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第十八話『意地と根性と…意地っ!』


 お久しぶりの投稿です。ハインケル戦決着…っ!


 それではどうぞ。


『さぁ、運命の一試合目の始まりだぁぁぁ!!。話を聞くにはっちゃけてる会場はここくらいみたいです、まぁ知ったことか!』


『ウオォォォォォ!!!!』


『しかし園長、試合を振り返るに実力を有するチームが一方的な勝利を得てる気がしますね』


『ふむ、一年生は仕方がない。入学する前に幾度と戦闘を積み重ねている実力者もいれば積み重ねていない者もいる。実際今回の大会であってエントリーしている生徒がやや少ない。皆戦闘の自信がないのだろう』


『成る程、確かにそうですね』


『今はまだ弱いが一年もすれば大会に出れる生徒も増えるだろう。今後の行いに期待しよう』


((真面目なこと言ってるのに感心出来ない…))



「園長、良き言葉ありがとうございます!。さて一試合目、右手は今日も可愛いぞ、竜人アイドルマスコット、リース様だぁぁ!!」


『リース様ぁ!!、こっち向いてぇぇ!!』


『可愛いですよー!!』



 あはは、皆さん盛り上がってますね。


 なんだかこの空間にも慣れた気がします。むしろ応援されてるみたいで元気が沸いてきますね。


 戦闘服に着替えフィールドまで走る。


『左手は竜人の火力娘、装甲が薄そうな装備は速さを特化する為か!?、それとも胸を顕わにする為か!、ハインケル・ラルト選手!!』


 斉賀さんが叫ぶと種族問わず女子の皆さんから黄色い声援が沸く。


『ハインさぁぁん!!』


『いきやがれハインケルー!!』


 女子に続き男子の皆さんの押せ押せコール。



 あの人が、ハインケルさん。


 相手側の待機席から背の高い女性が威光を放ちながら歩いてくる。


 黒髪の短髪に160後半ある高身長、赤の瞳は烈火の炎を連想させた。


 黒ジャケットに白のノースリーブ、紺のホットパンツ。


 斉賀さんの仰る通り私より装甲が薄い装備をしているのは速さを特化する為のものなのでしょうか。


 と言いますか高校一年生っ!?


 凛とした風貌をお持ちの方は私の目の前まで歩み寄り見下ろす。


 私より頭一つ分以上高い身長なので見上げる形になります。



 …?


「あれ?、ハインケルさん、耳はどうなされました?。えと、失礼申し上げますが、竜人…ですよね?」


 近くで確認してようやく気づく。ハインケルさんの頭には竜人である耳が生えていない。


 ハーフなら生えていない場合はありますけど恐らくこの方は竜人の血しか流れていない筈。ならどうして?


「あぁ、竜人はある程度器用だとこっちの耳を収納出来るんですよ。逆に訊くけどリース様は知らなかったのかい?」


「初耳ですよ!?」


 ほれ、とハインケルが黒の耳を生やしたり戻したり。私はポカンとその光景を眺めていた。


『おおっとリース様、竜人の仕様を知らずに十六年間生きていたのか!、ある意味凄いぞぉ!』


 え、えぇ~、知らないですよそんな変な情報!?。誰からの口も一言も聞いてませんよ。


 じゃあ今まで人間だと思い込んでいた人間さんの中に実は竜人も混ざっていたってことですか…


 真実にしても私なんて一度も力んでも耳が納まるなんてこ〝スポッ〟



 …………亀の頭を甲羅の中に入れるときの音が頭の上から鳴り何か大切なモノの感覚がなくなった。


 ペタペタと頭を触りようやく消滅した存在に気づく。



「いやぁぁぁ!?、耳がぁぁ!?。って今度は横の耳から音がっ!?」


 本来音を聞きとる横の耳から音が入ってきた!?。普段は横の耳の聴力を上の耳に媒介していたので上の耳が消滅したことにより聞き慣れない横の耳から音が!、恐い!?


 戻れと強く三回念じ力むと獣耳が頭の上からヒョコと生えてきて聴力も戻る。


 胸を撫で下ろし安堵の息を吐く私にハインケルさんはケラケラ楽しそうに笑い私の髪を掻き回す。


 うぅ、今年一番の恐怖を体験した気がします…


「ハハ、なら補足として教えて差し上げますよ。実は竜人の耳は元々は無かったんですよ、元は他族と変わらず横の耳を使用していただけ」


「そうだったんですか。あ、あと普通に話して下さって構いませんよ」


「感謝する。んである出来事がきっかけで竜人が獣人より聴力が劣っていることに激しく憤慨して負けじと無理矢理耳を生やしたんだ。勿論魔術でね」


「へ?、それって要は」


「そうだ。魔力の塊、竜人の魔力不足の原因ともされていると言っても過言ではない。私たち竜人は気づいてはいないが無意識に魔力を耳に流しているんだ、耳という武器の維持の為にな。唯一流していないとすれば深い眠りについたときくらいだね」


 獣耳を触り握る。毛もあり感触もあり体温もある。とても魔力の塊とは思えないですが、こうして常識と溶け込ませたのは昔からの長い歴史があったからですね。


「これは獣人の方々しかなかったんですね。とても勉強になりました、ありがとうございますハインケルさん!」


 いやいやと手首から上を左右に振り笑うハインケルさんに私も笑う。


(一般常識なんだがな)


 首を捻り複雑そうに笑ってますが、寝違えたのでしょうか?



『さて、勉強も済んだことですし両者とも指定地について下さい』


 斉賀さんの放送にはっとなり目的を思い出す。


 謝罪を込め頭を下げ指定地まで下がる。ハインケルさんも位置を確認し五歩程下がる。



「リース!」


 突然誰かから名前を呼ばれ後ろを振り向く。


 声の主は珍しくアクアさん。あまり好みそうのないことをして、アドバイスでも頂けるのでしょうか?


 耳をアクアさんに傾ける。


「勝てる状況になればわざと相手の一撃を受けなさい。それこそ真っ向から」


「鬼ですか貴女はっ!?」


 アドバイスをしたつもりの仕草を見せられる。


 いやいや無理に決まってるじゃないですか、相手に失礼ですよ。



 それに確実に私より強い。戦う前でも空気が教えてくれる。彼女は潜り抜けていた戦場が違う、経験の差が違う。


 頬に手を当てると汗が垂れていた。


「はぁ、リース姫。戦う以前から自信を無くし調子を落とすのはこちらとも気を削ぐぞ」


「え?、なんで」


「わかるんだ、相手の気持ちがね。流れる魔力の質が変わるんだよ」


 魔力の質によって相手の気持ちを読み取る?


 心眼スキルで心情を読み取れる高魔術はありますがそのような魔術は聞いたことありません。況してや獣界の種族、神経スキルを覚えることは絶無。


「因みにこれは産まれながらの病気だ」


「辛くは、ないのですか?」


 問い掛ける私にハインケルさんは静かに笑う。


「物心ついたときにはON OFFの切り替えが出来たから妨げにはなかなかったよ」


 良かった、切り替えが出来て。



「話が過ぎたな。やろう」


 柔らかい目つきが鋭くなり右拳だけを固める。


 私は息を飲み拳を構える。



『それでは、開始ッ!!!!』


 互いが互いに立ち、睨み、呼吸を聞き取り、出方を予測し、身を沈め、魔力を流し、跳ぶ!!



 先に前方に踏み込んだのは私、速さでは私が上回った。


 先手必勝!


 地を蹴り宙で縦回転、その際に右手を手刀として固め刃に魔力を流し込み振り落とす。


 勿論ハインケルさんは機敏に横へステップし回避する。


 反撃させないよう宙に正方形の反射術式を展開させ右足で踏み込み重心を掛け右回転の左回し蹴りを振るう。


「ほぅ」


 しかし通らず右腕で防がれ弾かれ


「防いでみろっ!!」


 弾いた右腕を引き、身を深く沈めての正拳突きを放つ。


「っ…!」


 体を反り右手で軌道を逸らす。


 重い…!?、流しただけでもこの衝撃。高火力と言われるだけはありますね。



 いや、速さも技術も経験もだ。


 この方、弾かれるのを予測していたんです。


 一見受け流され体勢を崩して見えるけどそれは違う。地を弾いて空中で勢いつけて回転する人が普通いますか。


 ハインケルさんは裏拳を振るってくるんだ!


「加速陣!」


 当然体勢が体勢なのて術式を組み足元にひし形の術式を展開。後ろに跳ぶと同時に踏み少し離れた場所まで高速で下がる。


 加速陣は一瞬のブーストを行える魔力量を術式に組み展開、踏むと起動し込めた魔力量分跳べるという素敵な魔術の一つです。


 魔術技術が獣人よりかは上回るので竜人専用の技、勿論ハインケルさんも足元に展開させ私との距離を詰めてくる。


 つくづく獣界の人と戦っていると休む暇がないですね、私が言うのもなんですが。


 まず回避は不可、障壁を張るにしても時間が足りない。


 なら、無理矢理押し通すまで!


 両足に刃状の魔力を生成し流す。加速陣を予測を立てている前方に四つ程弧を描くように展開させる。


 ハインケルさんの一撃を見計らい



「裂刃脚!!」


 神速に加速陣を加えた何重の神速で放たれる拳を右足で蹴り上げた。


 これには応えたか、焼けた拳を引きバックステップで距離をとるハインケルさん。右手は赤く腫れ上がっていた。


「…ふぅ、中々な切り返し技だな。利いたぞ」


 着地し構える。


「今考えました。初めてがハインケルさんで良かったです」


「はは、考えが豊かな方だ。王族の血を引いているだけはある、機敏だ」


 感心するかのように頷き右手を払う。本当に利いたのだろうか、少々疑いを掛けてみたくなる。


 後ろに下がり左手で狼牙を生成し属性付加の術式を展開する。


 右手で顔を押さえ上を見上げ口元を吊り上げる。


 何か企みがあるのならば先に手を打つしかないですね。


 生成し終えた狼牙に術式を組み右足を踏み込み、放―――



「しかしその足、もらい受ける」



 ――え?


 なんで前に倒れているのだろう。右足で踏み込んだ筈なのに。あの状態からでは有り得ない。


 でも、激しい衝撃と激痛が右足に走ったことから状況が理解できた。



「あぁっ!?」



 痛みに堪えられず両手で押さえる。


 …なに、今の。どうして右足だけ。


 目で見て触って確認する。


 するとどうだろう。右膝にはなにか円の形をした痣が紫色になってはっきりと描かれていた。


 この痣は只の絵じゃない。偶然ついたこともない。意図的な攻撃…!


 ぞっと背筋が凍り顔を上げる。前方にはハインケルさん。けれど、明らかに違う箇所があった。


 左手に握っている銀のトンファー。


 あれだ、足の痣はあれによってつけられたんだ。




 追撃の様子がないと見て歯を食い縛り右足に負担をかけないよう多少浮かせ立ち上がる。


「タケノミカヅチ。以後、お見知りおきを」


「タケノ…ミカヅチ…?」


 私も観客もピクリと反応する。


 聞いたことがある。昔、世界大戦時にある竜人が終戦を願い各世界に武力介入をした英雄の装備。獣界では力の象徴とされ争いを起こさせない守護者の役割を持っていたのだが、…どうして彼女が。


『ちょ、彼女のアレ、マジ物みたいです』


 斉賀さんの一言に会場がざわめき動揺する。


 風音さんは…笑みを浮かべている。分かっていたんですね。

 驚きはしませんが不思議ですね。




「考えに耽る暇があるのか?」



 しまっ…!?、気を緩めてしまった。


 既に元居た場所には姿はなく踏み込んだ状態で後ろをとっていた。


「っ!?」


 片足で十分な動きが出来るわけがなく右拳の一撃を右腕で受け後方に飛ばされる。


 地面で何度もバウンドをし転がりやがて静止する。


 苦痛の声を漏らしながら体を起こすが。


「っあ!?」


 右足の一撃と同じ衝撃が右腕に襲い体勢を崩す。


 痛みに堪えられず右腕を殴り神経を麻痺させる。


 目尻に涙が滲んできたけど振り払い勢いよく立ち上がる。


 ハインケルさんは銀のトンファーを振り回しもう片方の手で魔力結晶を砕く。


 魔力結晶とは名の通り魔力の塊、砕くと対象者の魔力を回復させるアイテム。


 竜人であるための魔力量、神速を使用するにはかなりの魔力が必要とされますからね。


 身を沈め走り出してくる。私が動けないことを確認して敢えて神速を使わないのか。



 しかし、何故不可思議な攻撃は怯んだあと、しかも一撃しか打ち込んでこないのでしょうか。


 攻撃には何かしらの条件がある…?


 相手を怯ませた後、は違う。それとも距離を離した相手?


 いえ、力の象徴、英雄が他国への武力介入を行った際に使われた武器、後方の相手に攻撃出来ると遠距離戦闘は恐らくしない筈。発動の条件は極めて接近戦関連。


 獣の動体視力を強化させ右半身を出来るだけ負担を掛けぬよう往なす。


 トンファーの逆袈裟懸けを左足を軸にして右回転で体を反らし回避。続く放たれる打撃を頭を沈め髪を掠る。


「はぁっ!」


 拳をハインケルさんの横腹に打ち込む。入った。


 一歩後退り怯む瞬間ハインケルさんの足元に黄の魔法陣を展開、詠唱を始める。


「散牙!!」


 起動術式を握り砕く。すると魔法陣から牙の形をした岩が無数に飛び出す。


「設置か、質の悪い…!」


 直撃は避けたが数本が身を削る。要は後ろに跳び回避したのだ。


 予測していた回避を。


 私が口元を吊り上げたことを瞬時に察知し奥歯を噛み締める。


 握っていた拳を開き新たに術式を展開、強く砕くっ!


「爆砕牙!!」


 名の通りかは知りませんが飛び出た岩が粉々に砕け散りハインケルさんに降り注ぐ。


 粉々に砕いたとはいえ全てが鋭利、しかも対象者はハインケルさん。


 このままいけば軽いがかなりのダメージを与えることが出来る。


 厳しいと表情から読み取れる、少なくとも被弾すると一般の観客は思い込んでいた。



 しかし予想を絶する一撃、突然の不意打ち、寝耳に水という人界のことわざで当てはまるかどうか。


 とにかく額に麻痺属性を付加している魔力弾が撃ち込まれた。


 威力は無く軽い衝撃を受けただけ、威嚇弾と言える容量。殺傷性能を全て弾速に変換したと理解する。


 この一撃に攻撃の意味は無い、ハインケルさんが狙っていた目的は魔力弾に麻痺属性を付加したこと。


 麻痺といえども行動が出来なくなる程の量は含まれておらずその量は極めて微量。体に撃ち込んでも十数発は当てなければ効果が現れない。


 だからこそ脳に近い額を狙ったんだ。



 撃ち込まれた瞬間、ハインケルさんに降り注ぐ筈だった石の槍が全て圧力が掛からなくなった物のようにその場に落ち粒子となる。


(ジャミング…ッ!?)


 魔術妨害での術式破壊…!



『間一髪と言ったところか。ふふ、竜人ならではの保険、器用な娘だ』


『攻防が常に反転するような接戦ですね。一年生とはいえ決勝戦、見事な戦いです』


『ふむ、中々の弾力だ。興奮が絶えぬな』


(流石は理事長だ…)



 頭を左右に振り麻痺を治し回復した右足を地につかせ構える。


「今のは少し背筋が凍ったぞ、半身を使えずにこの機動力、獣の血が流れ始めたか?」


「…どちらかと言えば…竜の、血ですよ」


「その状態でまだ動くか。あまり言いたくはないが我らが竜人の姫を傷つかせるのは些か気分が良くない、向かえば全力で叩き潰すがな」


「では、遠慮なく叩き潰して下さい…、それ以上の力で叩き潰しますから」


 私の発言が予想外だったか、眉を上げ鼻で笑う。


「言ってくれるな。ならば覚悟を決めてもらおうか!!」





◆◆◆◆◆





「劣勢ですね」


 待機席で見ている僕たち三人はお茶を飲みリースの頑張りを見ていた。


「そうね、今のところは」


「リース、変わろうとしてるよ」


「変わる…ですか?」


「うん。戦闘を知り始めたんだ。リースは実戦経験があまり無くてね、今まで蓄えてきた能力や知識が追い込まれれば追い込まれる程爆発的に成長させているんだと思う。蹴り上げや半身だけで攻撃を避けれたのはそれが原因」


 感心したように声を漏らすサラちゃん、理解してくれたようだ。


 僕はお茶のお代わりをもらって一口啜る。



「桐佳様はリース様がお好きなんですか?」


 が、全て吐き激しくむせる。隣のアクアですら吐き出しそうに口を押さえてる。


「ごほっ、サラちゃん。どうして脈絡のない発言をこう平然と言えるかなぁ!?」


「え!?、失礼なこと仰いましたかわたし!?」

 しかも自覚無し…っ!、一番質が悪いよ。


最終兵器アルティメットウエポン。サラ…恐ろしい娘」


「すいません!すいません!」



 口を拭い床を拭く僕はサラちゃんの言葉に自分自身に疑問を抱く。


 確かに、なんで僕はリースのことを知っているんだろう。サラちゃんの言う通り好き…なのかな。


 …いや、リースに抱く思いはアクアもアルマも咲耶もイルさんもサラちゃんも欅と同じもの。


 『LOVE』ではなく『LIKE』の部類。


 只、リースは特に強く思っているんだろう。大切だから。



 フィールドに意識を移す。


「リース、アレの起動条件を本能的に理解しているわね」


 ハインケルさんの一撃を避けリースの身を屈めて打つ拳を止め、続く踵落としをトンファーで受け止め互いに距離をとり再び拳をぶつけ合う。


 神速同士の戦闘だと知覚が厳しい、捉えられるのがやっとだ。


 でも二人とも神速を主な武器としてるから消耗が激しい。リースに至っては完全に回復していないし魔力も残り少ない。


 神速の相手をするのには神速だけれどあれじゃあいつか壊れかねる。


「あとは本人が意識して気づかなきゃ押し負けるよ」


「その点には及ばないわ」


「というと?」


「あと一撃食らえば理解するわ。…それに、彼女にはとっておきの秘策があるから。ま、気づかなきゃ意味がないけれど」


 秘策…?、打破する術が今のリースにあるの?


 表情からしてはなんも気づいてなさそうだけど。



「っ!?」


 あ!、やっぱりまだ回復しきれてなかったんだ。


 ハインケルさんのトンファーでの一閃を避けようと身を屈めようとしたときに体勢を崩す。原因は痛めた右足。


 このままではトンファーの一撃を受けてしまう。




 がしかし、ハインケルさんはわざわざトンファーを引き右拳でリースを殴った。


「あぁっ!」


 リースは後ろに飛び壁にぶつかる。




「…ふふ、気づいたわ」



 そう、たった今の動作、攻撃方法を変えただけ、それだけでも今のリースだけには充分な情報だった。


 次は、…第二ステップ。





◆◆◆◆◆





「チッ…!」


 姫を殴り後ろに跳び魔力結晶を砕き魔力の回復を行う。


 観客の一部に気づかれたか。


 問題なのは正面でゆっくり立ち上がる姫。


 腹部に打ち込んでいて正解だったか、予想以上の傷を負い立っていてもふらついている。


 神速の上乗せが利いたか。



 とにかく…気づかれたか。


「…ケホッ、そう…いう、ことでした…か」


 足取りも覚束ない状態でよく喋れたものだ、感服するよ。


「こいつの性能かい」


「…タケノ…ミカヅチ…。それは蓄積型…ですね」


「それが分かれば全部理解したようだね。姫様は喋らずとも公開するよ」


 タケノミカヅチを前に差し出し溜め込んでいた魔力を剥き出す。


「これは打ち込んだ分だけ魔力をタケノミカヅチに蓄積する仕様でね、もう片方の手で相手に印を張りつけて必ず当たる魔力攻撃を打ち込んでたってわけ。昔のタケノミカヅチと同じ仕様だから知ってる奴はいただろうが、……しっかし、あそこで体勢を崩すとはね。焦って右手に代えちまったよ。」


「…ハインケルさんは私が避けるのを前提に、トンファーを…振るってきました…。…蓄積量が限界に来ていたことを、知っているのに…」


 はっ、そこまで見抜かれていたのか私は、防御に回ってもいない少女に。


 不思議と笑みが零れる。


「くく…、長年スタイルを固定していたのが大きく出たな。限界まで蓄積する癖は中々直らんよ。もしこいつで打ち込んでいたら武器は耐えきれず破壊、所有者である私も壊れるところだった。感謝してるぞ、姫」


「…でしたら、初めから…打たないで下さいよぉ…」


 はは、全くだ。


 魔力をタケノミカヅチに戻して構える。いつでも発射出来るように。





「なら事を進めやすい。姫よ、降りるんだ」


『おおっとハインケル選手、相手に脅しかっ!』


「そうだな、脅しだ。現状を見て向かう奴はいないだろう。まともに戦える体ではないのは本人が一番理解している。第一向かってくれば腹に風穴が空くのは目に見えている」


 私は思ったことは必ず行う主義でね、人の一人や二人の腹に風穴を空けるくらい躊躇わないのよ、殺す相手が姫でもね。これから人なんて大勢殺していくんだから。


 脅しなんて可愛いもの、追い込めば相手から降りてくれる簡単な作業だからな。


 特に今回は催した学校の大会、死人が出れば私は捕まり学校の評判はがた落ち。況してや竜姫、確実に私は殺されるな。


 降りざる負えないのだよ、君は。タケノミカヅチや私のスタイルを見抜いたのは正直驚いたが少々遅かったようだ。


 姫はまだ成長段階だ、これからすぐに私を越える筈だ。


 まぁ、頑張ったな。




 が







「……なにを抜かしているんですか。私は、勝つ気ですよ」




 なっ…、馬鹿かこいつは…!?


 血を流すまで歯を噛み締め足元に巨大な加速陣を展開させる。


「正気か姫よ!?、死ぬぞっ!!」


「ここまでしておいて、…自信が無いんですか?。…もしかしてはったり、なんですか」


 足を踏み込みありったけの魔力を陣に流し込み徐々に姫の足元へと圧縮させる。


 なにを言っている、はったりなわけがない。


 打てば死ぬんだぞ、手加減なんて出来ない、歯止めは…効かない。



 …なのに何故笑っている。楽しそうに、自分の状態など知らずに。


 狂人…、狂っている…!!。死を恐れない只の獣に成り果てたと言うのか…っ!?


 落ち着け、これは罠。


私の脅しを逆手に突っ込むと宣言し私を降ろそうとする、…ここに来て立場を武器にしたか。


「見くびるなよ、はったりかどうか証明してやろうじゃないか。だが死んでも責任はとらないからね」


「…上等です。生き返ってやりますから」



 加速陣が圧縮し一点に集まった


 ―――瞬間、姫が飛んだ。



 マジでに突っ込んできたっ!!


 知覚は出来る筈がない、瞬間移動と言っても過言ではない。


 あと一秒で着弾、私は姫の一撃を受け吹っ飛ぶだろう。


 なら問題ないか。正当防衛だ。


 私はタケノミカヅチに込める力を強くし




「その喧嘩、買ったぞ」



〝ドッ〟



 気がつけば姫の腹には魔力弾が撃ち込まれゆっくり後ろに飛ばされていた。


 喧嘩は私が勝った。


 肋骨が数本、心配停止の衝撃を受けたと見た。早急に手当てをしなければすぐに死ぬだろう。


 スローモーションのように落ちていく姫を見て私は溜め息を一つ吐く。





 ………いや、吐けなかった。予期せぬ事態に直面したからだ。



 何故だ…!?、何故陣が再び展開された。しかも、先程の加速陣。


 姫を見ると確かに足元に陣が展開され空中で浮いていた。


 自動展開か?。それはない、姫が気絶しているから。


 考えられるとすれば



 『設置』



 ……っ!?、まさか!?




「そのまさかですよ、ハインケルさん。回復協力、感謝します」


 目の先にはけろっと無傷の表情の姫が笑っていた。


 傷は残っても完全に治癒する。…自動蘇生アイテムが脳裏を過る。


「…ライフリカバー、か」


「ぴんぽん、正解です♪。とっておきのアイテムでした」



「…………ぷっ、くく」



 …くく、これは一本取られたってことか。


 いつの間に起動していたのやら、それ以前に何処で調達したのやら。


 最後の最後、喧嘩吹っ掛けて来たのはこれを狙ってたのか。まんまと踊らされちまった、こっちが踊らさせた筈なのにな。


 死んでしまえばライフリカバーも起動しないのに、…大した博徒だよ。


 これも王女たるスキルなのかね。


 笑い終わった私はトンファーを空間に納め吐けなかった溜め息を大きく吐き両手を挙げて笑った。


「ありがとうございました、中々に楽しかったよ」


「ハインケルさん、次は本気で闘いましょう!」



 風を切る音と激しい衝撃が伝わり、ここで私の意識は途絶えた。



 ふ、次は眼も使ってやるかな。





◆◆◆◆◆





「冷や冷やしたわぁ…、マジで」


「死んだかと思ったよ…」


 わたしが葉を取り帰ってきたときには試合は終了していて何故か御二人方がぐったりしていました。


 状況が理解出来ないので笑顔でこう言いました。


「お疲れ様ですっ♪」




桐「そういえば何処でライフリカバーなんて手にいれたの?」


リ「ホッピーさんに頂いたんです」


ア(小さい子好きそうだしねぇ)


桐「リース、お疲れ様」


リ「えへへ」




 次回『追う者』

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