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脚本家もどきの日常。  作者: まめたろう
5/13

05 開演前の演劇部。

僕は講堂に戻ってきた。

…そこは講堂ではなかった。

これは、劇場だ。


なんということでしょう!


僅か10分経ったか経たないかの間に、機材が準備され、カーテンが変えられていた。


あまりの速さに、僕の脳内キャラがおかしくなった。


「遅いよ、羽島君。美奈子も。」

「「すみません。」」

…見事にハモった。

笑ってはいけない、しかし笑いが込み上げてくる。


…綾瀬先輩微妙に笑ってるし。


僕たちは顔を見合せ、苦笑いした。

先輩は切り替えて指示を出す。


「愛結と翔太は着付け!菜々美たちはメイクの準備して!その他は予定通り自分の担当に着いて!」

「「「「「はい!」」」」」


…うわぁ、凄いな…。

準備も大変なんだ…。


「羽島君。」

「はいッ!」

びっくりして変に裏返った声になってしまった。

「椅子を出すのを手伝ってくれない?」

…またパシりかぁ…。

「嫌ならいいんだけど…やってくれるよね?」

…怖い、先輩、怖い!

最初の上品なイメージはどこへ行ったのやら。

でもここで本音を言ったら確実にお先真っ暗…。

「はい。」

…パシり君確定。

はい、僕はなつみお姉様の下僕です!

「助かるよ、ありがとう♪」

ああ、なつみお姉様…黒い笑顔がとても眩しいです…。



そんなこんなで舞台が作られて行った。

会場のセッティングは終わった。

しかし、いつの間にか先輩は消えていた。

「綾瀬先輩、終わりましたけど?」

「じゃあちょっと待ってて。」

待つこと数分。

「お待たせ。」

着替えてメイクも済ませた先輩が出てきた。

「もうあと10分くらいで開場だから、悪いけど外で待ってて?」

―どうやら、今日は他校の演劇部を招いているらしい。

道理で外がうるさい訳だ。

「お客様係も外で待機。あ、ドアの開閉係は残ってね。」

僕が外に出ていこうとすると、

「待てよ、羽島。」

溝口の声が追いかけてきた。

「そこからは出れないぞ。裏から出ないと。」

…ああ、そうか。

お客様がたまっているのに出れないよな。

「ありがとう。」

「俺も外で待機だから、一緒に行くよ。」

溝口と並んで歩く。

「というか、何でお前ここにいるんだ?入部希望か?」

とんでもない!

入部したら僕は常に“なつみお姉様の下僕”になってしまう!

「いや、実は…」

僕は今までの経緯を語った。

「そうか…美奈子に捕まったのか…。頑張れよ。」

溝口は意味深な言葉を残して去っていった。

え、どういうこと?



入り口に回ってみると、既に列ができていた。

並んでいるのは、幼稚園から大学まである、この辺りでは有名なお嬢様校の制服を着た人ばかりだ。


…正直、ここの制服は見たくなかった。

この学校に睨まれるとなにかと面倒だから。


しかし、今はそんなことは言っていられない。

僕は人混みの中に紛れ込む。

前にいた人が振り返った。

「ごきげんよう。」

挨拶された。

「ごき…、こんにちは。」

慣れない僕は、ぎこちなく返す。

「今日はどんな感じですの?」

なんか聞かれた。

「…見てのお楽しみということで。」

適当に逃げた。

「あら、あちらの方は教えてくださいましたけど?」

お嬢様が指を指された方向には、溝口がいた。

みーぞーぐーちー!!!!!!

「す、すみません。自分は演劇部員ではないもので…。」

「あら、そうでしたの…。」



やっぱり…。

嫌な予感、的中。

僕ってこんな予感ばっかり当たる気がする…。

何でだろ…。



後日、溝口に話すと、

「それは偽お嬢様だな。」

と一蹴された。


「本物のお嬢様なら、ここには来ない。それに言葉が若干違う。『どんな感じですの?』じゃなくて『どのような感じですの?』だとおも…」


そんなもん、わかるかー!


「どうせお前のことだから、おどおどしてたんだろ?だから偽お嬢様にからかわれたんだろうよ。」

どうせ僕は、おどおど人間ですよー!


溝口に言われた通りだと思った、だけどなんか悔しくて僕はふてくされた。


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