アナタしかいらないのよ的な
少し直しつつ更新いたします。
クヌートさんをオデンヌさんと呼んだりばらばらなので統一していきます。
猫愛がだんだん満ち溢れています。
ぬこ…恐ろしい子…
「…取り乱して申し訳ありませんでした」
オデンヌさんは、席に座りながら、しょんぼりとそう謝ってくれた。
あの後、”派遣社員”とは何かと猫クロスケがなぜ今みたいになったのかは私にもさっぱりわからない件をお伝え
したところ、クヌートさんとチャッピー君は、非常にがっかり顔をしながらもわかってくれた。
意気消沈したチャッピー君は、大人しく椅子に座って自分が持ってきたお茶を飲んでいる。
期待されましても、魔法とかなんとかそういうのは一切出来ません。
「…たぶんという曖昧な表現で申し訳ないのですが…やはり、マーサさんが意識をしてその力のようなものを使えるようにならない限りは、元の世界に戻る事は難しいと思います」
もしも意図に反して別の場所に行ってしまう可能性を否定できないとクヌートさんは言った。
…うん、確かに、最初にここに来る前のあの、真っ暗な空間みたいなところに放り出されたらと考えると思わずぶ
るっと体が震えてしまう。
”みゃーお”
くるると喉を鳴らしながら、猫クロスケは、大丈夫だよとでも言うように私に顔をこすり付けてくる。
あああ、可愛い、癒される…。
もうお前が居れば別に何処に居ても良いような気さえしてしまうんだけども…。
「ですから、せめて数日その魔幼とあなたの共生関係を見極めた上で帰られるのがよろしいと思います」
「え?…ああ、そうですね。はい」
は、いかん。猫クロスケを撫で撫でするのに夢中で話を半分くらいしか聞いてなかったけれどようは少ししてから
帰りましょうって事ですね。うん、いいです。別に帰れるなら。
「あ、時間とかってどうなるのでしょうか、こちらで過ごした時間と戻った時間はかわるんでしょうか?」
「それはわかりませんが。魔幼をきちんと制御できればそういった事も可能になると思います」
クヌートさんが首をかしげながら、そう応えてくれた。
ふーん結構曖昧な事が多いんだなぁ。
「…魔幼と共生している人間は多くないんです。魔幼と共生できてもその力を取り込むのが精一杯で、マーサ様…じゃ無くてマーサさんみたいに外に常に出している人も初めて見たんです」
チャッピー君にもクヌートさんにも私に”様”づけしないように注意済みだけどなんだか猫クロスケの共生主って思われてるので”様”付けしたくなるみたい…なんだかなぁ。
「…実は、私も共生している魔幼が居ますが共生してからまだ一度も姿を見た事はありません」
オデンヌさんはそう言いながら寂しそうに自分の胸の辺りに手を添えた。
「魔幼を使役しこの共生を行う事が幻翔修練の塔で一人前となる証になります。魔幼が共生するだけで、私たちの力は増大して師範になる事も階級を上げる事も可能になります」
「…共生しても力が増大しても、魔幼が形作られて外に出てくるとは限らないんです。だからそれはとても貴重なんです」
チャッピー君が熱くならないようにしながらも熱の篭った視線を猫クロスケに向けてくる。
猫クロスケはすっかり大きくなってしまっていて本当だったら滅茶苦茶重いはずな見た目なのだけど全然軽くて、現在は私の肩にあごを乗っけて腕の中に納まって喉をくるくる言わせていてご満悦だ。
私は不可思議な状況でストレスを感じていてもおかしくないのだけれど何となくこのもふもふしてにょろにょろして真っ黒な猫クロスケが居ることで凄い救われている。
ーもしかしてこの感じが共生っていうのかな?
「そうなんですマーサさん。私達が興奮してしまったように貴方とその魔幼の存在を知ったらこの幻翔修練の塔全体が大騒ぎになってしまうでしょう。ですので一旦この塔の外の家にお招きしたいと考えているのですがいかがでしょうか」
クヌートさんの提案に私はちょっと考える。
一旦ここを出たほうが良いという事なんですね。
ーうーむ。どうしたものか。異世界あるある的にはそれが良いほうにいくパターンと反対のパターンがあるよね。
と少し悩んでいたらクヌートさんがにっこりと笑った。
「何か怪しいと思ったらその場で魔幼に私を殺していいただいても構いません」
ーいえ、それは全然私が構いますが。
まあ、なにかあったら助けてくれるんだよねと私が猫クロスケの喉元をくすぐると変事みたいなくわわっと言う大きなあくびを返してくれたのだった。
私が同意したことで早速度移動する事になった。
チャッピー君が大きめのフードつきのマントみたいなものを持ってきてくれて私に貸してくれたので服の上から着た。
ちなみに私の通勤服はプチプラでおなじみの某ブランドのフレアタイプのパンツにシンプルなカットソーで上は茶色で下は真っ黒です。
猫クロスケは私の肩にマフラーみたいに巻きついている。相変わらず全然重くないし暑くもない。
ちゃんと質感はあるのに不思議な感じ…。
クヌートさんに先導され、後ろにはチャッピー君についてもらいながら塔をどんどん歩く。途中何人かすれ違った時にフードをかぶった私に視線を向けてくる人もいたけれど呼び止められたりしないで進む。
「…ねぇねぇ。この猫クロスケみたいな見た目の生き物は、ここには居ないの?」
私の質問にチャッピー君は少し首をかしげた。
「…似ているものを何か書物で見た気もするのですが…直接見たのははじめてですね」
ふーん…じゃあ珍しいっていうのは見た目もそうなんだね。
「…外に出ます。言いというまでしゃべらないで頂けますか」
クヌートさんの言葉に私はお口にチャックのジェスチャーを返したがきょとんとされてしまった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
もっとさくさく進めたいような、もっと描写したいような
どっちつかずのアイウォンチュー的な気持ちで書いています。
定期的に読んでくださる方がいてとても励みになっています!
先が読みたいと思っていただけるようにがんばります。