表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、ワイバーンです。  作者: ムルモーマ
α. 番外編
79/87

誇り

今更の、ちょびっとだけの+α。

母の話。

 灰色の空。私が片目で最後に見る空はそんな、私の体色と似た色だった。

 多くの透明な水を含んだ雲の色。何でそんな色になるのか、どうしてそもそも水は透明なのに、雲は白いのか。結局、最後までそれは分からなかった。

 そんな雲とは別に、私の体はもう乾ききっていた。

 番は今、どうしているのだろう。考えるまでも無かった。私より一足先に、死んでしまっている。

 ……。

 …………。

 帰って来なかった。いつまで経っても。私が老いを感じる頃になっても。私が空を飛べなくなっても。私が何の役に立たなくなっても。

 私の番は帰って来なかった。

 残ったのは私の誇らしい、たった一匹、最後まで生き残った娘だけだった。

 生まれた時から変わった娘だった。妙に賢く、妙に強かった。

 ただ力が強かった兄とは違い、弱かったが芯があった兄とも違い、ただ狡かった兄とも違い、何の変わった所の無かった兄とも違い、帰って来なかった事が最も残念だった、心も体も強かった姉とも違かった。

 そして、今まで生まれてきた、死んでいったどのワイバーンとも違かった。

 生き残るかどうかは微妙だと思っていた。

 けれど、最後まで生き残ったのはその末娘だけだった。

 強いだけじゃなく、変わっている程の賢さがあったから、生き延びたのだろう。


 死ぬ間際の今でも、あの時の事は鮮明だった。交尾の時の番の息遣い、肌の感触、雄の猛り具合、絶え間ない、何よりも満たされる悦び。

 子が腹の中で育っていく期待の感覚。産んだ時の何とも言い難い嬉しさ。

 生まれ、育っていく時の混ざった感情。

 崖から落ちて行く兄。対称的に思い切り空に飛んだ兄。

 二足の犬に負けて、行ってしまった番。

 友を喪って何度も泣き叫んだ、末の妹。正直意外だった、生き残った末の兄と、生き残らなかった姉。

 たった一度きりの子育て。その時はまだ、三匹、生き残っていた。

 そして、番と死んでしまった兄。ただ、番も得ずに死んでしまった兄。

 片目を失い、一時期どこかへ消え、いつの間にか帰って来た時には、その目を何故か取り戻していた、唯一生き残った末の妹。

 そして、族長の番の一匹とまでなった末の妹。

 ……私は、血を繋ぐ事が出来た。辛うじて一匹だけを繋いだ末の兄と、族長と何度も子作りをした末の妹。私はこれから死のうとも、私の全てが無くなる訳じゃない。

 私は、繋がって行く。番も、死んでしまったのだろうとは言え、番も繋がって行ったのだ。

 私は、父と母の血を受け継いでも、生き残ってもたった一度しか子を作る事が出来なくとも、私は、消える事は無かった。

 たった六匹しか産めず、そして試練が余計に一回あっても、受け継いだ血が生き延びた。娘は生き延びてくれた。更に、族長の番とまでなった。

 それは、誇りだ。私にとって、何よりも大きい誇りだ。

 それだけで私は、これからも頑張れる。


 死んだ後、私はどうなるのか。どこかへ還るのだと思う。私の肉体は土に還り、木々を育てる。育った木々は獣に食われ、それを私達が食べる。巡り巡る。

 そして肉体とは違う、私の何かはまた、土とは違うどこかへ還るのだと、体のどこかが知っているような気がした。

 どこかへ。

 死んでいった皆が、誰しもが平等にそのどこかへ行くのだと。

 きっと、それも肉体と同じように巡り巡る。番とも、もしかしたら会えるかもしれない。もしかしたらまた、巡った先で番になれるかもしれない。

 そして、私が死んだ後も私の血は生き続ける。

 ずっと、ずっと、私が生きた時間何て比べものにならない位に。

 だから、もう、私は何も要らない。血を残してくれた末の兄と妹には感謝しかない。

 出来れば、また番に会いたかったとは思うけれど。

 願えるのなら、私が還った後また、番と会える事を願いたい。

 ……。

 …………。

 ………………………。

 空を見上げた。相も変わらず、灰色の曇り空だった。

 私が森の中に入れば、もうこの曇天だけの空は見れない。

 それは誇りだった。

一応、まだ書ける話はある事はあるけど、(今自分が書いてたり、この先書く話が芳しくない事がずっと続かない限り)書かないと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ