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私、ワイバーンです。  作者: ムルモーマ
α. 番外編
87/87

元年 2

 バババババッ!!

 遠くの戦闘機から容赦なく銃弾が浴びせられる。

 一発一発が致命的な威力を誇るそれに対して先に宙を駆けるのはウスズミ。フェンリル、炎を操る事に長けるその幻獣の力で自らの熱を強く拡げ、身に届く前にその鉛を溶かし無力化しながら近付いていく。

 その後ろから僕が続き、戦闘機との距離が一定にまで近付いた時、ウスズミが叫んだ。

「もう自殺している! 自爆されるっ!」

 小さく舌打ちをした。防御壁を張りながら真直ぐにのみ突っ込んでくる戦闘機を避ける。ウスズミが炎を飛ばし、突っ込まれる戦闘機を先に爆発させた。

 ドォォンッ!!

 防御壁越しでも距離があっても衝撃が伝わる。

「本当に苛立つ」

 空にひゅるひゅるとその戦闘機の残骸が散って行く。その中に戦闘機を操縦していた智獣の肉体の破片も千切れてあった。

 洗脳される位なら自死を選ぶ。確かに予防策としては適している。僕や他の九尾、特に魂の操作に長ける幻獣達が智獣を洗脳して殺させた智獣の数はとても多い。直接的に殺した数よりももしかしたら多い程に。

 分かっていても簡単にそれを選べるものじゃないと思うけれど、もしかすると自死しているのではなく、自死させられているのかと思う。

 爆炎が収まる頃には目の前に戦闘機がまだまだやって来ていた。

 僕は心底溜息を吐きながらウスズミに語り掛けた。

「まだ余裕?」

「今はまだ、な」

 幻獣も数を減らしつつあった。


 炎の扱いに長ける幻獣は高速で飛来する銃弾をも溶かす。風の扱いに長ける幻獣は自在に天候までをも操り、雷の扱いに長ける幻獣はそれと連携して戦闘機に対しても的確に雷を落とす。肉体を最大まで強化すれば基本的に攻撃を受け付けなる程に硬くなり、魂の操作に長けた幻獣達は洗脳を仕掛けて同士討ちさせる事すら出来る。

 幻獣の力は未だ、人族の兵器よりも強く在れていた。ただ、如何せん幻獣は数が少な過ぎた。

 昼夜を問わずに断続的に攻め続けられるようになってからどれだけの時間が経ったのか、幻獣達は覚えていない。

 しかし持久戦に持ち込んだ幻獣達の判断は至極正しく、幻獣として生まれた幻獣達――魔獣としての前世を持たずに戦う事そのものに対して慣れていない幻獣達――はそのストレスに対して簡単に折れてしまった。もう、今となってはそんな幻獣達の生き残りは殆ど居ない。

 また、魔獣達はもう既に幻獣達が守るよりも散り散りになって逃げた方が生き残る可能性が高く、そしてまた智獣はもう魔獣を脅威として見做さなかった。

 どこで間違えたのだろうかという問いに対して、各々が考える答えは違った。

 洗脳の仕方をもっと上手くやれば智獣の兵器を再起不能な程に破壊する事が出来たはずだ。まだ技術がここまで届く前に徹底的に、無慈悲に智獣を滅する事が出来なかったのが敗因だ。ここまで智獣という種族が力を手にする事を予測出来なかった時点で負けていた。

 ただ、そんな事をどれだけ考えようと現状は変わらない。

 智獣はその積み重ねた叡智で月にまで足を降ろしたと言う。夜に小さく姿を現す、上空より遥か先にあるそれに、だ。

 また、地平線までを焦土にし、そしてその地一帯を未来永劫草木も生えないようにしてしまう爆弾も生み出されたとも知った。

 逃げ続けようとも自分達が放つ存在感は隠しきれるものではなく、そしてどれだけの智獣を殺しても、兵器を壊しても追って来る断続的な攻撃。それは手を替え品を替えながら、今も尚生き残り続けている強者中の強者たる幻獣に対して牙を近付けようとしている。

 兵器を作り出す場所はもう数えきれない程にあり、それぞれが固く守られている。反撃に出れば既に数の少ない自分達にも犠牲が出てしまう。

 外敵というものが存在せず、寿命も桁違いに長い幻獣はまた、子を為す事も簡単に出来なかった。特に、逃げながら、戦いながらは不可能に近かった。

 そして、する気も無いが、殺し過ぎた自分達には降伏の道も無い。

 現状。それは幻獣が絶滅するまで智獣達に抗い続けるという一本道。また、魔獣達は脅威とも見做されず、支配に怯えながらの落ちぶれた平穏に拘るしかない将来。

 未だ智獣の攻撃に対抗出来る力があるとは言え、幻獣達はその行き止まりに等しく絶望を抱いていた。


*****


 攻撃を殲滅してから、軽い休みに入った。

 休憩する皆の代わりに警戒に赴くのはハクエ、不死鳥だ。その細切れにされようとも平然と元の姿に戻る極めて特徴的な肉体は、逆に言えばそれに特別性を強く割いていて、他の能力は他の種に強く劣る。

 そのハクエは闇夜に紛れて、静かに飛ぶ。それは一度、空を見上げる視界を遮って行った。

「……」

「……」

 会話する事も大して無い。

 大好きなウスズミと居られる時間は、後どれだけあるだろうか? 毎日のように思う事だけれど、聞く事はしない。

 どんな事でも後ろ向きな事を口から出してしまったら、それが破滅への引き金になりそうで。

 空を見上げて続けていたウスズミがぽつりと呟いた。

「……月はいつでも綺麗だな」

「……そうだね」

「……」

「……」

 また、言葉が止まる。そんな中、リエンが言った。

「月にも、星そのものという存在が居るのだそうです。彼、もしくは彼女は、生き物の居ないと言われるその星から私達を見て、何を思うのでしょうね」

 まだこんな状況になる前にリエンから、おとぎ話の中でしか出て来ないような存在、この星そのものであるドラゴンに会った事があると聞いた事がある。

 ワイバーンとして生きていた頃に、衰えを感じて来た時期に小さく旅をした時に出会ったと。

 姿形も見なかったが気付けば自分が喋っている事に違和感もなく、そのドラゴンと少しの時間だけ会話をした。

 ただそれだけの話。

 幻獣の中でも会った事がある者は一匹たりとも知らないが、その話す口調にはどうしてか説得力があって信じられた。

 ウスズミが答えた。

「羨ましいか、貶している。そのどちらか、と答えるには色気が無さ過ぎるか」

 コハクが補足した。

「生き物がいる事に羨ましいか、その生き物が争いあっている事を貶しているか?」

 月には生き物が居ないだろうとは思えていた。目に見えるその月には雲が浮かぶ事もない。あの宙に浮かぶ星には、水すら無いのだから。

「そうだな。リエンはどう思うんだ?」

「……ずうっとこのドラゴンの周りを回っていて、近付きも遠ざかりもしない月は、いつからこのドラゴンを眺めていたのでしょうか。

 百年? 千年? 万年?

 それはドラゴンしか知らない事ですが、きっと遥か昔からあるのでしょう。

 その間ずっと水も無いその自身からこのドラゴンを眺めている。

 ……羨ましさや、妬ましさなど、とうに尽きているのではないかと」

「だったら何を思っていると?」

「今、私達が感じている感覚と似たようなものだと嬉しいなあ、と」

「……?」

「端的に言えば、羨ましさも妬ましさも尽きた後も眺めている内に感情移入していてくれると良いなあ、と思うのです。

 ……出来れば、私達に」

 ウスズミがそれを聞いて何かを言い掛けたのを、止めた。冷める事だったのだろう。

 それから暗い気持ちを吹き飛ばすかのように、ウスズミとリエンがほぼ同時に言った。

「どうしようか」

「どうしましょうか」

 どうすれば良かったのだろうという事はもう、言わない。

 守勢に甘んじているままで幻獣としての最期を迎える気など無い。

 結局のところ、有終の美を迎える為にいつ、捨て身の攻勢に出るのか。それを決めあぐねているだけだ。

 また智獣達もそれを恐れて、下手に強く攻勢には出て来ないように思えていた。

「…………」

 ただ、コハクはそれに対して何も言わなかった。

 ウスズミと居られる時間を出来るだけ延ばしていたいこの気持ちを、捨てたくなかった。

 結局、その後誰からも言葉が続く事は無かった。


*****


 ハクエが戻って来た。また智獣が攻めて来たのだろう。休息はそんなに取れていないが、

 休んでいた幻獣達が立ち上がり、そしてハクエが口を開こうとした時だった。

「ちょっと待ってくれないか?」

 それはここに居る幻獣の誰の声でもなかった。人族の声でも、ましてや魔獣の声でもなかった。

 誰が聞いても平均的だと思うようなその声はだからこそ特徴的で良く響いた。

 皆がその方を自然と振り向いた。そこには、今まで誰も見た事の無い生物が居た。

 外見としては智獣の中のドラゴニュートに似ていたが、放っている存在感は異質過ぎた。魔獣が幻獣に出会った時のような怖気づいてしまう程の強いプレッシャーはない。しかし、それは単に感じられていないだけだと思えた。次元が違うから感じられていないのだと。

 直前にそのドラゴンと言うものに対して会話していた幻獣達、でなくともすぐにそれがドラゴン……この星そのものだと気付いた。

 その異質さに一度会った事のあるリエンは、僅かながらも慣れを覚えていた。

 そのリエンが真っ先に聞いた。

「……何の用でしょうか?」

「頼みがあって来た」

「……頼み?」

 この星そのものであり、誰よりも強い力を持つ者が、何を?

「智獣の文明を滅ぼして欲しい」

 その頼みに驚かない者は居なかった。

 誰もがその次に口を開かない。開けないのかもしれないが、ドラゴンは続けた。

「智獣が、不死へと至る道を発明した。

 リエンが偶発的に為した事柄を、手順として確立して誰もが不死へと至れるようになった。

 それはもう各地に広まりつつあり、そしてまた、不死を終わらせる方法は作られていない」

「なっ、えっ、えぇ?」

 リエンが驚いた、同時に絶望した声を上げた。

「その末路は分かるだろう? 智獣も、そして魔獣も生まれた瞬間に発狂死する、そんな未来の始まりだ。

 その不死を終わらせる為には幻獣に転生するか、私が介入するしかない。

 そして幻獣に転生する方法は今、この瞬間に消え失せようとしている」

 幻獣のリーダーが言った。

「俺達がもう、智獣を滅ぼせるだけの力を持っている訳ではないのは知っているのですよね?」

「そうだ。

 だから、お前達を更に転生させる。智獣の文明を滅ぼせるだけの力を持てる程の新しい種族、この星の眷属として」

 それを聞いた途端。

「頼む! お願いします! あんな、あんな奴等一匹たりとも生かしちゃおけない!」

 幻獣の一匹が叫ぶように懇願していた。続いて何匹も。

 それは正に、地獄へと降りて来た蜘蛛の糸だった。

 コハクもその一匹だったが、冷静な幻獣達はドラゴンが滅ぼしてくれと頼んでいるものが智獣そのものではない事に気付いていた。

「智獣は滅ぼしまではさせない。滅ぼして欲しいのは不死に至る方法、強いてはそれを生み出せる智獣の文明だ」

「けれど、智獣達はっ」

「黙れ」

 一瞬にして静まり返る。

「私は。

 この星で起こる物事に介入しないと決めていた。この星の命は、私のような存在によって左右されるべきものではないと考えている。

 どれだけの命が死に絶えようと、種が絶滅しようと、それには必然的な結果がある。それを私のような存在が嗜好で捻じ曲げる事こそ愚行だ。

 目の当たりにするのはそれが何で寂しいが、時間が経てばその傷は癒えて来る。新たな種も芽吹いてくる。命は変わりながらも、続いていく。

 しかし、その命そのものが捻じ曲げられる事に対しては、未来永劫残り続けてしまう。そんな事は今まで無ければ、最悪な事に傷が癒えもしない。命を不当に壊し続ける。

 それに関しては流石に、私も黙っては居られなかった。

 分かるな?

 私はお前達を助けに来たのではない。結果的にはそうなるだろうが、利害が一致するからこそ、お前達の前に来た」

「利害、とは?」

「まず、頼みたいのは二つだ。

 不死に至る方法を実現するに至った智獣の文明の破壊。

 そして不死に至る方法の徹底的な根絶。

 どちらも、智獣を大量に殺す事になる。その躊躇いの無さを持っている事が私からの利益だ。

 お前達にとっては魔獣を守れる事、それだけで釣りが来るだろう?」

「……文明を滅ぼしてもまた、智獣は不死へと辿り着くのではないのでしょうか?」

「不死を生み出した為に、抗いようのない存在によって文明は滅ぼされた。それだけで十分だと思うが?」

「……そうですね」

「それで。

 お前達は使命を持った私が作る新たな種族、この星への眷属への転生を望むか?」

 大半が頷いた。

 ウスズミは、コハクが頷くのを見て、頷いた。

 リエンは皆が頷くのを見て、頷かなかった。ハクエもそれを見て頷かなかった。

「分かった。それでは転生を始める」


*****


 夜にやって来た戦闘機。中のパイロットが見たものは、数多の超巨大な生物だった。

 見た目はドラゴニュートに似ているが、見た目だけだ。それに、ドラゴニュートは翼など生やさない。

 そんなもの、報告ではどこにも居なかったはずだ。

「何だ、これ」

 宗教によって建造される巨大な像よりも下手したら大きいそれ。

 その中の一匹がすうう、と息を吸いだした。

「何だこれ!」

 操縦桿を握り、弾丸を発射する。発射される弾丸は振動が体に伝わる程に強く、しかしそれはその生物に対して傷一つ付けなかった。

 当たっているはずだ、当たっているはずだ! 鉄板をも貫く程のそれが、それが当たっても何も動じないなんて有り得ない!

「何だこれ!!??」

 その生物は口を閉じた。溜めを終えたのだ。嫌な予感しかしない。

 パイロットは機体を必死に傾けた。その次の瞬間、その生物は口を開いた。

 隣を、炎が駆け抜けて行った。この機体の数倍の太さの火柱が水平に、この戦闘機以上の速さで飛んで行く。振り向いてしまえば、その炎は地平線の先まで届いていた。

「…………」

 悟りと言うのはこんな時に感じるものなのだろう。

 何かが自分達には、そしてきっと幻獣達にも予想だにしない出来事が起きたのだ。そしてそれは、どうしようとも抗いようがない。

「ああ」

 続いているブレスが戦闘機を追って来ていた。自殺するか、それに身を委ねるか一瞬迷い、そしてその間に炎は戦闘機を蒸発させた。

 同様に戦闘機を一つ残らず塵にすると、その生物達は各地へと飛び立って行った。

 期待から恨みから殺意まで、様々な感情を抱きながら。


*****


 その場に、転生を望まなかった僅かな数匹と転生しつつも残ったウスズミ、それからドラゴンが残っていた。

 ドラゴンは空をじっと眺めていた。

 残っていたウスズミは銀色の鱗を持つ眷属として転生したものの、元のフェンリルのままの姿で居た。

 そのウスズミは聞いた。

「リエンはともかく、ハクエはどうして転生しなかったんだ?」

 ハクエは答えた。

「貴方が転生した理由と同じですよ。貴方も決めあぐねていた。けれども、共に過ごしてきたコハク……橙色のワイバーンの族長が転生すると決めて、貴方もそれと共に眷属として生きて行くと決めたのでは?」

「……図星だな」

 そのリエンは、ドラゴンの事を眺めていた。眺めている先には月がある。

 ウスズミとハクエが自分の事を見ている事に気付くと、リエンは振り向いた。

「……これから、どれだけの智獣が死ぬのでしょうね」

「さあ、な。智獣がどれだけ居るのかも知らないしな」

「……億は死ぬ」

 ドラゴンが呟いた。

「億……?」

 そんな単位を日常で使う事は無かったので、それがどれだけ大きいのか、桁を数えて確認した。

 そしてウスズミは、これから殺す数を想像して青褪めた。

 ドラゴンは空を眺め続けたまま、言った。

「……私は眠る事にする。私が決めた事だと言えど、見ているとそれを更に捻じ曲げてしまいそうだ」

 誰も言える事はなく、けれどリエンは言った。

「……お休みなさい」

「……お前達もな」

 そうしてドラゴンは去って行った。


*****


 夜が更け始めた。

 智獣はもう、全く攻めて来る気配が無かった。

 コハクが金色の鱗を輝かせながら戻って来た。近付いてくると元々の九尾の姿に変身して大きさを合わせた。

 この星そのものの眷属になるという事は、自身の核となるものをこの星に預けるという事に等しいと言う。

 だから、姿形を変える事さえも容易だと。

「ウスズミ、まだここに居たんだ」

「残った幻獣を守る役目は必要だろう」

「それもそうだね」

「それで、どうだった?」

「やっぱりね、何も知らない人族まで沢山殺そうとしても駄目だったよ。体が動かなくなる。

 少しならいけるんだけどね」

「……そうか。そうだな、俺は魔獣達を庇護する方に回るよ。

 絶滅してしまう魔獣も居るかもしれないからな、智獣達が最後に魔獣達を殺しにかかるかもしれないし、安住の地を作ってやらないとな」

「うん、幻獣達も含めてお願い」

「分かってる」

 月が次第に光を失って青空へと溶けて行く。

 智獣達の栄華の、その終わりが始まる。神話……智獣達が神というものを追い求めて造った話の中には良く、理想、高みを追い求めた末に神の怒りを受けて自滅する話があった。

 その通りにこれから智獣は栄華を失っていくのだ。

 これからどうなっていくのかは、誰も知らない。

 けれど。

 リエンはウスズミに言った。

「ウスズミさん」

「何だ?」

「私は先に逝くでしょうが、このドラゴンという星で誰よりも長く、永く生きて来た身として一つ、言っておこうと思います」

「……ああ」

「私は何度も死に、何度も生き返りました。

 余り覚えてはいないのですが、魂に内包する記憶が詰め込まれていくに連れて発狂する事もありました。

 ええ。私は生きている時間の中では、辛い事の方がとても多かったのです。

 けれど、それでも私はこう言います。

 ウスズミさんとコハク、ハクエ、ハジゾメ、ヴィオラ、様々な縁を結べた皆に会えて幸せでした」

 その言葉は短いながらも様々な含蓄があるように感じられた。

 誰よりも長く、永く生きて来たその経験から来る、重みのある言葉だ。

「……分かった。胸に大切にしまっておく」

「ありがとうございます。それでは、行きましょうか」

「そうだな、行こう」

 ウスズミはドラゴンへと変身し、そしてその巨体で辺りを見回して行った。

「……まず、どうするか」

「ああ、そうですね……。取り合えず、動きませんか?」

「そうするか」

 太陽が昇って来ていた。

 ただ。今となっては、その光は眩し過ぎた。

本当にお終い。

この5000年後の話が、ドラゴンの麓に見る空々です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人生という物をしんみりと考えさせられる話だった。 [一言] もはや族長達は番がいるだけのBLのような気がしてきた。 お互いの事が好きすぎる。
[一言] 完結おめでとうございます! 素敵な物語をありがとうございました。
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