第二十二話『会議と言う名の賭博』
大会後のふわふわした時間。極普通の会話、日常をお送りします。
今回の話は軽く流すイメージでどうぞ。
「はーい、会議を始めたいと思いまーす」
「おじい家帰んないの?」
「僕が帰っちゃったら誰が欅ちゃんたちの指導をするんだい?」
「うぅぅ、まだ身体中が痛い…」
「魔力を放出しすぎたのよ。慣れるまであと何回倒れるか」
「回復力は馬鹿みたいに上昇したから死にはしない…かな」
「はいそこ、静かにー」
おじいに注意され黙るお兄ちゃんとアクア様。
「というかお兄ちゃんチート過ぎない?」
「そんなことないよ。スキルがあるだけで実力はないんだから」
「如月と如月妹が合体すれば恐いものなしなんじゃないかしら」
「あー、そのことなんだけどあたししばらくは戦えませんから」
首を傾げるアクア様。
「恐くなっちゃったんですよ、自分の力が。殺す感覚が嫌に残っちゃって、あはは」
「鬼が抜け只の女の子になったってわけね。それはそれでいいんじゃないかしら、第二の人生みたいで」
「そうそう。戦闘のスタイルも変えてみるとかさ。相手にはディスペル的な魔術も使ってくるかもしれないし、ダメージの蓄積は避けたほうがいいよ」
「爺、その牌よ、ロン」
「……え?」
「12000の三本場は12900、終了よ」
「おじい~、また放銃?」
「うぅぅ、アクアちゃん完全に僕狙ってるでしょー」
「さぁ、どうかしら」
「アクアが断トツでトップかー、麻雀でも強すぎだよ」
「基礎固めの魔王と呼ばれることはあるってことだ。メンタンピン一盃口ドラ一、綺麗な手だよ」
「最強のデジタル打ちだね」
「確率よ確率、オカルトなんかに賭けても無駄。不合理な打ち方じゃ今の時代生きていけないわよ?」
「まぁ、デジタル打ちなアクア様とあたしが実例よね」
「オカルトでごめんなさい…」
「お爺ちゃんよりかはオカルト染みてないけど爆発力がないとダメだなー」
「そうね、最低満貫よね。最早オカルトの塊じゃない」
オカルトの塊!? とショックを受けて点を分け合うお兄ちゃん。
その中であたしはおじいに問いかける。
「さ、おじい。勝ったんだからお兄ちゃんのスキルを教えてよ。お兄ちゃんも知りたいよね」
「あ、うん。気になる気になる」
腕を組み唸るが観念しわかったと言う。
「じゃあ僕が知っている限りで説明するよ」
―――――
・超再生能力 手足が切れてもすぐに復活する。
・高速治癒 傷の回復力が早くなる。
・血能力1 寿命が減ります。
・血能力2 身体強化をする度寿命が減ります。
・血能力3 男性ホルモンが減ります。
・血能力4 血を物質変換出来ます。
・吸収 相手の血を飲むことによって寿命が延びます。
「少なっ! 絶対もっとあるよね!?」
「全部教えたら面白みに欠けない?」
「早速矛盾してるよこの人!?」
知ってる限り話す話しはどこにいったんだ。お兄ちゃん白目むいてるよ。
「矛盾もなにも僕は知ってる限りを話すと言った。しかし知らないと言えば何一つ話さなくていいということになる。よって僕が応用の情報を言わないことは可能ッ!!」
(((うっあぁぁぁぁぁ。大人気な……)))
「あーあー、聞こえないよー」
はぁ、もういいや。多少訊けただけでも良しとしよう。
…それにしても。
「寿命が戻るのはわかったんだけど、男性ホルモンは戻ってこないの?」
「僕が女の子になっても変わらないんじゃないかな」
いやいやそういう問題じゃないからね。
「実は僕も昔女体化しまして」
「嘘っ!? どうだったの?」
「全力で泣いたね…」
あ、あー。
おじいは黒歴史を思い出したようで卓に突っ伏して泣き始めた。
「ぐすっ…、まぁでも風音さんが男性ホルモンを注入してくれたおかげで戻れたけどね」
「流石としか言えないわね」
謎の塊だもん、風音は。
牌を散らせ規定数並べ山を作りサイコロを振る。親はあたしか。
「風音さんと言えばあの大会って僕を覚醒させる為に催したんだよね」
「半分はね。あとはリースちゃんの安定、サラちゃんの狂気を防ぐ為、人材を探す為が半分。欅ちゃんは予定には入れてなかったんだ」
風音の運命予定にあたしが入っていなかった?
まさか捨てられた?
「違う違う。風音さんじゃ欅ちゃんを救えなかったんだ」
「あたしを?」
「風音さんの予定って自分が手を出せることでしか組めないんだ。考えてもみて、リースちゃんの暴走を止められたのも試合を組んだからだし、サラちゃんが心を開いたのだってわざわざカードバトルをさせてもらったからだし、そもそも人材を探す為に大会を催したりね。桐佳ちゃんの覚醒の芽を生やしたのも風音さんのおかげ。全部何かしら自分が入っているんだ」
お兄ちゃんとあたしは確かにと目を合わせる。
「でもなんであたしは手を出せなかったの?」
「『家族の問題』だからさ」
おじいの発言に目を見開き硬直する。意外だったんだ。
「だから家族の問題は家族でどうにかしようって、桐佳ちゃんがね」
お兄ちゃんがあははと照れ臭そうに笑う。
そんなお兄ちゃんを見てあたしも釣られて笑う。
長かったんだ、普通の人生を築くに。これが日常なんだな。
不安を抱えないで生きていけることって素晴らしいなって。
「お兄ちゃん、ありがと」
「も、もーやめてよー。恥ずかしいから~」
真っ赤になり縮こまるお兄ちゃんにあたしとおじいが頭を叩く。
お兄ちゃん、やっぱ可愛いな。
「ツモ、12000・6000」
と、第三者から冷たい風。あたしたちは一瞬にして凍りつく。
「いいわねあんたたちー、飛ばし甲斐がありそうねー」
『す、すいません…』
―――――
「大会が終わって一息つきたい状態なのに未来を知っていると鬱になるわね」
「どうやってみんなに説明しようかな」
「いいんじゃないの? あたしたちと同じ感じで。あ、それポン」
→八筒
「あたしはどうやって戦おうかな」
「僕も血の力に慣れなきゃね。ね、欅、どうせなら一緒に鍛練しようよ!」
「いいけど、無駄に嬉しそうだね」
あたしが言うと頬を掻きながら恥ずかしそうに俯くお兄ちゃん。
「いや、だってようやく欅と…本当に仲良くなれると言いますか……嬉しいなぁって。僕冷たく接してたし、寂しくて苦しかっただろうし。…うーん、言葉に表しにくいなって…わっ!? 欅!? アクアまで!?」
「可愛すぎだよお兄ちゃん! もういっそのこと女体化したほうがいいって!」
「やばいわ、如月家に飼いたいわー。いけない血に目覚めそう」
「桐佳ちゃんは愛でやすいよね」
お兄ちゃんに振り解かれる。
なんだろ、胸のあたりが凄く温かい。嬉しいんだ。
「と、とにかく頑張ろうね!」
「あはは、お兄ちゃんもね。ロン」
手牌を倒す。油断したねお兄ちゃん。
「混一色ドラ一、7700」
「うぅ~」
ありがとう、お兄ちゃん。
◆◆◆◆◆
「ツモ、ピンヅモ、700・400」
「あ、僕の親がぁ!」
「残念だったわね」
山を崩しかき混ぜ再び山を作る。
「あぁ、そうだ。如月、あの牌直ったわ。大した損傷はなかったみたいだから」
そう言って如月に牌と箱を返す。
「ありがとう、アクアには助けてもらってばっかりだね。今度お返しさせて」
「そうね…、なら暇な日手伝ってもらえるかしら。仕事が溜まってるのよ」
「うん、わかった。それチー」
→二三四筒
「あたしも手伝いしなきゃな」
「トーマくんの?」
「な、なんでトーマが出てくんのよ!?」
「はは、欅はわかりやすいなぁ。ロン」
見事に誘導されたわね、危険牌を躊躇い無しに打つとは。
タンヤオドラドラ、取られた分全部返したか。
赤くなる如月妹は立ち上がり三分の一スケール陰を引き抜き構える。
「落ち着いて欅ちゃん、部屋が血に染まるから」
爺の説得によりなんとか落ち着き席に座る。
溜め息を吐く如月を横目で見る私はあることを考え口元を吊り上げる。
「あの子、あげてもいいのよ? 好きなんでしょ?」
「へ!? あああアクア様なにを……ぅぅ、…はい」
否定をするが相手が私ということで観念し俯き肯定する。
「一番の存在意義か、大した魔界人になったじゃない、あの子」
遠目で空を見る。
「欅ちゃんももうそんな歳かぁ、短かったな。若い内に恋をすることはいいことだよ」
「そもそもどうしてトーマくんが好きになったの? お爺ちゃん知りたいなぁ」
「……どう、して。…支え、かな。ってにやにやしないでよ!」
目を細めてにやける私たちに如月妹がもういいとそっぽを向く。
にしても、『支え』ねぇ。
姉としては嬉しいことなんだろうけど素直に喜べないわね。支えられた覚えがないから。
あの子、昔から事務作業してる私の近くで寝てるかゲームしてるかで、干渉したと思えば好きだとほざくだけ。役にたたなかったわね。
ま、それでも居てくれただけ励みになったのかしら。如月妹もそう思ってるのかしら。
「じゃあ逆に訊くけどおじいはおばあのどこに惹かれたのよ」
「僕に振るかい。別にいいけどあと二日はかかるよ?」
「うん、全力でお断りします」
承諾してしまえば本気で二日話しそうと判断し断る。これには如月も仕方ないと苦笑する。
「お兄ちゃんは~カルマ先輩」
「当然の如く言わないでもらえる!? 僕=ホモにしたいわけ!」
(誰もそこまで言ってないわよ)
「容姿が容姿、苦労が絶えないね」
「普通に可愛いもんねー」
「可愛いのはわかってるけど出来れば男らしくなりたかったよ、お爺ちゃんみたいのが理想」
僕? と自分を指差す爺。納得するように頷く如月妹と私。
顔は男らしくはなく華奢だが身長は高い美少年。憧れるのも無理ないわよね。
「桐佳ちゃんは、桐佳ちゃんのままがいいと思うよ。笑顔がとっても素敵な桐佳ちゃんが僕は好きだな」
如月の頭の上に手を置いて満面の笑みを浮かべる。
「…ぁ、ぁりがと」
真っ赤のまま俯き唸る如月。成る程、これが元祖天然か。良く遺伝してるわ。
至って自覚していない本人は満足気に頷き立ち上がる。
「さて、僕は帰るとするよ。まだみんな完全に回復したわけじゃないしね。今は体を休めてこれから考えていこ、ね」
「焦りはしないわよ」
「はは、アクアちゃんは頼もしいね」
「あたしも、頑張らないと…っと電話? …と、トーマから!? 唐突過ぎるわよ!」
ごめんと一目散に部屋から飛び出た如月妹に私たちは微笑む。
「お爺ちゃん」
「ん」
「ありがとね」
「どういたしまして」
互いに笑い私たちは部屋を出た。
◆◆◆◆◆
「最近出番がない気がする…」
「どうしたんですか咲耶先輩?」
「えっと、こっちの話。それよりリースちゃん、強くなったね」
「えへへ、ありがとうございます。咲耶先輩も優勝おめでとうございます! かっこ良かったです!」
「面と向かって言われると恥ずかしいな。でも優勝はしてないよ」
「へ?」
「確実に私たちより強い二年が観客席に居たってことよ」
「えぇ!? 本当ですか!?」
「これは磨く必要性がありそうだ。来るべき敵もいるみたいだしね」
「来るべき…敵?」
「リースちゃんの好きな人がカルマに寝とられる可能性があるからねぇ」
「大問題じゃないですか!? ってさらっと何言ってるんですか!?」
「リースちゃんは可愛いなぁ~」
「むぎゅ、ごまかしゃにゃいでくだしゃいよぉ~」
(わかってる。血の力を覚醒したのには理由があることを)
(死に物狂いで戦っても勝てない敵が来るのだろう)
(これも風音さんの未来予知、いや、描いているシナリオ通りなのか)
(私が今思っていることもシナリオ通りなら、私は剣を取ることになり敵を殺さなきゃいけないのか)
(…構わないよ、私は。桐佳や他のみんなが笑えるならいくらでも殺せる)
(それが、私の物語なんだから)
「しゃ…くやしぇんぱい…、く、くるしぃでしゅ…」
「あ、ごめん」
(とにもかくも今は剣を磨くしかないわね)
最近スランプに陥っているのかなと思うことがあります。忙しくて手がつけられないからでしょうか。ド○クエモンターズをしているのが原因でしょう。
ふわふわしてますがこれからも頑張りますよー。次回からは新章なので。




