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7 森林

「ふう、やっと着いたか」


 目的地の森の入り口へ到着した俺は、まずこの辺りで採取できるアイテムの確認をすることにした。回復アイテムがなければあと攻撃を一撃でも喰らえばゲームオーバーという状況の中で過ごさなければならない。いくら『封印されし右手』が発動しているとしても不意討ちを喰らえば対処のしようがない。片手に銃を持って細心の注意を払って行動することにしよう。


 まずは近くに木の実が生っている木があったのでいくつか採取した。1つを残して簡易アイテムボックスを呼び出して中に入れるとこんな解説が出てきた。


名称:木の実?(未識別)

種類:食料

効果:未識別のため不明



「まぁ食ってみりゃ効果は分かるだろ」

 形は丸く、若干熟していない林檎みたいな色と大きさをしているが柔らかい。とりあえず一口齧ってみる。


「うわっ!酸っぱ!」


 やたら酸っぱくて思わず吐き出そうとしたがシステム的に無理らしく、強制的に完食させられてしまった。おかげで口の中が酸っぱいというより痛い。

 しかも本来は体力回復の効果があったようだが熟していないのでほんのわずかしか回復しなかった。まぁ『封印されし右手』が発動したままだからいいけど。


「ガサッ」

「?!!喰らえ!!」


 背後の草むらから何かが動く音がした。どうせ敵だろうから音がした辺りに銃弾を3発叩き込んだ。卑怯かもしれないが先手必勝。何せ現在ほとんどサドンデス状態だからな。


「ぎゃああああああ!!!」


 銃弾を打ち込んだ茂みの中から悲鳴が聞こえてきた。あ、あれ……?モンスターにしては悲鳴が人間っぽい……ま、まさか……。


「『99Es252』を殺害しました」

「メッセージが届いています」



 これはまずい……、犯罪プレイヤーなんて完全に救いどころがない。いつか殺した人に会ったら謝ろう。そう決意し、一先ず殺害と同時に届いたメッセージを開いた。



From…System


Sub…称号獲得のお知らせ


本文…獲得条件「P(Player)K(Killing)を全プレイヤーのなかで初めて行う」「Creatorである」をクリアしたため、称号『災厄の始祖』を獲得しました。称号の能力はメニュー画面のステータスから確認してください。


 

「なんだそれ……『メニュー』、『ステータス』…、あった、これだ」


 通知の指示に従い手に入れた称号を確認する。そこにはこのようなことが書いてあった。


『災厄の始祖』

「ダンジョン内で生産されるモンスター及び流出モンスターのランク一段階アップ」

「PKを行った時の経験値獲得の割合増加」

「撃退プレーヤー数が一定数に達していないので未解放です」

「撃退プレーヤー数が一定数に達していないので未解放です」


 ……なかなか強力で助かった。ユニーク称号だから当然かもしれないが。早速設定しよう。



「んじゃ早速森の奥の方へ…うぎゃああああああ!!!痛い、痛い痛い痛いいいいいぃぃぃいいい!!!」


 突然、身体中を蟲に喰われているような激痛が襲った。激痛に耐えられずのた打ち回りながら身体をなんとか見回したけれど、外見には何もおかしい所はなかった。

 だが、もう理由なんてどうでもよくなった。頭の中がどうすればこの激痛から逃れられるかで一杯になるのに10秒もかからなかった。







「アアアアアアァァァァ……。止、まった、か?」


 1分間ほど続いた地獄もようやく収まったが、不自然なところが2つ見つかった。

 まず1つは、数秒前の痛みが嘘のように消えて、痛みの後遺症などが全く残っていないこと。これはゲームだからそうなのかも知れないが、さっきの狼兎との戦闘では噛みつかれた後も痛みが続いていたので、まだ疑問は残る。

 2つめは、あれだけの激痛があったのにHPが1ポイントたりとも(・・・・・・・・・)減っていない(・・・・・・)のだ。これは理解のしようがない。もしこれが何らかの攻撃だとすればほぼ確実に死んでいたが、HPバーには全く変化がないので攻撃ではない何かだが、その何かがわからない。


「『メニュー』…ん、またメッセージか。ま、まさか………」


 ふと頭の中に嫌な予感がよぎってメッセージを確認したところ、送信者を見ただけでその予感が正しいことを確信した。


From…ウィルス


Sub…重要なお知らせ2


本文…ご機嫌如何ですか?プレイヤーの諸君。さっきの激痛はなんだったのか知りたいかい?じゃあ特別に教えてあげよう。

 実は、愚かな政府及び世界VR管理委員会がこのゲームを強制終了させようと干渉してきたんだ。だけど、僕相手にそんなことはさせない。何重にも張り巡らされたこのゲームのセキュリティを更に強化して、外界から干渉があった場合は逆にその端末にウィルスを感染させ、さらにプレイヤー全員に激痛を与えられるようにしておいた。あ、不審な行動をとった場合もこっちから自由に激痛を与えられるからね。

 じゃ、引き続きゲームを楽しんでね



「糞野郎……」


 予想以上に酷い内容に思わず呟いてしまった。僅かに外界から強制的にゲームを終了してくれるだろうと期待していたが、もうこれでその希望も断たれてしまい、無力感が込み上げてくる。


 どれくらいぼーっとしていただろうか、正気を取り戻した俺は気持ちを切り替えて、森の奥へと進もうと行動を開始することにした。

 が、起き上がろうとした瞬間、



 何かが上から落ちてきたと思うと、次の瞬間ネバネバする何かに絡め取られ釣り上げられて、宙に浮いた。


「え!?」


 何が起きたかさっぱり分からず、状況を確認しようと視界に移っているなにかをよく観察すると、まず目に飛び込んできたのはこちらを睨みつける8つの複眼、次いで口に生えているさっきの兎とは比べ物にならないほど鋭く妖しく輝く牙、そしてうっすら毛の生えた細長い8本の脚だった。どうやら上空で籠状の網を作り獲物が通りかかるのをずっと待ち構えていたらしい。幼い頃読んだ昆虫図鑑にこんなのいたっけな、とかすかな記憶はあったが名前を思い出すまでには至らなかった。そこまでのことを考えるに余裕なんて残されていなかった。




 …正直に言おう。



 俺は!!蜘蛛が!!大っ嫌いなんだああああああ!!

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