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精霊の御子  作者: 壱原 棗
第2章:諦めた変化
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手探りな手がかり

 リマは扉の方に駆け寄って書類置くのを手伝う。城に戻ってから、初めて彼の姿を見た。どうやら研究室にこもっていたようでらこちらから出向くのを憚ったのだ。レイラが戻ってからそちらに直行していた為、忙しさを想像するのは難しくない。


「やだ、また移動したの??」

「そいつの拠点はランティスだ。ウェルスに来ることすら滅多にない。国の招集も無視。まったく学者ってのはどいつもこいつもロクな奴がいないな」


 サイモンは帰還命令が出ていた自分のことを棚に上げ、持ち込んだ書類の中から目的のものを選別していく。


「2人とも紹介するね、こちらはサイモン。ここの研究者さんのひとりで、レイラさんの__」

「サイモン・ラトル。里子兼、部下だ」

「うわぁ〜レイラさん、子持ちだったんだねぇ」

「2人のことはよく知ってる。申し訳ないがまた時間を作る、その時に挨拶させてくれ。こっちは引き続き行方を探す。ゆっくりしてくれて構わないが、陛下にも謁見しろよ」


 サイモンは手短に伝えると、白衣を翻して部屋を出た。


 ***


 4人は謁見の間に通され国王に事の行方を報告した。それを黙って聞いていた国王は険しい顔をし、国民の1人であったシルフィに謝罪を述べた。



「レイラ、これからどうするのだ」

「気になることがあります」

「聞かせてくれ」

「彼女の『言葉』です。シルフィ、あの時の言葉を覚えてる?」


 はい、とシルフィは凛とした声で返事をして小さく息を吸い込んだ。


「"対の光、影となり一方は衰える。輝ける天馬の導きは、我ら精霊の加護によって守られる"」



 これが聞き及んだ神託か、と国王が顎に手をやった。

 教会に対し中立条約を結ぶウェルスの王都ではティルナ教の催事は行われない。すなわちシルフィや教会幹部がウェルスに表敬訪問をしない限り、ウェルス中枢は教会に関わることになる。



「私の推測では、部下が発見した光の精霊の伝承と関係があると思います」

「その“輝ける天馬”が、光の精霊を示すということか」

「ええ。その伝承は、トール周辺の地域に伝わっている」

「つまり……トールには精霊の子がいると?」


 国王が結論を促す。

 おそらくこの場にいる全員がそれを確信しているのだ。


「可能性は極めて高いです。未発見だったリマが偶然にもウンディーネに関わる土地で暮らしていたのなら、他の精霊の子が近い条件で生まれていてもおかしくありません」


 レイラは力強く言った。

 サイモンがウンディーネについて調べた内容と、リマの母親の言葉は矛盾しないようだ。何かしら縁がある人間が関与している可能性も考えるべきという認識が、調査チームにも届けられている。



「加えて、この二人に“増幅器”がつけられています。そしてマナフィラーと同じ症状が出ていた。教会はそれを放置している……いえ、そう仕向けています」


「言いたいことはわかった。しかし、ウェルスはティルナ教会に干渉できない。均衡は保たれるべきだと私は考えている。くれぐれも慎重に調査を続行してくれ」

「かしこまりました」


 国王は難しい顔をして頷くと、レムの方を見遣って声をかけた。


「バウエル公、そなたにも迷惑をかける。向こうでの調査の際は、私の方から協力を要請したい」

「構いません。今回のコトを動かしたのは私の一存です。うちの国王も黙っていられない状況にしてしまいました」


 初めて会ったときのような優雅な笑みを浮かべ、毅然とした態度と声で応える。


「正式にこちらから親書を宛てよう。その時は皆またよろしく頼む」



 深く礼をして、レイラは三人に退室を促した。レムが素早くその視線を汲み取り、ごく自然にリマとシルフィを連れて部屋を出る。シルフィは慣れているのか特に変わりはなかったが、リマは緊張していたようで扉が閉じると肩を下げた。


「あれ、レイラさんは?」

「すぐ出てくると思うよ〜僕らに聞かせられない話もあると思うからね」

「ローレンス様より、移動して待機していただきたいそうです。ご案内いたします」


 近くにいた衛兵に伝えられて、3人はその場を後にした。

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