僕らは
「こちらの話は行ってるわよね」
「あぁ、シルフィのこと?」
レイラからこれまでの経緯を説明され、本題について確認しながらソーサーを持ち上げ、カップに口をつける彼の様もとても優雅だ。
「シルフィも大概辛そうなんだよね。僕がお嫁に貰っちゃえばいいんだけど」
リマは唖然とした。貴族とはこういうものなのだろうか、なんて思ってしまう。
「そ、そんなお嫁になんて」
「最終手段よ。ソレは」
思わず狼狽えたリマを見てレイラはくすくすと笑った。
「話を戻すけど、彼女が辛そうってどうしたのかしら?」
「精神的には疲れる立場だけど、最近おかしいんだ」
するとレムが真剣な顔つきになり、教典を暗唱し出した。
かつて世界に
コアをもたらす泉があった
しかし争いで泉は枯れ
世界の理を守る精霊たちは死に絶えた
それを嘆いた女神は自らの命を賭して
世界にコアをもたらした
すると泉の精霊__ティルナが誕生した
「私の命が尽きれば世界は滅ぶ。精霊たちを復活させよ」
女神の最期の言葉を受け取ったティルナは
天から宝石を落とした
地上に落ちた宝石はヒトとなり
精霊として生まれ変わる
人々は彼らの誕生を待ち望むだろう
これこそが、この世界の運命を綴ったものである。
「疑問には思わない?僕たちが生まれた時点で精霊が復活するのかと思ったら、そうじゃないらしい」
レムは意味深な物言いでそう切り出した。
「言い伝えでは、風の精霊:シルフには予知能力があるとされる。そしてシルフィには夢で先を視る力があるんだ。それを利用して、人々の信仰を得ている」
精霊の神託が降る町:カロルとはそういう意味である。彼女が力を使い、夢で見た未来を告げるのであろう。
「僕は大地からエネルギーを吸い取ったりその逆もできる。これは魔術というより『体質』かな。リマちゃんも心当たりはない?」
「この子は普通だと思ってたみたいだけど、数十分は平気で水中に入れるのよ。呼吸はどうなってるのかしら?」
「お、落ち着くんですよ。それに、ちゃんと苦しくなったら上がってます」
リマの潜水能力は魔宝石身につけていない状態のことであるから、彼の言う『体質』という言葉が当てはまる。魔宝石があればこの体質は魔術と変わり、リマの場合は水中では呼吸が必要なくなるのだ。
「精霊は人間じゃない。食べることも寝ることも必要ないはずだ。だけど僕らには必要だろ?つまり、不完全な存在だ」
「『世界は滅ぶ』……」
「目に見えない速度とはいえど、世界は確実にバランスを崩し始めているから、ね」
レイラが思案気味で呟いた。実際に昨今、世界中で異常気象や災害の報告が増えている。
正式名称:マナフィ・コア。
通称『コア』は魔力もとい生命の源とされるが、それは何より世界の恵みそのものなのだ。
そしてその恵みをもたらす泉が枯れたのであれば、確実に有限である。そのエネルギーは魔術を通じて生活の様々に応用されている。
しかしその一方で、この世界では新たな人類が誕生した。
『マナフィラー』
その存在は、大量ではないにせよコアを生み出す。ゆえに彼らは重宝されるのである。
いつ枯渇してもおかしくないエネルギーに生かされているというこの世界。バランスが崩れてきているのだ。




