08 動き始めた演劇部。
溝口は相変わらず、Japanese土下座styleを繰り出して謝っている。意味ないのに。
その横で、綾瀬先輩たちは活動を再開した。
綾瀬先輩は平均台で遊んで…いや練習している。
加藤さんは男子に例のドレスを着せている。
僕が来てまだ10分経っていないのに、僕はそれを日常だと受け入れてしまった様だ。
そりゃ、あんなカオスを5分見ていれば、脳がおかしくなるのも致し方ない。
ここは本当にカオスだ。
僕は暫くそのカオスな現状を眺めていた。
30分くらい経っただろうか。
いきなりマダムが入ってきた。
「ミーティングを始めます。」
マダムの声が響く。
「「「「「はい。」」」」」
部員皆さんの声も響く。
「羽島君も、こっち。」
山森さんに手招きされる。
とりあえず、手招きされた方へ行く。
綾瀬先輩や長屋先輩の声が響く。
タイトルらしきものが連呼されていく。
全くついていけない。
「羽島君。」
ん!?
何か今呼ばれた様な…。
「今呼ばれたよ。」
横で山森さんが囁く。
「…はい?」
「彼が今度脚本を書いてくれる、羽島君です!」
へ!?
全く状況が読めない。
けど、嫌な予感がする。
「自己紹介して、書きかけのやつざっと話して。」
は!?
「早く、ね。」
ほへぇ!?
…何かものすごく情けない声が漏れてる気が…。
ああああ!!はい!!
今すぐ話しますんで、その黒い笑顔だけは止めてください…。
「羽島直樹です。よろしくお願いします。えと、今…」
「質問いいですか?」
僕が話すのを遮る様に手が上がった。
「まあ、いいんじゃない?」
長屋先輩が適当に答えた。
「な、綾瀬?」
「いいよ。」
…僕の意見は無視ですか。
「先輩は今までどんな作品を書かれたんですか?」
…確か彼は、加藤さん事件のときの、?椅子に腰掛けた少年″君。
「えと、ゆるーい学園ものかと思います。」
「他、質問ある人ー?」
長屋先輩がゆるーく聞く。
…あれ、長屋先輩って、こんなゆるーい人だっけ…?
「はーい。」
誰だ?
…溝口だ。
「えーっとぉ、羽島君はー、好きな人はー、い…」
バシッ
気付くと、山森さんに叩かれた溝口が伸びていた。
…恐ろしい…。
「よい子のみんなは、変な質問しちゃだめだよー」
「関係ない質問は後にしてね。」
部長&副部長が締めた。
「じゃ、続きを。」
部長に促される。
「今、僕はこんな話を書いています…。」
* * *
時は江戸時代。
ある大名の娘がいました。
彼女は12歳でした。
彼女はとても身分が高く、結婚相手も決まっていました。
大名が決めた結婚相手は、自身の側近でした。彼はまだ若く、忠実で、大名のお気に入りでした。
そのため、大名は彼を跡取りにしようとしたのです。
しかし、彼は彼女の事が好きでしたが、彼女は彼の事が嫌いでした。
彼女が15歳になったら、彼らは結婚する約束でした。
13歳の春の日でした。彼女は侍女たちが街の様子を話しているのを聞き、とても興味を持ちました。
ある侍女を彼女は姉の様に慕っていました。名はおねといいました。
彼女はおねを連れて街に出かけ、色々店を回ったあと、ある団子屋に入りました。
彼女は団子屋で働いている青年に一目惚れしてしまいました。
屋敷に帰ってからも、彼女は彼の事が忘れられませんでした。
彼女はおねに相談しました。
「私はあの方が忘れられないの。私はあの方に恋をしてしまったみたい。あの方にもう一度会いたい…。」
おねは困りました。
そして、ある方法を思いつきました。
「姫様、では、あの店の団子をあの方に届けさせればよいのではないでしょうか。」
彼女は早速そうする事にしました。
といっても、ただの団子屋を屋敷に上げる事は出来ません。
彼女は屋敷の窓から、彼の姿を見るのみでした。
1週間に1回、彼を眺めるのが彼女の楽しみでした。
* * *
「ちょっと待ったあ!」
一段落した所で綾瀬先輩の妨害が入った。
「これ、展開読めちゃうよ!?」
いやいや、それは最後まで聞いてからにしてください…。
「綾瀬さん、お静かに。」
…マダム、ナイスだ。




