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11 テストプレイ(3)

 長い廊下を走り抜け扉を開けると、そこは広間となっていた。広間には4つの扉が配置されており、そのうちの一つは何やら厳重なロックがかかっていた。近づいて調べてみるとドアを開けるにはカードキーがどうやら2枚ほど必要なことがわかった。


「多分、これがコアルームに繋がってるんだろうな」


 そう判断した俺は辺りを見回す。この広間は4つの扉以外は何もなく、モンスターが出現する気配も無い。カードキーはさっき探索しそびれた部屋か残り二つの扉の奥にあるのだろう。


「さて、どうすっかな……」


 暫しの思案の後に俺は元来た道を引き返すことにした。そうして振り返りドアを開けようとして、あることに気づく。


「…………向こう側からまた声が聞こえる」


 最初は気のせいかと思ったが扉に耳を当ててみると気のせいでは済まされない音量で呻き声が聞こえて来た。


「ポップ速度幾ら何でも早すぎるだろ……」


 確かにゾンビのポップ速度は極速と書いてあったが流石に速すぎやしないか?

 念のため拳銃に弾を込め直し、今回は斧を取り出してから扉を開けた。するとやはり1人のゾンビがポップしており、ゆっくりとこちらへ向かってきた。


「この短時間で既に1匹か……他の場所のことは想像もしたくねぇな、畜生」


 ゾンビの爪と牙が届く前に斧の刃を横薙ぎに振り、首を刎ね飛ばしながら思わずぼやいてしまった。おそらくあの扉の奥には夥しい量のゾンビが蠢いているのだろう。いや、ゾンビやパラシティックゾンビだけならまだしも実力が未知数のグールやケルベロス、最悪の場合ナゴーブも現れているだろう。そいつらの脅威がどれほどのものかわかっていない以上下手な行動は出来ない。


 廊下を抜けて元の場所へ戻り、さっきは入らなかった部屋を全て調べることにした。残りの5部屋の中に1つでもあれば儲けものだ。そう考えながら一番近くにあった扉に手をかけて部屋へ入った。


「……よし、何もいないな」


 安全を確認するとまずは薬品庫を探したが、この部屋は資料室風になっており本棚で埋め尽くされていた。どうやら全ての部屋に薬品庫があるというわけではないようだ。しかも納まっている本やプリントはシステム的に何かロックがかかっているのだろうか、明らかに意味を成さないであろう文字で埋め尽くされていた。


「ふーん……もしかすると何かスキルがあったら読めたのンガッ!?」


 突然背中に鋭い痛みが走り、驚いて後ろを振り向く。するとそこには蹄状に割れた足、犬に似た顔、そして鋭い鉤爪を持つ亜人型のモンスターが嫌な笑みを浮かべて立っていた。どうやらこいつがグールのようだ。


「クソッ!隠れていやがったのか!?」


 かなり警戒していたのに全く気がつかなかった。もしかすると隠密系のスキルを持っているのかもしれない。管理画面で詳細を見ておけば良かったと今更ながら後悔した。


 グールに銃を向けるとすぐに近くの本棚の陰に身を隠してしまった。どうやらゾンビよりは知能は高いらしい。


「よーし、早く出てこい。銃弾をプレゼントだこの野郎」


 そう言って俺は銃を構え、いつでもそこからグールが飛び出してきても良いように備える。広間で装填しておいたから弾切れの心配もない。出てきたところにありったけの弾をぶち込むだけだ。


 しかし、中々グールが出てこない。痺れを切らした俺はグールの息の根を止めるべく物陰へと踏み込んでいった。


 するとそこには何もいなかった(・・・・・・・)


「ヤバい!?」


 そう思ったのも束の間、また後ろから鉤爪で切りつけられ鋭い痛みが襲った。


「テメェ……おちょくりやがって……」

「キャキャキャキャキャ」


 目の前で一体のグールが嘲るように鳴いていた。俺は即座に始末するべく銃を構えて狙いを定めた。この距離なら絶対に一撃で仕留められる。

 そう思って俺は引き金にかかった人差し指に力を込める。狙いは目の前のグールの額ど真ん中だ。絶対に外してたまるか。



 しかし引き金が完全に引かれるよりほんの一瞬だけ先に、後ろから何かが噛み付いてきた。



「ぐあっ!?離せ!!この野郎!!!」


 無我夢中で首筋に噛み付いてきたそれを蹴り飛ばすと、そいつはゾンビではなくグールだった。どうやらこの部屋には2体のグールが隠れていたようだ。いや、もしかすると3体目4体目が隠れているのかもしれない。


 首筋に噛み付かれたことでHPが大幅に減少してしまった。更に『出血多量』の状態も付与されてしまったようだ。


「このクソどもめ……2人も相手してられっか……」


 一番最初に現れたグールは既にどこかに身を隠してしまっていた。そちらに気を取られている間にもう一体のグールも姿を消していた。


 状態『出血多量』は全ステータスが8割にまで減少してしまい、治療するまで少しずつダメージが与えられる。アイテムで治療できるのだろうが生憎とそのようなアイテムは現在持っていない。本棚にもたれかかり荒く息をしながら現状を打破する方法を考えてみた。


「はあ……畜生……素早く殺せば……背後からの奇襲を喰らわずにいけるが……大丈夫なのか……」


 こうしている間にも『出血多量』の為に徐々にHPが減少していく。なんとかしなければ……。


「ん……待てよ。これならいけるかもしれない」


 少しすると俺はある一つの案を思いついた。かなりリスキーだが、何もしないよりは遥かにマシだ。

 まず今のHP残量を確認してみる。先のゾンビとの戦闘でかなりレベルは上がっているが、それでも今のHPは最大体力の11%まで減っていた。丁度いい。

 次に簡易アイテムボックスからジエチルエーテルを取り出し、床にぶちまけた。辺りが気化したエーテルで満たされ、少しでも火を起こせばあっという間に広がってしまうだろう。

 そして最後に簡易アイテムボックスから斧を取り出し、その時が来るのをじっと待った。


「これで準備は整った。あとは反撃の狼煙が上がるのを待つだけ……」



 数秒後、脳内にアナウンスが流れた。


「『封印されし右手』が発動しました」



 さあ、反撃開始だ。

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