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救世の騎士

作者: とうゆき

 豪奢な鎧に身を包んだ騎士が雄々しい馬に跨って街道を進んでいます。

 騎士の名はアロンソ・セルバンテス。勇猛果敢さとかつて獅子を倒した逸話から獅子の騎士の二つ名を持っていました。

 彼は自身の信念に基づいた世直しの旅の途中でした。


 その日、太陽の高いうちにとある村に到着したアロンソはそこで一泊しようと決めました。

 愛馬であるジェーディンフィリアを歩かせていると、一人の村人に会いました。

 その時、彼の直感が違和感を告げます。

 彼はまだ若者にも関わらず、その目は悲しみに沈んでいたのです。


「君、私はアロンソ・セルバンテスという者だが、何かあったのかね?」

「アロンソ・セルバンテス? あの高名な騎士様の?」

「いかにも」


 アロンソの勇名は各地に轟いているようで、若者は恐縮したようでした。


「何か困っているようだが、私で良ければ相談に乗ろう」

「それが……」


 おずおずと若者は話し始めました。

 それはアロンソにとって衝撃的でした。

 領主の課した税が高くて払えない事、このままでは領主の私兵に捕まるかもしれない事、きっと他の村人も不満を持っているに違いないが領主には逆らえない事。


「なんと……!」

「お願いです! 助けてください、騎士様!」

「分かった。私に任せなさい」


 義憤を覚えたアロンソはすぐさま領主の元に乗り込みました。


 彼を恐れたのか、屋敷の中では誰にも出くわさずに領主の部屋まで辿り着けました。


「な、何者だ!」


 痩せた男がアロンソに怒鳴ります。


「私の名はアロンソ・セルバンテス。貴様が圧政を敷いていると聞いてやってきた」

「圧政だと!? ふん、何を言い出すかと思えば」


 男は部屋に飾られていた槍を手に取ってアロンソに向けます。


「今すぐ跪いて謝罪しろ。この場はそれで許してやろう」

「この後に及んでなお傲慢か」


 アロンソの怒りは最早限界でした。

 剣を抜いた次の瞬間、息もつかせぬ踏み込みからの斬撃は的確に領主の命脈を断ち切りました。


「……悪は滅びるのが定め」


 一つの使命を終えたアロンソですが、立ち止まる訳にはいきません。

 この世界にはまだ困っている人が大勢いるのです。

 村に泊まるつもりだったアロンソは急遽予定を変更して出発しました。







 旅の途中、アロンソは一つの噂を耳にしました。

 ここから北の地域が国の統制を離れて無法地帯になっているという話でした。

 かつてその地域を訪れた事のあったアロンソの心は深く痛みます。

 しかし嘆くだけでは問題は解決しません。行動が大事なのです。


 少しでも苦しむ人を救うべく、アロンソは北に進路を取りました。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんという脳筋...
[良い点]  救世はまた、さらなる災厄をもたらすことがある。  そんな教訓を受けました。
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