プロローグ・概要
お話の続きが気になる方は「プロローグ」をお読みにならない事を推奨します。
概略
主人公の瀬沙は、十七歳までを唖透と共に孤児院で過ごす。
他の子供と何か異質なものを感じていた大人たちは、この二人を忌しいものと扱っていた。ある日〈零一〉(レイイチ)という男からの手紙の存在を知る。二人は「自分たちの居場所は〈零一〉にある」と信じ、孤児院を出る。
〈零一〉の住所にたどり着き、二人は零一と再会する。しかしそこにいた男は二人を突き放した。途方に暮れる二人。その夜、唖透は何の前触れもなく死んだ。
瀬沙は唖透の亡骸をつれ、再度〈零一〉を訪ねた。その家で、瀬沙は零一の助手という御影と会う。零一は「二人を認められない」と言いながらも、瀬沙に協力することを承諾。瀬沙は零一と御影の研究室で居候をすることとなる。
何気ない日常を過ごしていく瀬沙。零一の人間性に翻弄されながらも、日々付けている日記には唖透への一方通行な想いだけが書き綴られていった。
ある日、零一は瀬沙を地下の研究室へと招き入れた。「全てを知る日が近い」と告げられ動揺するも、不思議な興奮を覚える。
その後零一は瀬沙をクラシックコンサートへ誘う。「瀬沙と唖透を認められない」と冷たくあしらっていた零一からの誘いに、瀬沙は心ときめかす。しかし、それは零一の最後の抵抗であり、瀬沙をまたどん底へ突き落とす結果となった。
その晩、深夜、瀬沙は何かに呼ばれるように、地下の研究室へと足を運ぶ。そこで待っていたのは蒼流だった。蒼流は零一の別人格で、瀬沙と唖透が探していた〈零一〉、まさにこの男だった。瀬沙は「蒼流が僕たちを救ってくれる」と強く感じた。
翌日から瀬沙の心に異変が起こる。蒼流に愛されている実感から、零一への執着がなくなる。そしてどこか、零一の寂しげな表情を感じていく。
それからしばらく経ち、瀬沙は蒼流に呼び出される。「零一の昔話を聞く前に、蒼流が真実を話す」。
次の日、零一宅は年越しに向けた大掃除をする。何気ない日常から、瀬沙は「唖透は死んだ、別々の道を歩む」と気づき、自分が零一を助けたいと思うようになっていることに落ち着きを感じる。
その後、零一の昔話を聞き、零一・御影がクローン人間であると知る。そしてまた、瀬沙・唖透は蒼流の手によって作られたクローン人間と知らされる。
数十年後。瀬沙の老いも止まり、零一は死んだ。瀬沙は御影とともにクローン人間の開発を始めている。