超超超超耳袋 陸 ――俺とアーシュノートが『君の名は。』した事案
一軍の及川さんは、よく俺の机に座って前の席の男子西野くんと話す。
西野くんもキラキラ一軍男子だ。
一軍と一軍、美男美女。
「だから~、西野ッチとは、付き合ってないってば~♪」
及川さんと仲良しの一軍男子二名は、からかっているが、明らかに西野くんに嫉妬してる感じだ。
つまり、モテ女子一名✕モテ男子一名。
一学期から仲良く、夏休みもお祭りに行った男子二名が空気だった――?
(ポ――――ン)←意味深なピアノの高音
という、センシティブな状況が、強制的に俺の目の前で展開しているわけなのだが――。
「宝愛瑠と付き合うとか、ねぇし!」
西野くんは、付き合っていないと言いながら、及川さんを下の名前で呼んだ。
いつもいる、一軍女子もいない――。
(ポ――――ン)←意味深なピアノの高音
――聞こえちゃうから、余計にモヤモヤする……もう、目の前でやられてるから、回避不可能なのだが……。
俺は及川さんや西野くんなど存在してないかのように、うつむきながら、机から俺とアーシュ~ TRUE LOVE 4EVER~ノートを出した。
及川さんが、腰かけながら持っていた自分のCampusノートを俺の机に置いて、髪の毛を上にまとめた。
一瞬、及川さんの背中まである髪の毛先が顔に、ペシンと当たったが、俺は目をつむり石仏のように無表情だった。
――早く図書室で、俺✕アーシュの続き書こうっと。
俺は机のノートを手に取ると、図書室に向かった。
図書室は無人だ。
――うん、良い。こういうので良い。
俺は広い机で、おもむろにノートを開いた。
開くと、丁寧な文字で古典の現代語訳がされていた――。
――俺の文字じゃない……。
表紙をめくると、及川宝愛瑠の名前が書かれていた――。
(ポ――――ン)←意味深なピアノの高音
俺は、ノートを小脇に抱えながら、光の速さで走りだした。
俺とアーシュ~ TRUE LOVE 4EVER~!!!!
俺とアーシュ~ TRUE LOVE 4EVER~!!!!
俺とアーシュ~ TRUE LOVE 4EVER~!!!!
俺とアーシュ~ TRUE LOVE 4EVER~!!!!
俺とアーシュ~ TRUE LOVE 4EVER~!!!!
俺の教室が見えてきた――!!!
教室から、及川さんと西野くんが出てきた。
「宝愛瑠は――今、彼氏いるの?」
「いない――でも、西野ッチは……元カノとまだ連絡取ってるんでしょ――?」
及川さんは、伏し目がちにノートを抱きしめていた――。
――俺とアーシュ~ TRUE LOVE 4EVER~ノートだああぁっ――!!!
「あいやぁああああっっ!!! ほおぅううっわっちゃあああああああっ!!!」
俺は奇声を上げ、バレリーノのように華麗に跳んだ――。
(ポ――――ン)←意味深なピアノの高音
俺は及川さんの胸元にあったノートを素早く取り上げ、廊下に着地した。
「……ノート、落ちてた――」
及川さんの名前が書かれたノートを彼女に差し出した。
一軍二人は、唐突な俺の出現に驚いていた。
「……あ、ありがと……」
俺は、俺とアーシュ~ TRUE LOVE 4EVER~ノートを握りしめ、ガラリと教室のドアを開けた(左上から、強めの光。三回同じ動作を繰り返す。東京ムービー新社の出崎演出)
西野くんが、少し引き気味に俺の背中に呟いた。
「水谷が――喋った……」
(教室に入れる俺の止め絵が、ザックリした水彩画で描かれたカットで終わる)
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER~だから――――
次回
「超超超超耳袋 漆」




