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精霊の御子  作者: 壱原 棗
第2章:諦めた変化
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抑制器と増幅器

 

 しばらくして、リマがレイラを連れて戻ってきた。ベッドサイドの椅子に腰掛け、レイラはシルフィを軽く診察した。


 リマも直前に知ったのだが、レイラは医師の免許を持っているらしい。長い人生の中で、知らない知識はないのではないかと思うほど、彼女は果てしない時間を知識という泉に注ぎ込んでいる。


「具合は良さそうね」

「おかげさまで」

「あなたが眠っている間に、レムに協力してもらって原因を探ったの」



 レイラは3人に魔宝石を装身具ごと外すように促し、机の上に並べた。リマのチョーカー、シルフィのブローチ、レムのガントレットが置かれ、そのすぐそばに異なる色の宝石が添えられる。

 金属による負担が大きいのか、レムは左手首を何気なく摩っていた。



「これは『抑制器』と『増幅器』よ」



 この世界には『ドワーフ』と『ゴブリン』、似て非なる種族がいる。


 古来より彼らは地下で暮らし、鍛冶や細工を生業にしていた希少種族である。エルフの様に魔術は使えないが、彼らはそれぞれ違うアプローチで、マナフィ・コアに干渉する力を持つ。

 種族の成り立ちや文化の近いとされる彼らに決定的な違いがあるすればそれは『性質』だ。




 ドワーフが造り出す『抑制器』


 コアの巡りを抑制する力を持ち、本来の潜在能力に合わせた力を引き出すことができる。

 しかし使用者を選ぶため、ある程度の力を持つ者にしか効果が表れないという欠点がある。

 人体にはノーリスクで使用することができるので、少ない例だが医療などにも用いられることもある。しかし魔術従事者でない限り、お目見えすることのないのも事実だ。


 一方、


 ゴブリンが造り出す『増幅器』


 コアの巡りを増幅する力を持ち、通常以上の能力増加を得ることができる。

 また自らを強化するもののみを取り込む性質を持つため、使用者の体力や精神力を奪う。

 魔術と複合する事で、自然の力を動力源として発展した『増幅器式工学』が、人々の生活の一部となっている。郊外では風車や水車などが、都市部?ではこれらのエネルギー供給や電力制御の手段などに利用される。

 一般的に知識としてまた武器のブランドとして馴染みがあるのは増幅器の方だ。




「例えば、毒性の強い魔物をゴブリン製の武器で貫くと、その毒性を刄が取り込んで、以後効果が持続するの」

「へぇ~だから高価なんだね」

「そう、武器なら申し分ないんだけど…」


 レイラがブローチとガントレットを指差して言った。


「有名な学者の見解では、増幅器は長期間使用すると人体に支障を来す。あなた達の原因は『増幅器』の使用によるものだったわけ」



 増幅器最大の特徴が、自らを強化するもののみを取り込むという性質。

 これにより、武器を含め人体への装着は高度な制御技術が必要になるのだ。


 魔力を持たぬ者は体力や気力を引き換えに、力を手に入れ、魔力を持つ者は魔術同様にそれを力に変える。使い続けると身体の方が先にダウンするが、その頃合いは体調が察知するので、見極めが可能だ。


 しかし、マナフィラーだけは『増幅器』の装着を固く禁じられている。


 彼らは人間ゆえに自信が生み出すマナフィ・コアを感じる事が出来ない。増幅器はそれを吸収し続けるため、限界が認識できないのである。



「僕たちは人間だけど……」

「マナフィラーと似た症状が出ていたの。精霊の子の性質は人間とは少し違うようね。だからといって一概にマナフィラーとは言えない。本当は専門分野の学者に意見を聞きたかったのに…」

「放浪癖でいなくなった」


 レイラは後半呆れたように息を吐いて言う。

 それに続けるようにリマはドアが開く音と共に聞き慣れた声を聴いた。


「あ、サイモン!」

「ノックしなさい」

「悪い。急いでた」


 濃紺の頭を扉に擦るように肘と上半身でこじ開けたらしいサイモンは、大量の書類を両手に持っていた。

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