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プロローグ

初投稿で不慣れな点がたくさんありますが、よろしくお願いします。

「……ん、んぅ」


 白いカーテンの間から差す日輪の光がカーテンが揺れるたびに一人の人の顔に当たり、やがてその人は光に気づき顔をしかめながら左手の甲を下にして目のあたりを隠す。


 甲をつけながらその人は重く閉ざされた瞼を開き何度か瞬きを繰り返す。


 広がる視界は暗闇、日差しを妨げている手が邪魔だと感じ左手をどかす。


 と、強い日差しがその人を強く襲った。すぐさま両手で目を覆いながら左に寝返り日差しから逃げようと思ったが。


「だっ!?」


 元々左側に寄っていたためそのまま顔面から地面に落ちる。


 〝ダン!〟と強い音とともに骨を折る鈍い音が聴こえたが大丈夫なのだろうか。


 その人は完全に意識が覚醒した状態で鼻を押さえながらゆっくり起き上がり目をこすりながら立ち上がる。


「やれやれ、酷い目に遇ったよ…」


 カーテンを開き窓を開ける。暑くもなく寒くもない、優しくて暖かい風が窓から入り込んでその人の服にも流れ込む。


 んぅ~と長いあくびをして洗面所まで覚束ない足取りで歩く。


 顔を洗い、髪を洗い整え洗面所を後にしてクローゼットから制服を取り出す。


 制服は白いワイシャツに黒いセーター、黒いズボン、赤いネクタイといった極普通の学生服だ。


 その人は制服をきちんと着用する。ネクタイは第一ボタンの高さ、ブレザーのボタンは三つつけシャツはズボンの中に全部入れた。 鏡の前でうんと自分に言い聞かせるように頷きテーブルの上に置いてあるカバンを持ち


「行ってきまーす」


 ドアノブに手を回した。




◆◆◆◆◆



「ふぁ~…」


 ベッドから落ちて完全に起きたと思ったけどそんなことはなかった。眠いものは眠いんだね。


 さて、皆さんこんにちは。僕は如月 桐佳と言います。男で今年17歳になります。趣味は料理でそれ以外は苦手です。


 一言で言ってしまうと僕は世界最弱とも言えるほど弱いんですね。


 運動や戦闘面だとキリギリスに勝てるかどうかわからないくらいかな、いや負ける…


 はい、そんなことはどうでもいいですよね、ごめんなさい。


 家族構成は僕と父と母の三人家族で現在は僕は独り暮らしです。


 容姿は自信がなく、…というか父の遺伝子を一切使用せず母の遺伝子を使った感じなんですよね。 簡単に言ってしまえば見た目や声は女の子です。


 髪は母譲りの銀髪で背中あたりまで、瞳は母譲りの碧色、伸長は母譲りで伸びずこの歳でまだ150台です。


 …本当に母譲りなんですね。一つくらい父譲りが欲しかった…。


 あ、でも


「桐佳ーー!!」


 っと


 現在地、学校の通学路、商店街通りで人が何か考えてるときに後ろから僕の名前を叫ぶ女の子と言えば…


「わかった、咲耶だ!」


「当たってるけどもう呼び掛けて二分経ってるんだけど」


「二分かぁ、この前から一秒早くなってるね」


「そういう問題なのかい…」


 手のひらを空に向け両手を胸の高さまで挙げやれやれと首を横に振るこの女の子。『水城 咲耶』(みずしろ さくや)。僕と同じ歳で僕の一番の友達。


 腰まで掛かる綺麗な青い髪に濃い藍色の瞳、僕より伸長が高く女子の中でも高いほうでスタイルも抜群。そして可愛い。


「うん可愛い」


「いきなりなにを言い出すんだ君は」


「いやぁ、僕も幸せ者だなぁーって」


 学校でも結構人気の女の子と一緒にいられるって嬉しい、もう慣れちゃったけど。


 あははと笑う僕に対し咲耶は嬉しそうもせず、むしろ不快そうな表情を浮かべていた。


…?


「桐佳に可愛い言われてもまったく喜べないんだよね。桐佳のほうが可愛いから」


「可愛いって言われるのは嬉しいけど男としては深く傷つくから本人の前では言わないで…、本当に崩れてしまいそうで」


「本当のことでしょ」


 追い討ちにその場に四つん這いで崩れる。


 咲耶は溜め息を一つ吐いて僕を立たせる。


「桐佳、もうこのやりとり去年からやってきて310回目だよ、そろそろ飽きてきたよ私」


「うん。僕も思った」


 最初は泣きそうになるくらいだったのに今じゃあもうこのやりとりがマンネリ化してきたんだよね。それほど僕と咲耶は行動を共にしてきたってことなんだ。


 咲耶と肩を並べながらゆっくりのペースで商店街の先の並木を歩く。


「はいいつもの」


 カバンからある物を取り出し僕に渡してくる。


「わぁ、いつもありがとう」


 受け取った物、それは三角の形をしたおむすびでアルミホイルに包まれていた。



 さて、ここで一つ。どうして僕がいつもの、おむすびを咲耶からもらっているのかを説明します。


 理由、その訳は僕がとんでも貧乏だからです。全財産は今のところ3500円、手持ちは300円、毎日昼食抜き。もう慣れましたけどそのせいで朝食は毎日咲耶から恵んでもらっているんです。


 優しい咲耶は僕の頼みに対して嫌な顔一つもなしで毎日おむすびを作ってくれる。



 アルミホイルを剥がすとキラキラと光るお米の粒たちが固まってできたおむすびが姿を現した。


 瞬間、海苔と塩の匂いが僕の鼻を通り脳に強い刺激を与えお腹からぐぅぅと音が鳴る。


「ほら、召し上がれ」


「いただきます!」


 大きな口を開けておむすびを一かじり。


「んー! おいひー! このために生きてるね~」


「大袈裟だって、ってそんな急いで食べたら喉に詰まらせるよ」


「大丈夫大丈夫。もう97回は喉に詰まらせたから慣れてるって」


「そういう問題じゃないとおもうんだけどな…」


 あははと笑う僕と若干苦笑い気味の咲耶。


「桐佳さーん! 咲耶先輩ー!」


 最後の一口を口に含んだところで後ろから女の子の声が聴こえる。


 えっと、この幼い感じの声は


「わかった! リースだ!」


「どうして私のときより1分と52秒速いの!?」


 リースと呼んだ女の子、その娘は肩に掛かる金髪に少し近い山吹色の髪に翡翠色の大きな瞳を宿している。伸長は僕より小さくて見た感じ小学生。


 僕たちに手を振りながら走り寄りやがて僕たちに追いつく。


「おはようございます、今日もいいお天気ですね」


 汗一つかいておらず息一つも切らせずにすぐ愛らしい笑顔を見せる。


「おはようリース、今日もいい笑顔だね」


「えへへ、ありがとうございます」


 リース。本名はリース・マロウ。僕の一つ年下で笑顔が一番似合う女の子。竜人の娘で頭から生えてる山吹色の耳が特徴、っていってもここらはみんな耳ついてるか。あ、ここらの話しは追い追い説明するので今は流していていいですよ。


「相変わらずリースちゃんは元気だねぇ。微笑ましい限りだよ」


「元気で明るくがマットーですからね!」


 それを言うならモットーだよと訊くのは野暮なんだろうね、リースはこういう娘だし。


「あ、ま、間違えました、モットーです!!」


 自分の間違いを赤面しながらちゃんと正すのも彼女の可愛いポイントの一つなんだよね。


「そっか、偉い偉い。じゃあ良い娘にはご褒美をあげる」


 そう言って僕は右手をリースの頭の上に乗せ優しく撫でる。リースは目を細めながら気持ち良さそうな笑顔を浮かべる。


 これは俗に言うスキンシップに近い行為なんだ、別にやましいことなんて考えてなんかいないよ。


 四回ほど撫でて手をどかす。リースは満足そうだ。


「どうしてだろう。相手が桐佳だと犯罪の香りがしない、不思議だ」


「どういうことかな?」


「いーや、別にぃ」





―――――



「この視線にも慣れたねぇ。ね、咲耶」


「まぁ、慣れたねぇ」


 通学路。お互い顔を見合わせ互いに苦笑いで溜め息を吐く。


「何に慣れたのですか?」


 首を小さく傾け不思議そうにするリース。


「リースは多分一生気づかないと思うから気にしなくていいよ」


 リースは周りの視線なんて気にしたことないよね、うん、さすがだね。


 彼女は一応一族でのトップ、つまりお姫様の位のお方なんだよね。


 勿論人気あり、ファンあり、ファンクラブあり、彼女が通ると一族に限らず他の種族までもが目に入れてしまうような人望の持ち主。


 人望とは言ってもほとんどは『可愛い』からきてるんだけどね。


 だから一緒に登校している僕や咲耶も見られてしまう。正直緊張するよ。


「一生なんですか!? それはなんだか嫌な気がしますよー」


「大丈夫、リースちゃんは偉大だから」



 …とか言う君、咲耶。咲耶も原因の一つなんだよ? 気づいてるよね、当たり前だけど。


 そう、実は咲耶は学校の中では結構有名な生徒なんだ。


 普通の人間としては素晴らしい能力を持っている努力家として高い評価を生徒や教員からもらってるのが一、あとは容姿や性格で男女問わず憧れの対象として見られるのが二。学校のアイドル的立ち位置だね。


 そしてそんなアイドルと一緒に登校している僕が周囲から見られている。これまた緊張するよ。


「それに対して僕は凡夫だね」


 周囲から熱い眼差しをぶつけてくるのは男子ばっかり。鼻息を荒くして手をワキワキしてる、変態だね、僕は男なのに。


「なに言ってんの。世界一可愛い男の娘じゃない」


「やめてくれるそういうこと言うの!? 本当に恐いから!」


「桐佳さんはとっても可愛らしいですよ♪」


 …この娘の笑顔は時々反則だと強く思う、卑怯だよ。苦笑いしか浮かべられない…


「…はぁ」


 そっちの気はないのになぁ、これも人間の性なの?



「ほら、先に行っちゃうよー」


 俯きながら首を傾げていると前から咲耶の大きな声、顔を上げると20メートル先には咲耶とリースが立っていた。あらら、みんな速い。


「ごめん、考え事してたー」


 余計な考えを左右に顔を振り消し僕は走り始めた。




―――――



「じゃあまた後で」


「んー」


 並木を進んだ先、お城みたいに大きな建物は『翠碧学園』(すいへき)、僕たちが通う学校です。


 詳しい話しはまた後で、とりあえず学園に入り僕たちは二方向に別れる。僕とリース組は左の廊下に、咲耶は右の廊下の二手。学校とは思えない赤いカーペットが敷かれている廊下を肩を並べ歩く。


 歩いてる…んだけどなんだか嫌な気分、生徒たちが道を開けるの、いやまぁリースはお姫様だから仕方ないんだけど堅苦しすぎないかな。


「リース様ー! 今日もプリティーですよー!!」


「こっち向いてくださーい!!」


 そんなことはなかった。


「皆さんおはようございます」


 一人一人笑顔で挨拶するリース、礼儀正しいね、お姫様だから当然のこと? …次元が違うねぇ。


「桐佳先輩もおはようございます!」


 と、僕にも挨拶してくるなんて物好きな娘もいたんだね。


 だから僕も笑顔で挨拶。


「おはよー」


 すると挨拶してきた黒髪の女の子は顔を赤くして嬉しそうに小走りで走っていった。今の娘、可愛らしかったな。


「桐佳! 俺だ! 結婚してくれ!」


 これはスルー、後ろからガッデムとか叫んでいるけど無視無視。接するだけ無駄だよ。


「桐佳さんは人気者ですねー」


「リースには言われたくないよ。ていうか声かけてくる生徒なんて七割方男子じゃないか僕」


「男の友情って言うじゃないですか! きっとそうですよ!」


「知ってる男子一割もないのに友情もなにもないよ。そもそも僕はむさくるしい友情は一切受けつけないから」


「むさくるしくなかったらいいんですか?」


「それはその場で判断するよ」


 ここで黒歴史を一つ、昔僕は男子に襲われかけたことがある。鼻息が荒いお兄さん三人にね、咲耶に助けてもらったけど、恐かったなぁ。


 はい、黒歴史の話しは終了、僕たちはある程度廊下を歩き1ーBと書かれている広い教室に入った。


 教室は大学の教室くらいの大きさで廊下同様赤いカーペットが敷かれていて照らす電気は高価そうなシャンデリアがいくつかぶら下げてある、 いかにも豪華。貧乏人の僕からしては失神しちゃいそう、慣れたけど。


 教室内では人も魔界人も獣人も竜人もみんな楽しそうに喋っている。


 一クラスに生徒は全員で50人。…この広い部屋に50人って贅沢だよね。


 リースが入ると竜人や獣人やその他の生徒が歓喜の声をあげ挨拶してくる。同種族じゃない生徒までファンにさせるなんてリース、恐ろしい娘。


 リースは右から二番目の一番前の席、身長のせいで一番前にさせられたらしい、本人は気づいてないけど。最初は前から四番目だったんだよね。


 リースは優しい面があるから周りに迷惑をかけないために我慢してたけどリースの後ろの席の女子生徒が~


『愛らしいリース様が四番目などありえません! 席替えを要求します!(あぁ、黒板が見えずとも我慢するリース様、可愛すぎます~)』


 とか言ってね。


 ちなみに僕は窓側の一番後ろという在り来たりな場所の席です。 冬場は寒いけど春はぽかぽかしてて気持ちいいんだよねー。絶好のお昼寝スポットとして投稿したいくらい。


 イスに座り革のカバンを横に掛け頬杖をつき外に咲く満開の桜の桜一枚一枚を見て朗らかな気分になる。…うーん、眠くなってくる景色だなぁ、実際寝てる生徒いるし。


 頬杖から両手を畳み顔を埋め寝る体勢へ変える。寝るときには一番この体勢がベストだね。



 自然と意識が薄れかけ、やがて僕は眠りに落ちた。






 さて、気づいた人は疑問を抱いただろうか。


 ここは『1ーB』。僕は今年で17歳。要するに僕は留年しているのだ。


 留年の理由は最弱だから。


 これから僕が話すお話はちょうど一ヶ月前のお話、どうして僕が留年したのか、どうして僕がリースみたいなお姫様と仲が良いのか、…どうして僕の日常が崩れたのかを。


 それは様々な出会いがきっかけ。





 では、始めます。

咲耶「次回、『桐佳、死す。』……ではなく『1-Bのお姫様。』です。お楽しみ~。」


桐佳「いきなり殺さないでくれるかな……。」


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