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9 テストプレイ(1)

 コアルームは非常に殺風景だった。高校の教室程度の広さだが、部屋の奥にある台座とその上で赤黒く輝く球体の他には物は何も存在しない真っ白な空間だった。


 球体に近づいて手を翳すと、先ほどダンジョンを作成した時に使った操作パネルが浮かび上がった。


「創造主を確認しました。ダンジョン管理機能を起動しています……」


 アナウンスが流れると同時に目の前に青色のメニュー画面とは異なる赤く半透明なパネルが浮かび上がった。


 浮かび上がったパネルに表示されている機能は『ダンジョン状態確認』『ダンジョン編集』『新規階層作成』『設定変更』『アイテムボックス』の5つだった。まずはアイテムボックスの中に先程の狼兎の戦闘で手に入れたアイテムを収納し、次にその中から『ダンジョン状態確認』を選択。どのような設定になっているかを改めて確認することにした。


ダンジョン名:【イレギュラー・ラボ】

創造主:【コーツ】

状態:【正常/現在侵入者なし】

現在レベル:【1】

残DP:【0】

実績:【撃退人数0/敗北回数0】

階層:【最大1階層】

どの階層を確認しますか?


 1を選択し、更に細かい状態を確認する。


階層1

状態:【ランダムダンジョン/侵入者0】

マップ:【ランダムダンジョンのため閲覧不可】

出現モンスター:【アンデッド-Ⅱ】

実績:【撃退人数0/突破人数0】

テストプレイ【現在可能】



 出現モンスターの欄を選択すると、現在出現するモンスターの一覧が表示された。


・ゾンビ

 ポップ速度:極速

 死者の成れの果て。満たされることのない餓えに苦しみ、常に人間を求め彷徨い歩く。移動速度や耐久力は低いが攻撃力は高い。【詳細を見る】


・オクタパラシドゥス

 ポップ速度:極遅

 死体に好んで寄生する寄生生物。生まれた時の姿は小さいが宿主の体内で急激に成長する。成長した個体の寄生能力は格段に上昇し、まだ生きている生物に寄生することもある。寄生された生物は主導権を奪われる。【詳細を見る】


・パラシティックゾンビ

 ポップ速度:並

 ゾンビに寄生生物が宿ったもの。その凶暴性は通常のゾンビを遥かに上回る。移動速度も攻撃力も格段に上昇している。倒されると体内から寄生生物が飛び出すこともある。【詳細を見る】


・ケルベロス

 ポップ速度:速

 ゾンビ化した犬型の獣。敏捷性と凶暴性は非常に高い。【詳細を見る】


・グール

 ポップ速度:並

 迷い込んだ人間の死体を漁る食屍鬼。魔術が使える個体も存在する。隠密行動を得意とする。【詳細を見る】


・ナゴーブ

 ポップ速度:遅

 グールの一族の長。魔術をかなりの種類操ることも可能で、とある神を信仰している。通常のグールと比べ全ての能力値が格段に上昇している。【詳細を見る】



「これは……相当えげつないぞ……」


 『災厄の始祖』により1ランク強化されたモンスターを見て思わず頭を抱える。

 ゾンビやケルベロスは別に構わない。王道のアンデッドだろう。だがその強化種がヤバい。


 通常ならオクタパラシドゥスのポップ速度が極遅に設定されていることでパラシティックゾンビの発生速度が序盤では抑えられ、かつ稀に出現する仕様なのだろう。が強制的に1ランク上昇してしまっており発生するのは既に寄生されたものも含まれてしまっているのだ。撃退するたびに寄生生物が飛び出し他のゾンビに寄生し、またそれが撃退され……と寄生生物を倒すまでの無限ループが開始される。どう考えても序盤で登場して良いモンスターではない。


 グールとナゴーブの実力ははっきり言ってよくわからない。しかし隠密を得意とするグールは毎回配置が変わり警戒すべき場所を暗記するという対策が不可能なランダムダンジョンと相性が良いはずだ。


 そもそも全体的な見てくれが悪すぎる。どこからどう見てもパンデミックを起こした研究施設だ。しかも運営しているのは高貴な種族であるハイエルフである。こんなダンジョンに一体誰が好んで来るというのか。人が来なさすぎてはダンジョンを創った意味がない。


「んー……物は試しだ。ちょっとテストしてみるか」


 少し躊躇ったが、パネルから『テストプレイ』を選択する。



「テストプレイでは死亡してもデスペナルティはありません。死亡する若しくはこの階層をクリアするとテストプレイは終了します。テストプレイ中に入手したアイテム、経験値、お金は終了後に消滅します。また、メニュー画面から『テストプレイ終了』を選択することでいつでも終了することが出来ます。テストプレイを開始しますか? NO/YES」


「……YES」


「テストプレイ中の階層にプレイヤーが侵入しようとした際の措置の設定をしてください。プレイヤー侵入禁止/テストプレイ強制終了」


迷うことなく「プレイヤー侵入禁止」を選択すると体が赤黒い光に包まれ、ダンジョンの入口へと転移した。





■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



「さて、早速やってみますかねっと」


 ダンジョンの入口へと転移し辺りを見回すと、目の前には廊下が伸びていて左右にそれぞれ3つの部屋、廊下の一番奥に1つの扉があった。


「こういうのは一部屋ずつ調べるのがセオリーけど……」


 俺はまっすぐ一番奥へ歩き、扉を開けようと試みた。が、途中であることに気付く。


「これ、ロックかかってんじゃん。カードキー型かよ」


 扉の横にそれらしき装置が備え付けられているのを発見し、諦めて一つずつ部屋を調べることにした。


 アイテムボックスから銃を構えて一番手前の左側の部屋に突入する。モンスターが待ち構えていることも警戒していたが部屋の中には誰1人として存在しなかった。

 その部屋は微かな消毒液の匂いで満たされており、試験管やフラスコ、ビーカーといった実験用具が並び奥の戸棚には薬品が保管されているようだった。


 特に印象に残るのものは無かったが、念の為に薬品を調べることとした。何故か薬品庫には鍵はかかっていなかったのがラッキーだった。


名称:中級ポーション

種類:薬品-回復

効果:使用することでHP200回復。一回きり。


名称:濃硝酸

種類:薬品-攻撃

効果:触れたものにダメージ(大)を与える。光に当てると時間経過で劣化する。一回きり。


名称:ジエチルエーテル

種類:薬品-攻撃

効果:フロアに散布することで炎系の威力、範囲の上昇+ダメージ(微)の効果を一定時間フロアに付与。一回きり。



 質の高いアイテムに思わずガッツポーズをしてしまった。どうやら『災厄の始祖』でモンスターが強化されたと同時にアイテムのレベルも上昇しているようだ。これは良い客寄せになるだろう。


 そんなことを考えつつ全6部屋を探索しつつアイテムを回収。カードキー自体は3つ目に調べた部屋で発見したのだが、気がつけば全部屋を探索しアイテムを回収していった。



「さて、次の部屋には何があるのかな…?」


 無事に探索を終え次の部屋に向かおうとカードキーを使用しようとする俺はこのダンジョンの危険性をすっかり失念していて、何の気なしにセンサーにカードキーを翳した。


カシャ、ピー


「ウボアアアアアアアアアアア!!!!」

「は、ちょ、ま、やめあああああああああああああ!!!!!」



 最奥の扉が自動で開くと同時に大量のゾンビが廊下になだれ込んできた。すっかり警戒を解いていた俺はなす術も無くゾンビ達に囲まれ総攻撃を食らい、あっという間にHPが0になりテストプレイは終了した。

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