第十七話『対立する兄妹』
意外と早く投稿できましたね、複雑な描写が一切ないからでしょうか。
早く大会終わらないかなぁ…。
僕が帰ってきたとき、そこは漫才の地と化していた。
話を聞くに一戦目、アクアは訳ありの女の子とカードゲームをして勝ってそのまま側近メイドとして雇った。
うん、ツッコミ所が多すぎてついてこれないね。
なんでカードゲームして相手の子拉致ってんの。訳がわからないよ。
そして問題の二試合目、なんだけど。
「クソォォォ!!!!!!!。サラちゃん返せよぉぉ!!。」
「私に言われたってどうしようもできないですよぉ!!。」
「おい竜人A!、あの禍々しい魔界人Aからサラちゃんを取り返してくれよぉ!!。」
「人を酷い代名詞で置き換えないで下さい!。失礼ですよ!。」
「姫だかなんだか知らねぇがオレはサラちゃん一筋なんだよ!。」
『リース様やアクア様になんて口の言い方だ!!。(観客)』
「うるせぇ!!。俺は赤髪でちっちゃい娘が好きなんだよ!。ケモナーじゃねぇんだよ!。」
「ケモッ…!?。」
『おぉっとこれは痛い精神攻撃炸裂!、リース様が揺らいだぁ!。』
『ふ、中々の勇者ではないか。では私もロリ化すれば』
「年増は黙ってろ!!。」
『ぶち殺されたいか小僧ぉぉぉ!!!!!!!!!!。』
「…は、サラちゃんがいねぇんじゃ試合で勝っても嬉しくもなんともねぇ、骨折するだけだ。」
(意外とリアルですね。)
「大した自信家なんですね。えっと、…雷田さん!。」
「まぁな。なんせオレには変身があるからな。」
「へ、変身っ!?。」
「見てな、イクぜ!。スタート・ザ・ライド・アップ!!!!。」
「おぉ!、腰のベルトが回り始めてモザイクが掛かりました!。」
♪Start The Ride Up!~骨折の日々に起きた連続殺人パート5~♪
『どこから流れてるんでしょうか、音楽。』
「歌省略変身完了!、上裸が光る肉体美、覆面の雷田ーとはオレのことよ!!。」
「わぁ!、特撮のヒーローみたいです!。」
『強そうで弱そうですね。』
『斉賀くん、彼のチームの今までの戦績を見たまえ。』
『え?、なになに』
「ふ、竜人Aよ、オレに勝てるかな。」
「…やってみなければわかりませんよ。」
「良い根性してるじゃねぇか。じゃあお前に良いことを教えてやろう。俺たちのチームがここまでこれた理由をな。」
『あ、三回戦目で最強くんを使っているからですね。』
「おい実況ぉ!、台詞とんじゃねぇよ!。…だがそうだ、俺たちは三回戦目で戦えば必ず勝てる『最強くん』と組んでいるからここまでこれたんだ!。」
「…では三回戦まで運べば勝てるという戦法なんですね。」
「そうだ。一回戦目のサラちゃんで勝ちオレが必ず負け最後に最強くんで勝つのだ!。どうだ、三回戦目が恐ろしくなっただろう!。」
「」
『』
「だがしかし一回戦目のサラちゃんが負けてしまった今では勝てる確率は確実に0%!!。」
「出直して下さい!!!!。」ボゴォ!
「最強に最弱は付き物だブォッフォルノォッ!?。」
以上、二試合目でした。
―――――
「頭痛くなってきた。」
待機席に戻ってきた僕は頭を抱えていた。そりゃもう最大に。
「あ、桐佳さん、お帰りなさいです!。」
平然と僕にお帰り宣言できるリースは凄いと思うよ。もう僕たちを軽く越えてるって。
「お帰りなさいませ、桐佳様!。」
赤髪を下で髪を結んだ小さな女の子が礼儀正しく深々とお辞儀をしてきた。
「えっと、君がアクアの側近になった。」
「はい!、サラ・クラインです!。」
「僕は如月桐佳、これから宜しくね、サラちゃん。」
「此方こそよろしくお願いします!。」
礼儀正しい娘だね。雰囲気がリースと似ていたのはどうして?。
そんなことよりアクアを見る。
「アクア、何故丈の短い明らかにそっちの層を狙っているメイド服をサラちゃんに着させたのかな?。」
「可愛いから。」
「…ですか。」
「まぁ、本命は魔力暴走を薄める為に作ったんだけど。サラの為を思って作ったのよ。悪いかしら?。」
アクア様…と目尻に涙を浮かべ感動するサラちゃん。
が、しかし。
「重要なのは術式な訳で別に衣装はなんでもよかったはずだよね。…ね。」
「…………。」
無表情のまま首を270度回転させるアクア。
笑って誤魔化したいのは分かるけど僕の顔を見れば笑いたくはなくなる。だって僕が満面の笑みを浮かべているんだもん。
そんなアクアを見て狼狽するも僕の手を握ってくるサラちゃんは強い眼差しをぶつけてきた。
「いいんです!、わたしはメイドとして雇われているので気にしてません!。ですからアクア様には否はありません!。」
………いや、そういう問題じゃなくてね。
と思ってるとアクアが口を押さえながらその場に膝をつく。
「うっ、なんて純粋なのこの娘は…!。精神攻撃を越えて肉体にまで痛みが伝わるわ…。グフッ…。」
「え!?、わたしなにかしましたか!?。」
あ、あはは、これは更に疲れる気がするね。
…あ、そういえばリースは。
「ってうわ!?、なんか邪悪なオーラをプンプン放出してる!?。」
待機席の隅っこで体育座りで壁に三角形を幾つも描いてるよ!?。
アクアは物知ってそうに口を開け視線を右下に移す。おい、また君か。
「いいんですよ。どうせ私なんかケモナーの方々からにしか友達はいませんよ。仲間外れなんて日常茶飯事ですよ~。」
いやぁぁあぁぁぁ!?、リースの瞳に光が宿ってないー!。ていうかさっきの凄い気にしてたんだね、あと仲間外れが日常茶飯事なんて悲しいこと言わないでくれる!?。
「所詮位だけの只の獣ですよ。首輪つけられてワンワン這いつくばってゴミくずを食い散らかす野蛮な生き物なんですよ私は。もうゴミくず以下になりたい…。」
重い重い重い重い!!!!。自分を下等評価しすぎでしょ!。リースってこんなキャラだっけ!?。
『そのことだが、私から説明しよう、桐佳ちゃん!!。』
「まだいたんですか風音さん!、もう休憩時間ですよ!?。」
放送室を見上げると風音さんが息をきらせながらいやらしい顔で笑っていた。
『誰かが呼んだ気がして飛んできたのだ!。』
誰も呼んでないよと言わずともみんな意思が疎通した。
時間もまだあるし付き合ってあげようか。
『かくかくしかじかペロペロベロロンガ。』
成る程、要はアクアがリースに理不尽な逆ギレをされてからおかしくなったってこと。
んー、普通はアクアが悪いんだけどこの頃ツッコミ役になったリースにも否がありそうな。
一応反省はしているみたい。
僕は首を捻ってリースの肩に手を置く。
するとジト目で振り向いてくる。うわぁ、涙が乾ききってる。
「リース、ツッコミ役の僕がいない間ごめんね、疲れたよね?。でも大丈夫。次第に慣れてくるものだから。」
「桐…佳…さん。」
「というかツッコミ役って偉大なんだよ?。ボケが9割いてもツッコミが1割いればその場が纏まる、言わば抑止力。ね?、カッコいいとは思わない?。」
無理矢理作った笑顔を浮かべてリースの手を握る。
僕の言葉を聴いたリースの瞳からは次第に光が宿り魂が宿る。
「はい!、素晴らしいことです!!。桐佳さんはやはり救世主ですー!。」
「あ、あはは。」
((純粋ってやっぱ純粋だね(よね)。))
―――――
「それはそうと如月。」
「んー?。」
あれだけ盛り上がっていた三回戦を遥かに上回る決勝戦では会場内に隙間を無くすほど詰まっていた。
観客は熱さを忘れただただ興奮し会場を盛り上げる。一人が叫べば隣が叫び斜めが叫びやがて全ての人が叫ぶ。もうこの空間は無限に連鎖し続けて一つの纏まりと成ったのだ。
ま、隙間がありまくる僕たちはのんびり待機席で座っているんだけどね。
サラちゃんが持ってきたお茶をみんなが飲む中アクアが声を掛けてきた。
「完成、したのかしら?。」
楽しそうににやけるアクアに僕は肩を軽く上げ笑う。
「したと言えばしたね。でもいつエロモードになるか分からないって。」
エロモードとは体が痺れて敏感になる恥ずかしい症状のこと。
「いったい何をなされていたのですか?。」
「んー、リースにはまだ早いかな。」
「またですかっ!?。」
「けどかなり面白いよ。リースの気持ちがよくわかる。」
「私の気持ち?。」
なんだろう、と頭をメトロノームのように動かし諦め立ち上がる。
「機会があればそのときわかるよ。」
「ふふ、そうね。サラ、開始までは?。」
お茶をサラちゃんに返しパンフレットデータを目の前に展開する。
「あと二分です。そろそろ行かれたほうがよろしいと思います。」
「…決勝戦かぁ。なんだか色々ありすぎたけど無事にここまで来れたんだね。僕なんもやってないけど。」
「そんなことないですよ。私は桐佳さんの為に頑張ったんですから。」
「そっか、ありがとね。」
リースの頭に手を置き撫でる。
僕は頼りすぎた、甘えすぎた。
だからこそここで挽回しなきゃね。
気を引き締め立ち上がる。
「よし、行こう!。」
―――――
「」
もう逝きたい。
『おやおや如月選手、いつにも増して絶望顔ですね。どうしたのでしょうか。』
いつにも増してってどういうことですか…。
心配そうに顔を覗いてくるリースには悪いけど今はげっそりさせて。
深淵より深い溜め息を吐き前屈みになる。
『最早人間の体の傾きを越えてますね。』
『ふむ、仕方ないと言えばそうなのだろう。桐佳ちゃんにとって悪夢を見ている感じだな。』
『悪夢?。』
悪夢。いや、悪魔だ。
姿勢を正し相手側のチームの僕の向かいに立っている女の子を嫌々見る。
(あら、確かこの銀髪ロリ体型の少女、デタラメな動きを見せた娘よね。やっぱり勝ち上がっていた)
「ようやく因縁を果たすことが出来るね!、お兄ちゃん!!。」
右手の人差し指を挙げ僕に勢いよく指す。
「「は?。」」
『は?。』
僕と風音さん以外の生徒は目を丸くし首を傾げる。
僕は髪を掻き上げ視線を逸らしながら目の前の娘の名前を言った。
「久しぶりだね、欅。二年ぶりだね、物凄く逢いたくなかったよ。」
「あたしは逢いたかったの!。」
今にも飛びついて襲い掛かってきそうな勢いで目の前の娘、如月 欅、僕の実妹が胸ぐらを掴んできた。って既に襲い掛かってきた!?。
「「はぁっ!?。」」
―――――
「紹介するよ。設定から外したい僕の実妹の如月 欅だよ。」
「実際最初の家族構成でも省いてたよね!!、どういうこと!?。」
「僕は嫌いなものはとことん嫌うの。」
「さらっと家族に向かって酷いこと言ったね今!。」
「家族だからこそさらっと言えるんだよ、況してや欅だし。」
「はぁ!?、二年ぶりに逢った妹に言う台詞なの!?。」
「それとこれとは話が全く異なるよ。あと僕は欅を嫌ってる訳じゃないよ。戦闘狂な欅を嫌ってるんだよ。」
「戦闘狂で悪かったね!。お兄ちゃんが弱いからあたしが変わりに強くなったんだよ、お兄ちゃんがゴミのように弱いから!。」
「外見は女の子っぽくなって可愛らしくなったのに内面は昔と変わらないねぇ。成長した?。」
すると真っ赤になり目付きが鋭くなる。八重歯が象徴的なのは変わってないね。
「失礼ね!。身長は変わってないけど着実に胸は大きくなってるよ!!。」
胸を両手で持ち上げて激しくアピール。
はぁ、恥じらいはないのかこの娘には。
「因みに僕が言ってるのは内面的なことであって外見的な質問は一切してないよ。まぁ、身長は3ミリほど伸びてるみたいだけどね。」
ぽんぽんと頭に手を置かれた欅はついに限界を越え両手を上下に振り回し暴走し始めた。
やけに顔面に拳を打ち込んでくるのは身長の問題なのだろうか。
両手を掴みどうどうオーラを放つ僕にリースやアクアはポカンと佇んでいるだけだった。
「状況判断…出来てないよね?。」
答えはYES、当たり前。
「やけにあんたに面影が似ていると思えば本当だとはね。リースよりちっちゃいじゃない。」
「ほぼ同じだと思いますよ。それより桐佳さん、なんで言ってくれなかったんですか!。」
「言ったところで得はないでブッ!。」
「殴るよ。」
いや殴ってるよ。
「でも桐佳さんにこんな可愛い妹さんがいるとは…。あ、初めまして、リース・マロウです!。」
リースが自己紹介をすると僕への怒りを一瞬にして静めて欅はリースの両手を握り目を輝かせる。
「初めましてリース様!、それにアクア様も!。あたしお二人の大ファンなんです!。お会いできて光栄ですー!。」
握ったままブンブンと振り回し興奮する欅。案の定リースは目を回している。
「TVで見るだけの存在でしたけどやっと生で逢えたー!。きゃー!、お兄ちゃんやったよ!。」
あぁ、こういう欅は純粋で凄く可愛いのになぁ。
「あ、すいません!?。」
目を回していることに気づき急いで手を離し肩を揺さぶる。
あ~あ~、逆効果だよ。リースの顔色が青ざめて土偶みたいな顔になってるよ。
「きゅ~~~。」
流石に助けなきゃ。
「そろそろリースが死んじゃうから返してもらうよ。」
とリースを奪還、頬を軽くつねる。
あらら、一時的な混乱を起こしてるよ。放置が一番かな。
奪還された欅は大きい目を更に開いて三角口で僕を見てくる。
「お、おおお兄ちゃんが非行に走った…?。しかも相手は王女のリース様。」
小刻みに震えてるけどいったいどうしたの…?。この光景には慣れてる人は慣れてるはずだけど…って言うのは失礼か。
「ん?。一応兄妹の契りを交わしたよ。それでリースは僕の義妹設定になった~~って………あ。」
このとき、会場に沈黙生じる。
そして僕に激痛走るっ……!!。
気がつけば僕の体は欅の正拳突きによって壁までノックバック、背中を強打しずれ落ちる。
加えて吐血。
…よく物語上実際笑えない攻撃を受けてるのにギャグ補正とかで無事になっちゃうのとかあるじゃないですか。
所詮は物語は物語。現実ではお腹が酷く凹んで口を切ってます。
まぁ、完全に僕が悪い。国家問題になる発言をした僕の失態です。
お腹を押さえながら立ち上がる僕に欅が中指を突き立てる。
「あ、あたしの目的変更!、鬼畜なお兄ちゃんを完膚無きまでに叩き潰して殺すっ!!。捻って叩いて千切って刻んで燃やし殺してやる!。覚悟してよ!!。」
突き立てていた中指を閉じ親指を下に振り落として待機席に戻る欅。大変なことになりそうだ。
回収に来たアクアがテレパシーで。
(如月、あんた苦労してるわね。)
(……まぁね。)
リースが我に返ったときは既に会場は戦場と化していた。
ねぇお母さん、お父さん、僕の生活はいつ崩れたんだろうか。多分、僕が産まれてきたときからかね。
そろそろゆっくり休みたいよ、と懇願しているのは僕だけ?。
その為には全力であの娘、欅を潰さないと。
もう昔の僕じゃない、急激にパワーアップした力を思い知らせてあげるよ…!。
でもその前に回復しなきゃ死ぬ…。
風「全てのカードバトラーよ!。王者の鼓動を魂で感じその目で刮目せよ!、『プロメテウスドラゴン』をLv2で召喚!!。」
桐「ちょ、召喚時PP6000以下全員焼くってどんな効果ですか!?。このゲームでは6000以上なんて滅多にいないんですよ!?。」
風「王者ならではの力だっ!!。ほら、アタック!!。」
桐「しかもダブルシンボルッ!?。だぁっ!?。」バリーン
風「まだまだ修業不足だな。一日数時間は切り札を舐めることから始めようか。」
桐「提案者に勝てるわけないじゃないですか~。あと資源の無駄ですよ。」
次回第十八話『意地と根性と…意地っ!』