表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の御子  作者: 壱原 棗
第3章:緋色の焔
29/82

熱地獄

 

「おい、あんたら。あいつを追いかけに行くのか?」


 軒先にあった大きな酒樽に体を預けてもたれかかっていた、傷痕の多い褐色の肌を持つ体躯の良い男性に声をかけられた。腰には大小様々な武器が装着されており、戦士や傭兵の類いだろうとわかる。


「あら、犯人をご存知なの?」

「あいつはここいらのギルドで俺たちと同じようなことして稼いでた。それだけだ」

「へぇ。随分と気になってるんだね」

「クソガキの頃からふらっとやってきては仕事していくようなやつだが、俺たちにとっては貴重な戦力だ。魔術が使えて腕っぷしのいいやつはそういない」


 聞けば件の犯人は傭兵紛いの実力者であるらしい。村人に直接関わりのない仕事ばかりを引き受けており、ギルド関係者の一部で特殊な条件の仕事を斡旋していたそうだ。


「だからといって、無闇な放火はいただけないわ」

「確かにあいつはまだガキだ。だが放火なんぞ無意味なことをするような玉じゃない」


 男の言葉から、その犯人は情をかけるほどの何かはあるらしい。それでもレイラの言葉には温度は宿らないまま続けた。


「情状酌量の余地があるかは、私が決めることじゃ無い。村人に働きかけるべきよ。……この国に属するものとして、綻びは取り除かせてもらうわ」



 * * 




「ここが溶岩の洞窟、でしょうか?」

「いくら悪い人でも、わざわざこんなところに入る人はいないんじゃないかな…」


 その名の通り、入り口から既に尋常ではない熱が漂っている。リマは怪訝そうにそちらを見つめた。


「へぇ。犯人結構タフなんだね」

「ここも熱いわ」


 そんなリマをよそに、レイラとレムは躊躇なく洞窟に入る。


 先ほど店で熱地帯に耐性ができるエルフの薬を用意した。こういった特殊な環境に対応できるように、エルフの秘術を国が保護した上で流通させているのだ。

 場所によっては手に入りにくいこともあり、冒険者などは常備し、事前に摂取しておくのが常識となっている。



「さっき外で聞いたら、以前追いかけた村の人は誰も戻ってこないそうです」


 とんでもないことをサラリと言ってシルフィが続く。


「大方、中の魔物にやられてるんでしょ。ここの魔物は水に弱いから、リマには有利ね」


 そうですか?と訝しい顔で答えたリマは、薬を飲んでから重たい足取りで洞窟に入った。


 中に入ると、薄暗くて想像以上の熱で、息をするのも難しかった。が、1回の呼吸で身体が駄目になってしまう高温でも、薬のおかげで免れる。

 壁沿いの所々に設置された松明に火がついており、オレンジ色に空間を灯している。


 奥に進むと、火山地帯独特の岩石面凸凹から、だんだん整備された石材が現れるようになった。リマはベイシアの鏡窟に既視感を覚えた。


 コツリと足元で靴が鳴る。

 地面を鳴らす音が変わった。

 身体が慣れたのか、先ほどまでの熱が嘘のように心地よく火照る。


 奥に広がる空間は、薄暗いがわずかな明かりがタイルのような石に鈍く反射して、ぼわぁとした怪しく周りをあらわにした。

 神事に使われていたであろう祭壇が中央にあり、左右対称に階段が続いている。左右の階段を挟んだ先は大きなトーチが鎮座しており、それに火は灯っていない。

 明らかな信仰の跡が、そこには


「さっきと違うね。綺麗になってる」

「ここ、ベイシアの鏡窟みたい…」


「誰だ」


 そう言いかけた途端に、上の方から声が聴こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ