表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

おまけ

 遥が風呂に入っている間、母が暇そうにしていたので話しかけてみる。


「母さんはさ、遥の事をどう思っているの? 本当にレイナとして見る部分は無いの?」

「そうね。幼い頃の楽しい事も、色々あった苦しい事も、記憶として共有できる存在だから、レイナとして見てしまうことは多いわよ。だから、幸せになってほしいのよ。できれば、ずっとこの家に居て」

「それは暗に、嫁にしろって言っている? 遥がそれを望んでくれているなら望むところだけど、最近は友達も出来てきているし、もっと良い出会いがあるかもしれない」

「ずいぶん弱気ね。同棲しているアドバンテージがあるでしょう」

「同居だろ? いや、一緒にいる時間が長いからさ、接し方が解んなくなっちゃうんだよね」


 そう。もし愛想を尽かされたら、この先気まずい関係が続いてしまうし、居辛くするのは本意でも無い。母は考え過ぎだと笑っているけど、僕は軽い気持ちで接したいわけじゃないのだ。

 風呂上りに部屋で呆けていると、戸をノックされたが戸が開かれることは無い。であれば、廊下に居るのは遥だろう。


「どうぞ。入っても大丈夫だよ」

「ごめんね、遅くに。お義母さんから少し話をされて、不安にさせてるんじゃないかって」

「不安なわけじゃない。自分に自信が無いだけなんだ」

「私を助けてくれた事も含めて、誇っても良いと思うんだけど」


 彼女のそれは男としての他人から見た評価だろうが、僕の言うそれとは根本的に違う。そう、比較されないかって話しだ。

 母は解っていたと思うのだけど、あえて誤解するように話したのかもしれない。自分の口で確認させるためだと思うが、先送りできるならその方が良い。


「いや付き合っているんだから、その。キスとかしたいなって思ったりもするんだけど、そこまでしたら歯止めが利かなくなりそうで怖いんだ。なにしろ一緒に住んでいるわけで、こうして時間を気にせず会える訳だから」

「そ、そうだね。あの、私もキスとかして欲しいなって思ってはいたの。でも、女の子の方から求めたら嫌われないかとか、初めてだからどうしたら喜んでもらえるのかなんて考えちゃって」

「初めてなの? あの、レイナの時も含めて?」

「あ、うん。レイナの魔法は神を降ろして奇跡を起こすものだから、穢れがあってはいけないと言われていて。好きな人がいた訳でもないしね」


 遥としては未経験だとしても、レイナとしては経験済みだと思っていたのだが、そちらも未経験だと聞いて少しほっとした。

 経験していたからと言って嫉妬は無いけど、物足らないとかがっかりされたら立ち直れそうにも無いのだから。


「そっか。いや、比べられたらとか考えていたなんて、とんだ臆病者だよね。でも、そっか。あの、それじゃキスしても良い?」

「ごめんなさい。今はダメ」

「ど、どうして?」

「お義母さんが廊下で様子を窺っているから」

「「……」」


 せっかく合意が取れたのに、お預けになってしまった。

 でもそうだな、母さんが風呂に入っている間だったら大丈夫だろうから、後でもい一度聞いてみよう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ