水律の魔術師登場!!
炎鎖の軌跡が消えぬうちに、空気が変わった。
熱に満ちた地獄の大気が、ひやりと冷える。
――ぽたり。
俺の頬に、水滴が落ちた。
「炎だけでは、均衡を欠きますよ」
澄んだ声。
振り向くと、霧の向こうに、黒髪の男が立っていた。長衣の裾が静かに揺れる。
「私は水律の魔術師」
指先が空をなぞる。
すると、俺と炎鎖の間に、透明な水壁が展開された。
ジュッ、と炎と水がぶつかる音。
「おい、水律。邪魔するな」
「監視ではありません。補完です」
水は渦を巻き、さきほど炎に縛られていた亡者の傷を洗い流す。
だが、癒えているのに、苦痛は消えていない。
「……回復、じゃないのか?」
「地獄に完全な救済はありません」
水律の目が俺を見る。
「あなたの未練は、熱すぎる。炎に呑まれれば、形を失う」
静かな水が、俺の腕を包んだ。
熱が和らぐ。
「水で整え、炎で鍛える。両方あって初めて、地獄を歩ける」
炎鎖が鼻で笑う。
「気に入らねぇが、理屈は通ってる」
水律は微かに微笑んだ。
「水谷誠司。あなたの執着は、まだ制御不能です」
「……どうすればいい?」
「まずは、揺らがぬ芯を持つこと」
水が足元に広がり、赤い地面のひびを満たす。
「炎鎖と共に進みなさい。私は、崩れぬよう支えます」
俺は二人を見た。
炎と水。
対極。
だが、どちらも地獄で生きる術。
拳を握る。
「アーシュに会うまで、俺は折れない」
炎が揺れ、水が静まる。
地獄の空が、ほんの少しだけ澄んだ気がした。
次回
「最強能力開眼!!!」




