第18話 : エピローグ
チリン。チリン。
チリン――。
少女が動くたび、胸で輝く石のペンダントヘッドがチェーンとぶつかり合い、透明な音を立てる。
少女は、母から「おまじないよ」と貰ったその青い石のペンダントがお気に入りだった。
幼稚園のお友達も先生も、「とてもきれいね」とほめてくれたから。
それに、なんだかとっても優しくて暖かい感じがするのだ。
「ねえ、お母さん。このペンダント、どんなおまじないができるの?」
青い石を右手の指で転がしながら、娘が尋ねる。
キッチンで、夕食のクリーム・シチュー作りに奮闘していた茜は、娘の問いにちょっと考えて、楽しそうにこう答えた。
「素敵な恋が出来るおまじないよ。これでお父さんとお母さんは、恋が実ったのよ」
母親になっても、そうそう性格は変わらないらしく、茜は、小さな娘を相手に『えっへん』と、胸を張った。
「恋? おいしい実になるの?」
娘の美樹が、不思議そうに小首をかしげる。
「そう。とってもおいしい実になるのよ」
「美樹も、食べたいなー」
「そうね。いつか、大きくなったらね」
「うん。絶対食べるんだ!」
娘の真剣な表情に、茜の口から思わずクスクス笑いが漏れる。
まだ六歳。幼い娘には、ピンと来ないのかもしれない。
でもいつか、年頃になったとき、このペンダントに願いを込める日がやって来るのだろう。
「さて、美樹ちゃんは、お皿を並べてくれるかなー?」
「はーい」
そしてもし、その力が必要になったときは、きっとあなたを守ってくれる。
ね。お母さん――。
ブライト・ストーン。
それは、『守りの石』
愛する者を守る時を待ち、青く静かに輝いている。
おわり
拙い作品に、最後までお付き合い下さって、ありがとうございます。
色々と紆余曲折ありましたが、連載2作目、無事書き上げる事が出来ました。
これも読んで下さった皆様のおかげです。
又いつか、次の物語でお目にかかれますように。