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脚本家もどきの日常。  作者: まめたろう
10/13

10 傍観者と演劇部の過去。

その日は至って平凡だった。


ある秋の日の事だった。

その時は、中高合同の演劇部だった。

演目は別々だったけど、先輩たちに指導されながら、中等部演劇部は活動していた。


いつも通り、俺らは稽古に励んでいた。

俺は、高等部の佐竹先輩に教えてもらっていた。佐竹先輩は1年生で主役に抜擢されるくらい上手かった。将来は役者になりたいんだ、今は怪我で出来ないんだけど、と笑っていた。

俺の憧れで、尊敬する先輩だった。


いつもより、高校生の数が少ない様な気がした。中間テストが近いからかな。俺はそれぐらいにしか考えていなかった。よくある話だからだ。


突然、マダムが真っ青な顔で入ってきた。

「皆さん、集まってください。」

マダムの顔色を見た生徒が不思議そうな顔をする。

「残念な事なんですが…」

そう前置きしてマダムはとんでもない事を言い始めた。

嘘…。

口々に悲鳴が上がる。

高等部演劇部が、廃部…?!

嘘だろ…?

マダムは泣きそうな顔で話を続けていた。しかし、最早聞いている人はいなかった。

誰も現実を受け入れる事は出来なかった。

はっとして佐竹先輩を見ると、唇を噛みながら、必死に耐えていた。


突然、部長が立った。

「先生、何でですか!?部員は高等部だけで規定人数に達しているはずです。それなのに、何で…。」

「高等部演劇部は在籍20名でした。そのうち、10名は3年生でした。今日、規定により、受験勉強のため、その10名は退部しました。」

「先生でもまだ10人…」

「今日、3名の退部届けが受理されました。」

「でも…」

「残りの7名ですが、その内3名の成績・学習態度が良くない、と判断され、冬季特別補習の対象となりました。そして、高等部演劇部には顧問がいない、という現状を考慮し、廃部という判断になりました。」

「そんな…」

部長は泣き崩れた。

高等部の特別補習対象生徒は部活動に所属する事が難しくなる。だから、退部と同じ扱いになってしまう。

部長は特別補習対象生徒がいた事を知らなかったらしい。

みんなもそろそろ限界だ。

俺も泣いた。

先生も泣いていた。

みんな泣いていた。

中高関係なく泣いていた。

…ふと佐竹先輩を見ると、泣いていなかった。

ただただ、静かに唇を噛んで耐えていた。

「佐竹先輩…。」

涙でぐしゃぐしゃになった俺を見て、先輩は不思議そうな顔で、

「お前は何で泣いてるんだ?お前は泣く必要ないだろ?」

と言った。そして、

「先生、中等部演劇部は継続していただけるんですよね?」

と、先生に確認して、

「お前は演劇を続ける事が出来るんだ、だからそんな顔をするな。役者は個人的感情を面に出したら駄目だからな。頑張れよ。それに俺らだって、演劇を続ける事は出来る。心配するな。」

と、珍しくカッコつけた。

「先輩らしくないです…。」

俺は泣き笑いの顔になった。


一番悔しいのは、先輩たちなのに…。



あれから1週間経った。

俺ら中等部は、続ける事が出来る、だけど先輩たちは、あと2週間で廃部…。

受け入れがたい事実だ。

しかし、みんな少しずつ受け入れ始めていた。


俺はいつまでも受け入れられなかった。

新たに部長になったのは、2年生の綾瀬先輩だった。3年生の先輩が、すぐに卒業しなくてはならない自分たちではなく2年生を、と言ったらしい。

当たり前の事だが、受け入れられなかった。俺は中等部代表の、3年生の渡部先輩に部長になって欲しかった。

渡部先輩にそう話すと、俺らはあと少しで演劇部を卒業するから、と言われた。


納得がいかなかったけど、俺も少しずつ受け入れ始めていた。

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