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第七話『愛を賭けた死闘』


遅くなりました、次話投稿です。


設定をぶち壊す桐佳の活躍に期待してください。



あれから時が過ぎ約束の日、僕たちは第三アリーナのフィールドに立っていた。


これは俺たちの問題だーとかアルマが言ってアリーナ内は僕とアルマとリースとアクアと咲耶の五人だけ、これだけ広い場所でも五人となればすごく寂しい。リースとアクアは仮にもお姫様なんだからお付きの人とか連れてこないわけ?。


「桐佳さーん!、頑張ってくださーい!。」


「瞬殺されないことを祈ってるわー。」


「怪我だけはしないでよねー。」


観客席から手を振るリースに手を振り返す。


咲耶、戦闘で怪我をしないほうが無理な話だよ。あとアクア、試合前に物騒なこと言わないでほしいな。


「桐佳ー、こっち向いてくれぇぇ!!。」


「試合するんだから嫌でも向くよっ!。」


「やっべ、嫌でも向かれるなんて幸せすぎる!。聞いたか咲耶!?。」


「あーはいはい、よかったね。」


これには咲耶も呆れ顔、勿論僕も。


今から人生を賭けた戦いをしようっていうのに酷い雰囲気だ。なんかこう、ふわふわした感じ?。


なので僕はその中でも雰囲気に飲まれず準備体操を始める。準備体操は運動する前の必要不可欠な運動だからね。


「あ、そうだ。アルマ、もし僕が勝ったらなにをしてくれるの?。自分だけ報酬有りの賭け事をするなんて図々しいじゃない?。」


「へ?。」


口を開けて固まるアルマ、もしかして。


「…考えてなかった?。」


トーンを落として質問するとアルマは額に汗を垂らし首を素早く横に振る。


はぁ、やっぱ考えてなかったんだね。自分のことばっかりで人のことまで考慮できない、アルマの悪いところだよ。


「い、いや!、えっと…その。…そうだ!、俺をやる!!。」


「要らないよっ!!。」


「即答かよっ!?。」


仕方ない、あとで考えよう。



「まるで痴話喧嘩みたいねー。」


「男同士だけれど。」


男同士は痴話喧嘩なんてしません、やるとすれば今からする殴り合い。



準備体操を終えた後ようやくアルマを直視する。


「準備体操は終えたかい?。」


「そりゃあもう、運動後の分までやっちゃったくらいだよ。」




「…にしても久しぶりだな。」


「なにが?。」


「一年ときの夏以来か、こうして戦いの地で向かい合うのは。」


一年のときの夏以来?。


パッと記憶から蘇る。


「あー、10秒で体力切れで僕が負けたときか。あれ?、あれっきりだっけ?。」


一年の夏、六月の上旬あたりでの模擬戦、僕とアルマが対決したんだけど炎天下の太陽に体力が削りに削られて一撃も食らわずに不戦敗したんだっけ。今となっては黒歴史であり思い出深かった出来事だった気がする。


「あぁ、あれで俺はお前には戦いを挑まなくなったんだよ。戦う意味がないと思ってな。」


それは多分、僕が弱すぎるのが原因だ。


「今回も断れる前提で頼んだんだけどな、意外な返答でびっくりしちまったよ。」


「うっ。」


…言えない。話を聞いてなかったなんて口が裂けても言えないよ。




「ふっ!。」


精神を研ぎ澄まして体中に魔力を流し込んだのを感じとる。身体強化、しかも上級魔術の。


拳を固めボクシングのポーズを真似るように構える。


アルマの雰囲気が一気に変わった。ふざけてる一面が一切消えて神経をフルに活かしている。


いきなり本気モードってことですか。


「やるからには俺は勝ちを狙いにいく、それがダチを殴って得た勝利でも。俺を奮い立たせた罪は重い、一切躊躇もなく気を緩ませる余地与えず、倒すぜ。」


情状酌量の余地なしってことね。アルマ、真面目なときはかっこいいのに勿体ないよね。


それにしてもあの目は獣の物だ。獣が一度目をつけた動物を追い続ける狩人の目、そして今僕はその狩人に目をつけられた。



ま、逃げる気なんか更々ないんだけど。


僕は特に武器がないので身を沈めてアルマを見る。


固唾を飲み頬からは自然と汗が垂れていた。


さぁっ…て、どう攻めるもんかね。


「いいぜ桐佳、攻めてきても。」


人差し指から薬指の四指を曲げ手招きを行ってくる。表情は至って真面目だけどなにか隠してるに違いない。迂闊に攻め込むのは得策ではないな。なら、


逆に僕が手招く。そもそも近接では小指でも倒させるのは明白、かといって遠距離だけも簡単に距離を詰められてしまう。相手は獣人、スピードど反射神経は特化能力、今は様子見しかないよね。


「僕は様子」


「喋ってる暇はないぜ。」


「っ!?。」



が神速。僕は考える暇なく身を右に投げ出した。


〝ブゥン!〟と元いた場所にアルマのハイキックが空を裂いた。


リースを上回る速さに感心してる場合じゃない、体勢を立て直し次の動作、左の片手を折り手のひらを内側に向け体を少し右に倒す。


これは先読み、アルマの体勢や性格を瞬時に読み取って計算。スピードは速いけど神速はスピードを気にしすぎて戦いを正確に行えなくなるという欠点がある。攻撃するのは獣の本能だろう。


それ故に攻撃が読みやすい。


案の定アルマは右ストレートを放ってきて僕の左腕を削るようにして通りすぎる。


「!?。」


信じられない光景に驚きを隠せないアルマ。


僕は左腕を外側に弾きアルマの体勢を崩しすぐさま脇を絞め右肩を前に出す、そして直前で弾丸を発砲するように肘をアルマの腹部に打ち込んだ。



…いや、失敗、左手で防がれた。


だが多少のダメージにはなっただろう。アルマの体は後ろに飛ぶも受け身をとられ後退。


「イツツ…、案外いいのもらっちまたったな。つかおい!、桐佳ってこんな強かったっけか!?。」


お腹を押さえつつ納得できない表情。


「失礼だなぁ、僕は体力がないだけでまったく戦えないわけじゃないんだよ?。」


「その体力がない設定はどこに行った!?。」


「さぁね、どこに行ったのか探すのがアルマの仕事だよ。」


『探す』の単語に首を傾げるアルマ。


僕を知ってる人なら不思議に思うのは当然、さっきの回避だって昔の僕なら発作を起こすレベル、とても戦闘を続行する体力なんてない。




けどねアルマ、僕は打開策を見つけたんだ。


アルマに見えないように右手に持っている箱を開け箱の中身を変える。



そう、これが昨日アクアからもらった最高のアイテム、スペシャルウェポン。





―――――





~昨日~



「え、これって……麻雀牌?。」


アクアに渡された物、それは紛れもない麻雀牌だった、あと九つつの窪み(くぼ)が入った黒の箱の二つ。


えっと、なんで麻雀牌?、しかも数も少ない。


萬子の一萬、二萬、三萬が三つずつ。筒子も三つずつ一筒、二筒、三筒。索子も一索、二索、三索も三つずつ、あとは白発中の三元牌が三つずつの計36個。四から九、風牌が入っていない。


「如月、あんた今なんで麻雀牌?って思ったでしょ。」


「うん、思った。」


「無理もないわね、私だって驚いたし。」


「?、どういうこと?。」


「その麻雀牌は風音さんからもらった牌なのよ。一ヶ月前の模擬戦のお礼でね。で、どの道具に術式を組もうか悩んでいたときにこれを使ったのよ。正直術式を組めたときは目を疑ったわ。」


両手を上げ首を横に振りながら鼻で笑う。


僕はケースに入っていた一萬を手に取る。重さは変わらないね、魔力が付加されてるだけか。


「短い時間だったけど結構力作よ、渡すのに少し躊躇ったほどね。」


「うん、本当にありがとうアクア!。」



「……。」


あれ、顔逸らされちゃった。どうしたんだろ?。


感謝されたことに赤くなってるのかな、あはは。



「で、どうやって使うのこれ。」


いつまでもこうしているのも空気が悪くなるからね、本題に移させてもらうよ、時間も押してきてるし。


アクアはすぐに察し表情をもどし振り返り僕から箱を取り上げ僕の胸元に箱を押し込んできた。


「えぇっ!?、なにやってって貫通した!?。」


気がつけば先程の箱は胸元を貫通して消え去ってしまった。


「案ずることないわ、所有者の契約を行っただけだから。ほら、さっきの箱をイメージしてみなさい、きっと向こうも応えてくれるから。」


な、なるほど、随分とハラハラした契約方法だ。


とにかく、今はアクアの言う通りにしよう。僕は胸に手を当て箱を強くイメージする。


すると胸元に空間ができ箱が出てきた。


「わわっ、キャッチ!。」


武器の召喚はよく見たことがあったけど特殊なアイテムを空間から取り出すのは初めて、しかも初見が自分自身。



「さ、じゃあ説明するわよ。一回しか言わないからよく聞くように。」


うんと頷く。


アクアは再び箱とケースを回収する。


「これは言わば人気ゲームの狩猟笛みたいなものね。」


「特定条件での能力値アップってこと?。」


「えぇ。でその条件が面子か役作りってこと。」


「な、なるほど。」



ここで麻雀を知らない人のための面子の説明をするよ。役は追々で。


まず面子っていうのは牌の組み合わせのことを言うんだ。麻雀はこの組み合わせを決められた数に揃えて役を作るの。特殊な役じゃなければ大方は三枚組み。


順子シュンツは同種の牌が連続した形で階段状だね。主に使われるんじゃないかな?。


対子トイツは同種の牌や字牌が二つ揃った形のことで雀頭ジャントウ、役の頭になるときや特殊な役を作るときに使うんだ。


刻子コーツは対子に一つ追加された形でこれは字牌でも一つの組み合わせになる僕が好きな形だね。


搭子ターツは順子があと一つで揃うってときの二枚のことを言うんだ。あと一枚が二つの両面待ちだった場合は両面搭子リャンメンターツって言うんだって。



「もういいわよ、槓子カンツ辺搭子ペンターツ辺りは設定してないから。」


「それ以前に四枚ないしね。」


「暇になったら設定するわ。それで今言った面子に分かれて効果が変わるわ、把握しきれてないけど。」


………ん?、今とんでもないこと暴露しなかった彼女。把握しきれてないって…


「…要は実験体が僕、と。」


肩を落とし重い溜め息を吐く。




と、なにか思い出したようにアクアが左手を右手の平にポンと置く。


「そういえば白発中の三元牌のどれかを刻子にしたとき体力が上昇したわ。」


体力が上昇するのは嬉しいけどなんだかあやふやだなぁ…。



僕は適当に中を三つケースから取り多分これを差し込むんじゃないかと思う箱の溝に三つ差し込む。



「……?、なにも変わった感じがしないんだけど。」


体を触ったり動いてみるけど至って普通。故障してるの?。


「当たり前よ、箱を自分の中に入れなきゃ術式が発動しないように設定しているんだもの。」


術式って複雑なんだなと感心しながら言われた通りに箱を胸に押し込む。


「んっ。」


うぅ…、なんとも言えないこそばゆさ。変な声出しちゃったよ。



と、〝ドクン〟と心臓が高鳴り胸が熱くなる。アドレナリンが沸き上がって興奮するかのように。


「はぁ…、はぁ…。」


やばい、立ってられない。僕はその場にへたり込み息を荒げる。


「相も変わらずエッロいわねあんた。」


手で口を押さえながら若干の引き顔で見下ろしてくるアクア。べ、別にそんなやらしい声上げてないと思うよ…。アルマが聞いたら喜びそうだけど。


「まぁ問題ないわ、今は体が術式に慣れてないだけですぐに慣れる…と思うわ。」


「はぁ…、なんで!、確信がもてないの!?。」


「うっさい、こちらと事情があるのよ。ちなみにその中が体力上昇だから、早く慣れなさいよ?。」


「これだったの!?。」





―――――





あの後僕は一人で慣れるために変な声を喘ぎながら修業に励んでようやく物にすることができたんだ。今日の昼休みに!。


結局慣れるだけで九割持っていったから面子や役での効果を調べることができなかった。知っているのは三元牌だけ。


箱の中身は中と白が刻子の状態で差し込まれていた。



僕は箱の口を閉じ背中から入れる。



体に術式が通ってるのがわかる。


よし、今ので体力と防御力が高まった。



(雰囲気が変わった…?、魔術か?。)



アルマの眉が多少動いた。…警戒されたよね、そりゃ。



「なら、うらぁ!!。」


アルマが地を強く蹴ると地面が抉れ複数の石が浮かぶ。それを目にも止まらぬ速さの回し蹴りで飛ばしてきた。速っ!。


「っ!。」


右足を前に出し体を右に落とし回避。細かい礫が腹部に当たるが大したダメージじゃない、問題ない。問題なのは


「らぁっ!!。」


神速で接近してきて右サイドブローを仕掛けてきたアルマのほうだ。


体勢を立て直せてない状態じゃ回避は厳しい。



けど僕は無理に体を捻り右手を地に着けて右に側転、その際に左足でアルマの右拳を弾いた。


「なっ!?、側転かよ!?。」


体勢を崩したアルマに着地した後身を沈め右肘を折りエルボーを打ち込む。


この打撃が通ったら体当たりで押して重い一撃を打ち込もう。



が、そのとき僕は気づいていなかった、アルマの口元が吊り上がっていたことを。



気づいたときには打ち込んだはずのアルマが消え僕の体が前方に飛んでいた。


(…ぐっ!、神速…じゃない。これは縮地!?。)


地面を転がり静止したところで立ち上がる。



『縮地』。神速や空間転移とは違く一瞬の跳躍。足下と地面の間に術式を組んだ見えない球体型の魔力を生成しそれを踏めば爆発的なスピードで移動できるという応用の魔術。


応用といっても使用はできるが安定ができなく数多くの人が途中で挫折するけれどアルマはいとも簡単に行った。実体を残す幻影まで残すことができるほどの速さで。



失態。アルマが縮地を使えることを知らなかった僕のミスだ。


軽く吐血しながらも息を調える。


「ちょ、アルマ!、あんたいつの間に縮地なんか習得したのよ!?。」


咲耶も知らなかったみたい。観客席から立ち上がり身を乗り出す。


それに対してアルマは首の骨を鳴らしながら口元を吊り上げる。


「んなもん昔から覚えてたぜ。ただ桐佳と本気で戦うときまで敢えて使わなかったんだよ、手の内は明かさない質なんでね。」


はは、なるほど。嬉しいよアルマ。



「にしてもさっきの一撃で沈まないとは驚いた。体力とは別に防御も強化したのか。」


「さぁどうだろうね、単に直撃を避けたんじゃないかな。」


否、そんなわけがない。


アルマの一撃は僕の中心をきっちり捉えてきてた、しかも注意を払っていない無防備な状態で。


白で防御を強化しておいたから奇跡的に骨も折れずに済んだけどもし強化をしていなかったら今頃僕の上半身は機能していなかっただろう。そう考えただけでも怖気が走る。



意識を保ち焦点をアルマに移す。


(まずいなぁ、圧倒的に戦力差が違う。)


守っていただけならいつかはジリ貧になるしな、アルマに攻撃の余地を与えなければいいんだ。ここは無理をしてでも攻め込む。


背中から空間を出現させ箱を掴み開け残りの三つの溝に一~三索を順子の形で入れる。その後箱を閉じ背中へもどす。


「なるほどな、それがお前の動力か。案外面白い仕組みになってるんだな。」


「!?。」


声がかかってきた後ろを振り返ると僕の真後ろにアルマが腕を組んで興味深そうに空間を見ていた。


人間の本能なのだろうか、危険を察知した途端後退してしまった。


「あらら…、バレちゃったか。」


「見るからにお前じゃない、あの中の三人の誰かが作った魔道具だな。」


「アクアが作ってくれたんだよ。」


いくよと呟きアルマとの距離を詰める。


「はぁっ!!。」


受け止められる前提での右裏拳。


案の定受け止められるが構わず左拳を固めて腹部に打ち込む。


アルマは拳を弾こうと右手を腹部に移す。


が、僕は拳を寸止め、左足を前に一歩出し再び拳を横腹を殴る。


「ぐっ、いいパンチだ。」


横腹を押さえながら後退していくが逃がさない、ポケットにあるものを取り出し投げる。


「飛針ってマジかよ!?。くそっ!。」


飛針、名の通りの飛ばすような針で結構漫画に出てくる暗殺者なんかが使うんじゃないかな。


長さは短いのもあればお箸くらい長いのもある、僕が投げたのは指くらいの長さ。


って今は呑気に説明してる場合じゃない、無理な体勢で飛針を弾いたアルマへの追い打ちだ。



距離を詰めながら体に魔力を通し左拳に凝縮、属性を付加させ



「氷河砲拳!!。」


アルマの腹部に強く打ち込んだ。





◆◆◆◆◆





氷河砲拳を打ち込み大きく後ろに飛んでいくアルマを見て観客席の三人は大きく目を見開いていた。


「あの砲拳、あれは私の技です!。」


「属性を付加させたのね。…というかあいつってあんな戦えたのね、まるで別人のようだわ。」


「一年近く一緒に過ごしてたけど戦ってるのは私も初めて見た。」


あの咲耶をも驚かせたほどの衝撃。無理もない、学園内最弱と言われていた存在が大会準優勝者を殴り飛ばしたのだ、平気な顔をしているほうが10倍難しい。


「…やっぱり、桐佳さんも男の子さんなんですよね。」


「そうね、戦いに望む姿勢が男らしいって言ったほうがいいかしら。」


今まで見せなかった桐佳の実力と勇ましさ、その態度がリースに憧れを生じさせた。そう隣にいる咲耶は感じとった。



「…でもまずいな。」


「?、なにがですか?。」


顎に手を当て深刻そうにする咲耶に対してリースは状況がわからず首を傾げる。


「アルマはまだ五割も力を出していないの。」


「……え?。」


「…やはり咲耶先輩も気づいていましたか。」


「え?え?、アクアさんまで?。いったいどういうことですか!?。」


「おそらく、桐佳との試合を楽しみたいがためにわざと遊んでいるんだと思う。質の悪いことをしてくれるわね。」


「!。そろそろ仕掛けてくるわよ!。」


「話を聞いてくださいよぉ~!。」





◆◆◆◆◆





おかしい、アルマへの攻撃が通り過ぎている。普通じゃありえない。


強化をしていないとはいえ僕がアルマに打ち込んでいた不意打ちはすべて防がれていた。あれがアルマの本当の実力、一切の隙も見せない反射神経の持ち主。


一~三索の順子は機動力の上昇。いや、小回りが利くようにしただけで届かない一撃が届くものなのか?。


胸の中でもやもやが晴れない。



「おうおう、リース姫の技を属性付加で真似するとは大したコピー能力だな。マジで止めちまったよ。」


砂ぼこりが舞う中で一つの影がゆらりと浮かび上がる。


「…あれを食らってけろっとしてるなんてね。ようやく力を出してきたんじゃない?。」


舞い上がった砂ぼこりの中からアルマが出てくる。表情は何事もなかったような顔。


けれど左腕は赤く腫れ上がっていた。


「気のせいじゃないか?。」


僕が言ってきたようにアルマも首を傾けて意地悪く笑う。なんだかこの子に馬鹿にされるのはとんでもなくむかつく。


…うん、落ち着こう、アルマ相手にむきになることなんてないんだ。


「さって、もう十分か。」


拳を固め構える。僕も警戒を強め身を沈める。



「お前はもう俺に攻撃を通すことはできないぜ。」



さぁ、踏ん張りどころだ。


僕が勝つための唯一の勝算、勝ち筋。


耐えて耐えなければ生まれない逆転の一手なんだ。


もう軽いダメージはいらない、狙うは一撃、一撃で仕留める。獣を撃ち殺す狩人のように。


好機、逸すべからず。今は全力で守りを固めよう。





これは、人生を賭けたギャンブル。




ア「あんた、最弱設定どこにいったのよ。」


桐「う…。ま、まぁあのアイテムがなければってことだよ。」


咲「でも、メインキャラ内では最弱ね。」


桐「いいの、僕は強くなくて。主人公が最初から強いなんて卑怯じゃないか。ねぇ、リース。」


リ「カッコいいと思いますよ!!。」


桐「……。」


ア「哀れねぇー。」


咲「良い義妹を持ったね桐佳。」



アル「ハッ!。ってことは俺は桐佳の兄貴ってことか!?。」


桐「どうしてそうなった!?。」




次回『愛のムチ』

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