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脚本家もどきの日常。  作者: まめたろう
12/13

12 彼女の過去と現在。

―私は、馬鹿だった。


今からちょうど1年くらい前、私たちは、悲しみに晒されていた。

ずっと一緒に活動してきた、高等部の先輩たちが卒業しなくてはならなくなった。強制的に。



みんな最初は泣いていた。

だけど、だんだんと受け入れていった。

私ひとりだけ、受け入れる事を拒んだ。

受け入れたら、先輩たちとの別れを認めた事になる。

別れたくなかった。

別に、恋愛感情で好きな先輩ががいたとか、そういう理由ではなく、ただ単純に、手本になる人を手放すのが嫌だった。



いっそのこと、中等部も廃部になればいいのに、とさえ思うようになった。



ある日、私の不満は爆発した。

先生に、突拍子もないことを言ってしまった。

全員の顔が硬直した。

佐竹先輩が走ってきた。

叩かれた。

怒られた。

優しかった先輩のこんな顔は見たくなかった。

…それぐらい、馬鹿だった。


悔しかった。

先輩に言われるまで気付けなかった自分が情けなかった。

家に帰ってから、ソファーの上でひとり、泣いた。

明日、先輩に謝ろうと思った。




神様は、意地悪だ。



先輩は、私が謝る前に、その意識(こころ)を無くしてしまった。


やるせなさだけが残った。


先輩の残したメモには、私を気遣う内容が書いてあった。

最後まで、私は先輩に迷惑をかけ続けてしまった。















《《《死んでしまおう。》》》






そして私は、校舎の窓から、身を乗り出した…。















―結局、私に死ぬことは出来なかった。

先輩の遺言を守るためには、死ねなかった。


そして私たちは、先輩の遺言を守るために、台本を書いた。

みんな実力の限界を感じて、どんどん止めていった。

私は止めなかった。

せめて少しでも、先輩に恩返しが出来るように…。そう思って頑張ってきた。

だけど、国語の成績3の、平凡な私には書ききる事は不可能だった。


諦めたくなかったけど、9割諦めた。これ以上は、自力で書けない…。

父のツテを使って、安い作家探すかな…。

…先輩たちに話しておこう。



数日後。

父の書斎に入ってみた。

一枚の紙が落ちていた。

どうせ雑紙の袋から落ちたんだろう。

…何が書いてあるのかな。


『××小説大賞』


何かの文学作品のコンテストの結果発表らしい。

元に戻そうと思った。

手を離した。

目が釘付けになった。

そこに小さく写っていたのは、同じクラスの男子の姿だった。



「なつみ先輩!!」

私は父の部屋から拝借してきた例の紙を見せた。

「この紙見てください!この特別賞受賞者!多分、うちのクラスの羽島です!彼に頼めば…!」

「わかった。先生に話しとく…。」



「羽島君、ちょっといい?」

「あ、うん…。」


「…脚本をやってもらえないかな…?」

「ええ!?」

「今度の舞台で、他校と内容が被っちゃったの…。」

…ごめん、羽島君。これは真っ赤な嘘。

「お願い、私たちを助けると思って…」

…これは本心。

…都合よく利用するだけでごめんね…。



私は、先輩の遺言を実現させるべく走り出した。

無理矢理かもしれない。

羽島君には悪いことをしているかもしれない。


…だけど、それでも私は、何も恩返しが出来なかった先輩に、少しでも感謝の気持ちを伝えたい。



見ていてください、先輩!!

きっと成功させてみせますから!

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