間はそんなに荒んでいたの?」
「ん~僕の家は貴族なんだけど、元々低ーい下級貴族なんだ。それが僕が生まれただけで家ごと公爵になったら誰でもムカつくよね?」
苦笑しながらレムが続けた。
シルフィはどこか複雑そうな表情を浮かべたが、何も言わなかった。
「次はどこに行くの?」
「ここから一番近い街は、”ロゼ”ね」
「シルフィは巡礼来たことある?」
リマは街の名前が出てもいまいち地理がわからなかず、一番移動が多いであろう彼女に訊ねた。
「いいえ。普段トールにはランティスから海路で行くんですが、陸路は初めてなので」
「ロゼはランティスの領土なの。あそこは騎士の輩出が断トツだから、元気な街ね」




