閑話~幻翔修練の塔~
閑話です。
雅美以外の視点です。
今後色々とありそうな感じです。
幻翔修練の塔の最上階の扉の前でクヌートは大きく息を吸って扉を叩いた。
「-入りなさい」
若い声に迎えられて、クヌートは部屋に入る。声の主の居りであろう場所の前に頭を下
げたままでひざまづいた。
「-お帰りなさいませ、大師様」
「うん。クヌート、顔を上げてご覧」
言われて仕方なく、クヌートが顔を上げると大師レ・メンザ・コールディンがにこにこ
と笑っていた。
姿はクヌートの背丈の半分ほどしかない子供の容姿だが、金の短い髪に緑と紫の色違い
の相貌。そして肩には大きな羽を持った白い魔幼が乗っている。
その全体からかもし出される威圧感は途方も無いものだった。
「何か、入ってきたね。そして君が隠した」
にこにこと笑っているが、全て明らかにしろと言われてクヌートはぐうっと息がつまる
気がした。
「…レ・メンザ大師申し訳ありません。偶発的な事故で、一旦私の結界に隔離していま
す」
元々すぐに知られると思っていたが、一番嫌な想像があたりそうだとクヌートは思って
いた。
「面白い感じがする。私の結界の中で、とても自由に振舞っていたね」
にこにことするレ・メンザ大師の肩
ウルはss洛陽と呼ばれる白き魔幼はぎゃっぎゃっっと大きく鳴き声を上げて羽ばたいて
いる。
「洛陽が遊びたいみたいなんだけど、会いたいな」
「…まだ、こちらに来て間もない者です。しばしお待ち下さい」
クヌートはレ・メンザから向けられる圧を必死に無視して応えた。
レ・メンザはふーんというと、じゃあと首を傾げた。
「チャピタ・ケソッソの処分を決めよう」
「…それは」
うん?と楽しそうに言うレ・メンザに、クヌートは、額に汗がじわりと滲むのがわかる
。
「…既に行わせています。…彼には、暫く、異界から来た者の世話を任せました」
「ええぇ?それだけ?勝手に”秘儀”を行ったのに…」
「…万が一何かありました場合には、彼の命をもって贖う事を承知させています」
不満そうにふーんと声を上げつつ、レ・メンザが鋭く自分を観察するのをクヌートは感
じていた。
面白そうな表情を崩さないレ・メンザとは裏腹に、彼の肩の洛陽が姿勢を低くして、今
にも飛び掛りそうに見える。
しばしの沈黙の後、フワっと洛陽が霧のように溶け、瞬間にクヌートの頬にピリッと熱
い筋が走った。
羽音が自身の傍らで響き、奇声をあげる黒い何かを洛陽が捕らえて食べていた。
「…どこだろうな、エッスの島国のどこかか…クヌート・キ・オデンヌ。この始末はお
前がつけるのだろうな」
「も、申し訳ありません」
クヌートは、青くなって更に平伏した。
「…気を抜くな、私の動向を掴んでいるのだ。不在の時は特に気を引き締めろ」
もう行っていいと言われて、クヌートは再度頭を下げた後に、部屋を辞した。
廊下の壁にもたれて、大きく息を吐いた。
突然の自体が起こったとはいえ、幻翔修練の塔に外部からの目を入れてしまった事は大
きなミスだった。
「困りましたねた…しばらくマーサさんの所に行けないかもしれません」
再度息を吐いてから、クヌートはケソッソを探す為に歩き出したのだった。
読んでくださりありがとうございます。
一応、今のところはコレは本編外の更新です。
がんばれ私!
お時間ございましたらコメントや感想をいただけますと
とても嬉しいです。
間違いはゆくゆく直します。
すみません…。