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精霊の御子  作者: 壱原 棗
第3章:緋色の焔
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紅蓮を放つ

 先ほど見たトーチの真下に、その姿はあった。

 声の主はリマと同い年くらいで、赤毛というよりは炎を連想させる、燃えるような緋色の髪をもつ少年。

 左脇の階段の手すりに飛び乗ったかと思うと、グッと脚に力を入れ下に跳んだ。軽やかな身のこなしで着地し、幾分明るいところで光る、赤みを帯びた黒い瞳がこちらをにらんでいる。


「本当に子供じゃない」

「あ?」


 明るみになった姿はフードのついた袖がない黒い服を着ており、年ごろ以外は証言と当てはまる。

 レイラのその言葉で少年の声色は機嫌が悪くなった。


「まぁ、この際なんでもいいわ。単刀直入に聞くけど、あなたが村の小火を起こしたの?」

「小火?…あれは不本意だ」

「不本意ぃ?」

「仕事が干ばつの影響で無くなったから雨季まで間が空いて発散ができてない」


 そう言って彼は顔を少し歪めると、周りから小さな炎の玉が複数浮かび上がった。


「それともあんたが付き合ってくれるのか?」


 温度が変わった。伝わる敵意に肌がひりつく。

 その獰猛な視線はレイラへ向けられていた。


「あら、あたしとやる気?」

「魔術師だろ。あんた」


 レイラは口角を上げて面白そうに少年を見つめ返す。


「いいわ。久しぶりに自分の力を試したいし」

「レイラさん!」


 リマの制止もむなしく、レイラは伸びをし始める。


 (どうしよう…)


 と、リマとシルフィが目__ではなく念話でレムに訴える。


 (目がマジだもん。無理だよ)


 と肩をすくめて、レムはいとも簡単に諦めた。


「どうなっても知らないぞ」

「手加減できるかしら…」

「っ……ほざけ!!」


 少年はレイラに向かって走り出していた。

 その初動を確認するとレムは左脇にシルフィを抱え、右手でリマの肩を抱き寄せてレイラから距離を取る。


 そのすぐに自少年は十分な間合いから飛び上がり、レイラに向かって蹴りを炸裂させた。

 しかし彼女は表情ひとつ変えず、無駄な動きなく躱していく。ニヒルな笑みを浮かべて楽しんでいるようだった。


「口だけじゃないな。だが、右からの反応が遅い!!」


 連続技から片足を軸に体を回転させ、炎を纏った蹴りに変わった。

 しかしレイラは火の粉が飛び散るそれを頭の横で受け止め、その部分に魔力を集中させて凍らせた。


「肉弾戦は魔術師がやることじゃないわ。それに……義眼、なのよ!」


 言い放って氷がガラスの様な音を立てて粉砕した。砕けた破片が意志を持って少年に集中し、彼の頬に傷をつけて血が伝う。


「この中で氷の魔術か…」


 少し間合いを取ってそれを拭った。

 戦闘の激しさは、おそらく以前リマが城で目撃したサイモンの惨状に近い。

 また、余裕を見せる彼女の身のこなしに、レムは舌を巻いた。


「今のって魔術?」

「自身に付加させて身体能力とその威力を高めるんだよ。剣術や体術を使う魔術師もいる。僕の魔術は規模が大きいから、室内で使うのはできなかった。被害を最小限に抑えたいときは使うかなぁ」

「確かに、レムの魔術はなかなか小回りが効かないですもんね」


 相変わらず外野三人は観察に専念しているが、少年に些か違和感を感じた。

 リマも特訓の成果か、魔力を感じることは魔術師のように容易くなっている。

 緋色の髪を振り乱しながら闘う少年の、エルフの血族とは違う魔力の質に。


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