01 僕が脚本家もどきになるまで。
僕は憂鬱な気分で歩いていた。
僕は新米作家だ。
と、言っても、同人誌の上でのみ活動している売れない作家だが。
一年前、遊びに半分で投稿した小説が小さな賞を取ってしまったのだ。
それ以来、ちまちまとではあるが活動している。
この一年間、僕はこの事実をひたすらに隠してきた。
面倒なことに巻き込まれるのが嫌だから、必死に隠してきた。
だから、一部の友達にしか知られていない。
しかし、意外な所から情報は漏れていたようだ。
事の始まりは、僅か数分前である。
HRが終わり、僕が帰ろうとしたときだった。同じクラスの女子が話しかけてきた。
「羽島君、ちょっといい?」
「あ、うん…。」
彼女の名前は何だっけ…?
「えっと…山森さん?僕に、何の用かな?」
「…あのさ、これって、羽島君だよね…?」
彼女は一枚の紙を差し出した。
「…え!?」
そこには、真顔の僕がいた。
彼女が持っていたのは、僕の取った賞の発表記事のプリントアウトだった。
世間的にもたいして有名でないものだったので、僕は油断していた。それに、もう一年たったから、と安心していた。
しかし、油断できなかった。
しかも、写真を撮られていたなんて…。今の今まで知らなかった…。
「…ねぇ、これどこで見つけたの?」
「父の捨てた雑紙のなかに混じってたの。」
彼女の説明によると、彼女の父親は出版社に勤めていて、文学関係の話には詳しいらしい。
…全く、僕には迷惑な話である。
「それでね、羽島君にお願いがあるの。」
「え、何…?」
「私、演劇部で活動してるんだけど、今度やる劇の台本を書いてもらえないかな…?」
「ええ!?」
「今度の舞台で、オリジナルの劇をやりたいの。お願い、私たちを助けると思って…」
「そう言われても…」
僕の都合だってあるし、そんなに都合よく書けるかな…。
第一、僕が書くのは小説だ。台本ではない。
小説とはわけが違う。
「お願い、羽島君にしか頼めないの…。」
ズッキューン!!
そんな風に言われたら、僕断れないじゃないですか!
「…わかったよ。考えてみる。」
「本当!?ありがとう!」
―と、いった感じである。
しかし、僕も馬鹿だと思う。
あっさりと山森さんに負けてしまったのだから。
でも、今までこんな風に頼られたことないんだから、仕方ないか。
彼女いない歴=年齢だもん。
所詮、僕は負ける運命なのだから。
…しかし、テーマも決まっていないとは…。
本当に僕、大丈夫かなぁ…。
大変なことに巻き込まれてしまった気がする。




