4 戦闘(1)
早速攻略の用意をするべく、武器・スキルの確認を始めた。まずは武器から始めることに決め、簡易アイテムボックスの中身を改めて確認した。初期配布の武器の性能はこのようなものだった。
初心者用バトルアックス[斧]:STR+20 重さ15
練習用拳銃[銃]:STR+25 反動10 装弾数6
練習用弾丸×30
取り合えず簡易アイテムボックスから初心者用バトルアックスを取り出した。想像していたものより大きく半身ほどの長さがあったそれを振るってみたが…。
「おわっ!めっちゃ重っ!」
とてもじゃないがまともに扱えそうになかった。4~5回振るうだけで疲れて動けなくなってしまう。「重さ15」とあるが、恐らく能力値と関係があるのだろう。
「これはLvが上がるまで使えないな」
次に初心者用拳銃の使い心地の確認を始めた。一旦斧は簡易アイテムボックスに収納し、本体と弾を取り出して弾を込める。そして近くに生えていた木に狙いを定めて、アクション映画みたいに片手で撃ってみた。その結果、
「ぎゃああああああ!!!肩が、肩があああああ!!!!」
いくら練習用だといっても銃は銃。反動により肩が外れるような激しい痛みが走った。HPも僅かではあるが減少している。「反動10」の値が何か関係していることは間違いない。
次はしっかり両手で狙いを定めて撃ってみる。
パァン!
手は少し痺れてしまったがまともに撃つことが出来た。が効率は斧の方が若干だが良い。乱戦とならない限り当分メイン武器は斧になるだろう。
続いてスキルの確認を開始しようとしたところで、草むらから一羽の兎がピョコリと飛び出して来た。
俺がまず考えたことは、どうやって逃げるかだった。
別に俺は兎にトラウマが有るわけでも、動物が嫌いでもない、寧ろ大好きだ。
純白の美しい毛並みに、クリッとして愛くるしい目。その姿は誰もがモフりたいと思うだろう。
…………その口の中にオオカミの様な鋭く尖った牙が生えていなければ、だが。
「………………」
「………………」
あ、目があった。
「グルアアァァァ!!!!!」
「うおっ!!」
兎は好戦的な性格なのか、いきなり牙を剥いて俺の肉を噛み千切ろうととびかかってきた。なんとか間一髪で俺はそれを避けたが、危なすぎる。
「戦うか………」
「グルウウウウゥゥ……」
簡易アイテムボックスから斧を取りだし、重さによろめきながらも何とかそれっぽく構えた。が、相手は小さな兎。とても攻撃を当てられそうにになかった。
まず斧を大きくふりかぶって兎に叩きつけたが大振りでミエミエの攻撃を避けない筈もなく、アッサリと避けられてしまった。そしてそのまま兎はこちらへと飛び掛かり、その口を開いて腕に噛み付いた。
「痛っ!」
兎に噛み付かれ、腕に針で刺された様な痛みが走る。視界の端に移るHPバーを確認すると30%ほど減ってしまっていた。
「喰らえ!」
もう一度斧を叩きつける。今度は掠っただけだが、攻撃は当たった。兎の頭上に表示されているHPバーが5パーセントほど減ったのでこれを後20回ほど繰り返すのか。
うん、無理だ、先に俺が倒される。
半ば諦めていた時に、俺はスキルの存在を思い出した。確認作業を続けるべく兎から距離を取りつつ音声入力でステータス画面を起動した。
「『メニュー』『ステータス』」
そしてAS一覧の最後にあった【ASについて】をタッチで選択すると各スキルの属性毎の発動方法が記載されていた。徐々に後退する速度を下げながら[魔術-魔眼]のページを斜め読みすると魔眼系のスキルはどうやら魔術系の中でも詠唱無しで発動させることが出来る、というのが読み取れた。発動条件は頭でスキル名を念じつつ対象を睨み付けることで発動するという至ってシンプルなものだった。
「喰らえオラ!」
スキルの発動方法を確認し終わり、兎を睨み付けながら俺の持てる力を出しきって斧を振り下ろした。
しかし、あっさりと避けられてしまった。
どうやら『スネークアイ』による「硬直(微)の効果は思ったより弱く、そこまで長時間硬直させることは不可能のようだ。硬直していた時間はおよそ1秒ほどで通常ならそこそこ使えるのだろうが、今の俺の装備との相性はあまり良くない。というか1秒じゃ足りない。
などと考察を脳内で展開していた俺は一瞬敵の存在を忘れ、その隙をついて脇腹に嚙みつかれてしまった。
「痛っ!クッソふざけんな兎の分際で!」
脇腹に鋭い痛みが走り、姿勢が崩れて倒れそうになったが何とか倒れることだけは阻止した。恐らくゲーム最弱に近いモンスターにここまでボロボロにされるのは思っていたよりも遥かに屈辱だった。あと2回も喰らえばゲームオーバーだろう。
「そんなことあってたまるか!」
さっきと同じように渾身の力をこめて攻撃した。今度はタイミングが上手に合い、戦斧の刄が憎き兎の胴体に喰らいついた。
「ギャアアアアァァァ!!!!」
小さな見かけによらずここら一帯に響きわたるような断末魔の叫びをあげ、兎はドロップアイテムを残して粒子となって虚空に消えていった。
「っしゃあ!!見たか!!」
俺は初のVRでのモンスター討伐に歓喜の声を上げて喜んだ。コイツが最弱モンスターということは俺の頭からはスッカリ抜け落ちていた。
「さて、今回の戦利品は………?」
獲得アイテム
・狼兎の肉×1
獲得Exp:3
獲得金額:2C
「……まぁ、当然だけどショボいな」
最弱モンスターなので当たり前だが戦利品はショボい。あの死闘は何だったんだ…………。
「レベルアップしました」
え、たったこれだけで?
Lv:1→2
HP:40→70
MP:34→48
STR:11→15
CON:0→4
DEX:15→20
INT:23→30
POW:4→11
AGI:17→21
獲得ステータスポイント:7
どうやら『求道者』の効果は想像よりかなり強力らしい。これならレベル上げが捗ること間違い無しだろう。
そして早速能力値に自由に割り振ることが出来る「ステータスポイント」の割り振りを済ませた。硬直(微)の効果はINTに多少依存するらしく、手に入れたものはすべてINTに注ぎ込んだ
MP:48→55
INT:30→37
「またこいつか…………ってマジか……!?」
ステータスポイントの割り振りを終了させ、PSの確認に移ろうかと思うとあの憎き兎が現れた。コツも掴んだし今回は楽に倒せるだろう。
10匹も同時に現れなければ、だが。恐らくさっきの悲鳴を聞き付けたのだろう。
「………これ無理ゲーじゃね?」
流石にレベルが上がったからといってどう考えてもこれは無理だ。
「グワォッ!」
と、群れのなかの一匹が飛び出して噛みついてきた。攻撃をまともに喰らい、HPも5パーセントくらいしか残っていない。完全に詰んだと思ったその時、脳内にアナウンスが鳴った。
「PS『封印されし右手』が発動しました。」
そして、ネタスキルが発動した。
能力値の上昇は実際にダイス振って決めてます。ステが変なバランスになったらダイスのクソビッチ様を恨んでください。