進むべき道
俺はあの火事のことを聞くために病院に来た。受付の人に事情を言って先生に会わせてもらうことにした。
受付から紙を渡された。
内容は時間と待ち合わせの場所だった。
場所は研究室があった場所から離れた海が見える公園だった。時間は夜中の3時。なぜこんな時間にと違和感を感じた。
3時まで時間がまだまだあり時間を潰すしかないと思い、迷ったが行く宛がなさすぎて10年後の家がどうなっているのか興味もあり俺が住んでいた家に行くことにした。
家に近づいていく事になんだか不安な気持ちになった。
俺は考えた。
まだ分からないが火事があったのは事実だ。
1つは火事によって生き延びたが3年前に死んだ。
2つ目はこの時代の俺もタイムワープしている。だがタイムワープしていたら火事で死んだ人間が俺ではなくなる。
これだけは勘弁してほしい。3つ目はタイムワープもしてなく火事でも生き延びて、3年前に死んだ患者が俺ではなかったら。
もう違う人間が住んでるのではないかと考えられるし、誰も居ないかもしれない。だが3つ目の考えが当てはまったら俺が居ることになる。
玄関前まで来てポケットにあった鍵を取り出した。
鍵穴に入れたが回らなかった。
この瞬間頭の中に思い浮かんだのは誰かが住んでいる可能性が高いと思った。
もうどうにでもなれと思いインターホンを押した。
ドアが開いた。
人が出てきた。
すると肩に手を置いて来た。
「待ってたよ」
「え?」
俺は目を疑った?
目の前にいたのは女性だった。
「俺のこと知っているんですか?」
驚いた俺は女性に聞いた。すると信じられない言葉が返ってきた。
「あなたがここに来るのを分かっていたから」
「中に入って喉乾いたでしょ?」
想像もしていなかった出来事に俺は女性の言う通り中に入った。
(俺の家だ…だけど言えないよな…)
リビングに入り椅子に座った。
「はい、どうぞ」
女性がコーヒーを置いた。
「なぜ、俺のことを知っているんですか?」
「それに来るのを知っていたって…」
女性は椅子に座り優しそうな表情で俺を見た。
「私はある人からあなたがこの時間に来ることを教えてもらっただけよ」
「ある人?」
「あなたに名前を言わないでくれって言われてるから教えることはできないわ…」
「そんな…でも何でその人は俺が来るって分かっているんですか?」
「あの子は自殺を図ろうとした私を崖から落ちる手前で助けてくれた…その時あの子に教えてもらった」
「自ら死んではならないと…」
「その子は昔助けられたある青年を探しているって言っていた」
「この時代に迷い込んだ私をそして一人ぼっちだった私を助けてくれた人だと…」
「ん?この時代?」
俺は疑問に思って言った。
「その子は未来人なの。今から700年以上先のね」
「ははっ、冗談よしてくださいよー」
俺は笑った。
あまりにも言っていることが凄すぎて緊張も解けてコーヒーを飲んだ。
「じゃあ、これを聞いたらどう思う?」
女性も笑いながら言った。
「え?何ですか?もうやめてくださいよー」
もう緊張感などなくなっていた。
「あなたは10年前から来たんでしょ?」
「え?…」
俺はその一言に体が固まった。
「何で知っているんですか?」
「その子が教えてくれたからよ」
「じゃあ…その青年って」
「そう今ここにいる、あなた」
「あ!?」
突然激しい頭痛に襲われる。とにかく痛い。巨大な洗濯バサミが頭を思いっきり挟んでいるかのように。
『誰かと一緒にいる記憶が頭の中に浮かんで来る』
『一人の女性が笑っている』
俺が頭痛に襲われた時、二階に行っていた女性が戻って来た。
俺に何か飲ませた瞬間、頭痛は治まった。
「大丈夫?」
「今のは?」
「彼女が用意した薬よ」
頭痛が治まり壁にもたれかかる。
「なんとなく思い出したよ…」
「俺がなぜタイムワープの研究をしていたのか…」
「俺は…あいつに会いたかったんだ…」
「あなたにあの子の名前を教えたら今の症状が起きると思って言わなかったの」
「ごめんなさい…」
女性は申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや大丈夫だ…あの火事で俺は死んでいたんだ…」
「もしかしたら…あいつに助けられたのかもな…」
時間が経つ旅に記憶が蘇った俺は自分が生かされていることの重大さを感じた。
進むべき道が見えたような気がした。
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